訪問診療クリニック

「集患対策」つながりで訪問診療という世界をのぞいてみたいと思います。

国は病院から在宅へとかいう方針があったからなのかなんなのかわかりませんが、現在は訪問診療クリニックがどんどん増えてきています。
今や集患対策のために、病院や施設などに営業をかけまくっているようです
退院後の患者さんを紹介してもらうために。
特に癌患者さんだったりすると訪問診療の点数がかなり高くなるので、癌患者さんを狙って営業をかけているところもあるようです。

嫌な世界になりました。

訪問診療の世界ではケアマネさんがポイントになります。
ケアマネさんが患者さんに対して訪問診療クリニックや訪問看護ステーション、ヘルパーステーションを紹介したり決めたりします。
ご家族の要望も聞くこともあるでしょうが、ご家族もほぼ皆初めての在宅医療・在宅介護になるでしょうからどこがいいなんてわからないですからね。
ですからきっとケアマネさんにも営業かけていたりするんでしょうね。

前に書いたか忘れましたが、とある患者さん家族がうちのクリニックの訪問診療を希望していました。
その旨を担当ケアマネに伝えたそうですが、そのケアマネはうちに連絡することなく、他の訪問診療クリニックを勧めてきたそうです。
先生がいっぱいいるから安心だよとか言いながら。
結局ご家族から直接うちに連絡をくれたのでつながることができたのですが…。
このようなケアマネはその訪問診療クリニックとズブズブの関係なのでしょうね。
何なら金品の授受があると疑われても仕方ありません。
そう疑われるケースなんて多々あります。

自分はこれまで開業して10年になりますが、一切病院や施設、ケアマネに営業をかけたりなんてしてきませんでした。
それっておかしいでしょ。って思うのです。
無理矢理患者さんを引っ張ってくるなんておかしすぎます。
ただただ「患者さん=お金」としか思っていないように感じます。

そして訪問診療において責任持って患者さんを診ることができる人数には限りがあります
せいぜい一人の医師につき100名程度、身を粉にして超がんばっても150名弱でしょうか(いやどんなにがんばっても120~130人くらいが限度です)。
それ以上の患者さんを抱えるとなると、流れ作業になります。
ですからもし自分の親を訪問診療にお願いするというときは、「担当の先生が何人の患者さんを抱えているのか」を聞くのもポイントかもしれません。

でも施設の訪問診療をメインとしているクリニックもあり、そういう所では一人の医師が多くの患者さんを抱えているところがあったりします。
そんなところはほぼ確実に流れ作業ですね。
そうじゃないと仕事が回りません。
薄利多売の世界(施設の訪問診療は保険点数が安くなる)ですが、診療内容も確実に薄っぺらいものとなります。
ワクチンも集団接種して儲けるというイメージです。
施設側もあまり濃厚な診療を望んでいない、診療時間を短くして欲しいという希望もあったりしますから、お互いの利害が一致しちゃっています。
亡くなったら看取ってくればいい。
割を食うのは入居者(患者さん)だけ。
漫然と同じ薬を出し続けられ、毎年漫然とワクチン接種を打たされ、いいカモです。
施設としては入居者の回転率が高い方が経営的にいいのですね。
今は取らないところも増えていますが、入居一時金が必要なところもありますから。
そしてどんどん介護度が高くなってくれた方が儲かるのです。
施設としてはどんどん不健康になってくれた方がありがたい。
こんな実態をみていると、「訪問診療って何だろう…」って思ってしまいます。

※もちろん熱い気持ちでやっている施設もあります。そういう所は小規模のこじんまりとした施設のことが多いです。

施設の大多数の入居者をまとめて、ある特定のクリニックに診療してもらっているところは、ほぼ確実に流れ作業的診療です。
大規模施設でも、入居者さんやご家族の希望を聞いていろんなクリニックを入れている施設はまだまともな施設ですね。

訪問診療って素晴らしいとか言われますけど、今や実態はそんなんでもないですよ。
ごく一部のクリニックは志高くやっているだけで、結構腐った世界です
ただただ上記の様に利害が一致しちゃっているから表に出てこないだけで。

営業かけて患者を取り合う世界。
本当に嫌な世界です。
こんなのをみているとそろそろ訪問診療も潮時かなと思ってしまう今日この頃です。

自分が世間を一歩リードしているということではありませんが、これまでの経験ではなぜかそのような形になってしまっています。
例えばフライトドクターをしていたのも、ここまでドクターヘリが普及したり世間に広く認知される前でした。
ドラマの「コードブルー」が放映される前です。
DMAT隊員になったのも創設されてまもない頃でした。
これらは自分が強く希望してやったわけじゃなく、流れに乗ったらやっていたという感じです。
でも経験させてもらえて本当に良かったです。
そして訪問診療。
自分が訪問診療の世界に飛び込んだのも、ここまでシステムができあがる前だったような気がします。
こんなに訪問診療クリニックが乱立する以前の話でした。

何度も言いますが自分の意志でではないです。
流れに乗ったらそうだったという話です。
不思議な話なのですが。
かっちょよくいえば、時代の最先端を行ってしまっている。
何度も何度も言いますが、自分の考えや意志でではないです。
自分がスゴいってことでは決してありません。
何か知らない力に動かされているような感じです。

次はどんな世界に飛び込むんだろうか。
ワクワクします。
また自然に身を任せてみようと思います。
(とかいいながらすでにちょっと構想はあるのですが)
あっ、訪問診療をすぐやめるとかそういうことではないので。

自分が責任もって診れる範囲で、自分の方針に賛同してくれる患者さんだけでいいので在宅医療は続けていくつもりです。
これまで「最期は先生に死亡診断書を書いてもらいたい」との理由でうちの訪問診療を希望される方が何名かおりました。
「なぜ自分?」と思わなくもないのですが、そんなふうに思ってもらえてとても嬉しいです。本当にありがたい。
その人に与えられた本来の寿命がやってくるまでは絶対に逝かせないけど。

そして「先生と看護師さんが来るとなぜか元気になる」と言っていただくこともあります。
すごく嬉しいですね。
実はそれも目指しているところなのです。
元気オーラが出せているかわからないけど、「元気になるよオーラ」を届けるつもりで診療を行っています。
ですからマイナス言葉は使わないよう気をつけ、プラス言葉だけを使うようにしたり、前向きな話をするようにしています。
というか自分も本気でそうなって欲しいと思っているし、そうなると思っているから。
ごくまれに確実に厳しいときは正直に状況をお伝えすることもありますが、1%でも可能性があるのなら前向きに考えたいと思っています。

そして患者さんに興味を持つことが重要ですね。
ですから「患者と医者」という関係よりはその前に「人と人」という関係であることを忘れないようにしています。
その人に興味を持つこと。
別に無理して興味を持っているわけでは全然なくて、本気で興味を持ってます。
昔どんな仕事していたのかとか、どこで生まれたのかとか。
大抵必ず聞きますね。
昔の写真があれば必ず見させてもらいます。
自分よりも高齢の方々が、どこで生まれどんな仕事をしどんなふうに生きていたのか思いをはせます
外来でもその辺を聞いちゃったりすることがあるので、外来が長くなっちゃうことがほとんどなのですが…。
いろいろな人の人生を知ることは面白いです。
テレビ番組の「家、ついて行ってイイですか?」みたいな。
興味本位でだけで聞いているのではなく、実は病気発症が生まれた故郷の公害に起因していたのでは?というケースもありました。

訪問診療クリニックが乱立し、嫌な世界だな、もう潮時かなと思い訪問診療をやめようかなとチラッと思ったときもありましたが、やはり先輩たちの人生に触れられて面白いしやりがいはあります(面白いと言ったら語弊があるかもですが…)。
ということで、求めてくれる人がいる限りは続けようかなと思う今日この頃でした。

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