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那覇バスの会社設立日は意外と古かった

那覇バスは、経営破綻した那覇交通から路線バス事業を引き継いで、2004年7月18日から営業を始めたバス会社である。


那覇バスは2001年に設立?

那覇交通からのバス事業の引き継ぎにあたっては、事前に運輸局の認可を得る必要があるため、当然、法人は2004年7月18日以前に設立される必要があるわけだが、那覇バスの法人設立日は2001年(平成13年)1月31日である。これは、親会社である第一交通産業が発表したプレスリリースに、下記のように記載があるので間違いないかと思われるが、那覇交通が民事再生法の適用を申請したのは2003年のことであるので、まだ法的には経営破綻していない時期に既に新会社が設立されていたことになる。

2.各社の概要
那覇バス株式会社
 所 在 地:沖縄県那覇市具志797の1(観光部)
 設   立:平成13年1月31日
 (那覇バスの事業開始日:平成16年7月18日)
 代表取締役:合田憲夫
 資 本 金:1,000万円
 車 両 数:乗合141両、貸切104両
 主な営業所:新川、石嶺、具志、西原、糸満

那覇バス(株)におけるバスガイド派遣について(2008年5月27日 第一交通産業)

2001年に光第一交通として設立

第一交通は上場企業であるため、経営に関する資料がそれなりに公表されている。
那覇バスへの営業譲渡があった2004年前後の資料をあさってみると、2004年11月24日公表の決算短信にて、下記のような記述がある。

4.光第一交通(株)は平成16年6月16日付で那覇バス(株)に社名変更するとともに、同年7月18日からバス事業を開始し、重要性が増加したため、当中間連結会計期間から連結子会社に含めることとしております。

平成17年3月期 中間決算短信(連結)(2004年11月24日 第一交通産業)p.4

すなわち、那覇バスは営業譲渡を受けるために設立されたわけではなく、既にあった光第一交通という法人の名称を2004年6月16日付で変更して生まれた会社というわけである。
この光第一交通(株)という法人の設立日が2001年1月31日なのだと思われる。では、設立された2001年1月から社名が変更される2004年6月まで、光第一交通は何をしていた企業だったのか。

休眠会社であった光第一交通

2001年5月25日公表の決算短信$${^1}$$にて、光第一交通(株)は、『非連結子会社』の『その他事業』の欄に記載がある。『その他事業』とは、「貸切バス等の営業、民芸品及び家具の販売、コンピュータソフト開発事業、コインパーキング事業及び損害保険代理業等」と書かれているのだが、正直この書き方だと何をやっている企業か分からない。ただこの書き方だと、少なくともタクシー事業も路線バス事業もやっていなかったようである。

これがその半年後の2001年11月28日公表の決算短信によると、下記のようにタクシー事業を開始したような記述がある。

2.光第一交通(株)、九州第一交通(株)、第一交通(株)(福岡)、第一交通(株)(鹿児島)、第一交通(株)(大分)はタクシー事業の営業を開始しており、当中間連結会計期間より連結子会社の範囲に含めております。

平成14年3月期 中間決算短信(連結)(2001年11月28日 第一交通産業)p.2

ただこのまま那覇交通からの営業譲渡まで、タクシー事業を営んでいたかというと、そうではないようで、2002年11月26日公表の決算短信によると、下記のように2002年(平成14年)4月1日にタクシー事業を廃止したとの記述がある(営業開始から1年持たずしてタクシー事業は廃業)。

3.光第一交通(株)は平成14年4月1日をもってタクシー事業の営業を休止し、休眠会社となり、重要性が乏しくなったことにより、連結子会社の範囲から除外しております。

平成15年3月期 中間決算短信(連結)(2002年11月26日 第一交通産業)p.2

このあとは、光第一交通は休眠会社のまま存続したうえで、2004年6月にバス事業者として生き返ったのである。那覇交通からの引継ぎに当たって、運よく休眠会社があったのか、こういう時のために用意しておいたのかは不明である。普通に考えれば前者だが、第一交通は、過去に休眠会社を利用した労働組合潰し騒動があるようなので、後者の可能性も捨てきれない。

ちなみに、この光第一交通の本社がどこにあったのか、どこでタクシー営業をしていたのかは見つけきれなかった。

注釈

  1. 平成13年3月期 決算短信(連結)(2001年5月25日 第一交通産業)p.2

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