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【はじまりはここから⑧】風雨の強行軍

(カバー写真は、高根ケ原からトムラウシ.
 晴れた山行時に望む この距離を歩いた)

翌日8月4日は、風雨で濃霧。冷たく寒い。
山岳部に入って、こんな悪天候は初めてだ。

黙々を強いられる1日となる。
(それだけ主体性がないとも言う)
風雨濃霧の中、この重装備で約18キロもの距離を歩かなければならないとの非情の号令。
予定通り、白雲岳避難小屋キャンプ指定地に向かうらしいのだ。
いざとなれば、途中にキャンプ指定地や避難小屋があるらしい。

昨日のロックガーデンを再び戻り、やはり疲れ、日本庭園と呼ばれているらしい地帯でシマリスを見つけた。
風雨濃霧の行軍で、この辺りから登山路も泥まみれで誰もおしゃべりしない。
そもそもこの合宿中に楽しくおしゃべりをできる余裕はほとんどなかったように思う。
ブッチとあっちゃんはもともと寡黙だし、O君とAヒサ君はたまに冗談をたたき、一番愉快な会話があったのはM田君だけだったかも知れない。

ヒサゴ沼キャンプ指定地への分岐点通過。
化雲岳(標高1954m)通過。岩があった。
化雲平と呼ばれる木道があるところに出る。
ワタスゲ(後で知る)がちらちら白い綿毛を見せている。
五色岳から化雲平に向かうが、ハイマツ帯の中をトラバースしてゆく感じ。
忠別岳避難小屋分岐から五色岳に登る。
登山路はハイマツが生い茂っていて結構しんどいヤブ漕ぎ。
晴れていれば、下に忠別岳避難小屋が見えるはずとのこと。
忠別岳からの下りはチングルマ(後で知る)のお花畑が広がっていた。綿毛がほとんど。

ここで風雨を避けながら、背丈ほどのハイマツの登山路上で立ったまま昼食の乾パンをみんなでかじる。乾パンは牛乳と一緒に食べたいが、所詮無理な話。
あっちゃんは誰から水分補給を受けたろうか。
忠別岳山頂(標高1963m)を通過。
西側は断崖になっているよう。
沼地では、再びワタスゲがある。
やがて高根ヶ原は平坦な台地になってゆき、道迷い防止のためケルンがあちこちに積んである。
ずっと景色は何も見えない。
高根ヶ原の鞍部からゆるゆると300mほど登り、小屋がうっすら見えてくる最後がキツイ。
ようやく白雲岳避難小屋キャンプ指定地に到着。
時は16時前だろうか。
もう歩きたくない。一昨日からキツすぎだ。
足の筋肉は、もう言うことを聞かないだろう。
相変わらずの風雨濃霧なり。
身体が冷えきった。寒い。
雨の中、全身びしょ濡れで、びしょ濡れのテントを張る。

こんなにも喋らなかった日、笑わなかった日、人に会わなかった日は、初めてではないだろうか。

K先生曰く、この地で野生ヒグマに名前もつけて餌付けして、写真撮影をしていた方がいたらしい…

何を夕食にしたのかさえ忘れてしまったが、その夜、テントの中で、滝から落ちたO君が突然、饒舌になった。
まるで興奮している。マシンガンのようにいろいろなことを喋り出す。止(と)めても聞かない。
彼の一方的な話は夜遅くまで続いた。
一体、何だったのだろうか…



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