見出し画像

東京都美術館「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」感想と見どころ

1.概要

東京都美術館で開催されている「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」を観てきました。バラエティに富んだ内容でとても楽しめました。

第1回印象派展から150周年を迎える2024年、印象派がヨーロッパやアメリカへもたらした衝撃と影響をたどる展覧会を開催します。19世紀後半、大都市パリには国外からも多くの画家が集いました。パリで印象派に触れ、学んだ画家たちは、新しい絵画の表現手法を自国へ持ち帰ります。本展は、西洋美術の伝統を覆した印象派の革新性とその広がり、とりわけアメリカ各地で展開した印象派の諸相に注目します。
アメリカ・ボストン近郊に位置するウスター美術館は、1898年の開館当初から印象派の作品を積極的に収集してきました。このたび、ほとんどが初来日となる同館の印象派コレクションを中心に、日本でもよく知られるモネ、ルノワールなどフランスの印象派にくわえ、ドイツや北欧の作家、国際的に活動したサージェント、さらにはアメリカの印象派を代表するハッサムらの作品が一堂に会します。これまで日本で紹介される機会の少なかった、知られざるアメリカ印象派の魅力に触れていただく貴重な機会となります。

展覧会公式HPより

2.開催概要と訪問状況

展覧会の開催概要は下記の通りです。

【開催概要】  
  会期:2024年1月27日(土)~4月7日(日)
 休館日:月曜日 ※ただし3月11日(月)、3月25日(月)は開室
開場時間:9:30-17:30
     金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
一般料金:一般2,200円 大学生・専門学校生1,300円 65歳以上1,500円
     ※高校生以下無料。
     ※18歳以下(2005年4月2日以降生まれ)の方は、
      3月1日(金)~4月7日(日)に限り無料。
     ※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健
      福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と
      その付添いの方(1名まで)は無料。
     ※毎月第3土曜日・翌日曜日は家族ふれあいの日により、
      18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2名まで)は
      一般通常料金の半額(住所のわかるものをご提示ください)。
      日時指定予約不要、販売は東京都美術館チケットカウンター
      のみ。

展覧会公式HPより

訪問状況は下記の通りでした。

【日時・滞在時間・混雑状況】
日曜日の13:00過ぎに訪問しました。ロッカーが使えないというほどではありませんしたが、結構混んでいました。会期末に向けてさらに混むかもしれません。展示作品数の割にボリュームがあり、2時間半くらいで観終わりました。

【写真撮影】
いくつか撮影スポットがありましたが、作品の撮影は不可でした。

撮影スポットより

【グッズ】
クリアファイルやストラップなどおしゃれなものばかりで選ぶのに苦労しました。図録が表紙違いで2パターンあり、3/3(日)時点ではモネの「睡蓮」が表紙のものは売り切れで通販受付中でした。展覧会特性のウスターソースがあったのが面白かったです(由来は不明)。

3.展示内容と感想

展示構成は下記の通りでした。

Chapter1 伝統への挑戦
Chapter2 パリと印象派の画家たち
Chapter3 国際的国際的なな広広がり
Chapter4 アメリカの印象派
Chapter5 まだ見ぬ景色を求めて

展覧会チラシより

全体的に伸びやかで明るい作品が多く、気持ちよく鑑賞できました。Chapter1では風景画に目を向けた作家の作品が展示されていました。ひとえに風景画といっても人々の暮らしや穏やかな日常が感じられる作品が多く、身近なものに目を向けるというのが大きな着眼点の変化だったということが伝わってきました。

Chapter2では本家・フランスの印象派の作品が展示されていました。シスレー、ピサロ、モリゾといったおなじみの作家の作品が多かったのですが、各作家の個性がよく出た作品ばかりで充実感がありました。その中でパリに留学したアメリカの作家・チャイルド・ハッサムの「花摘み、フランス式庭園にて」が展示されていたのですが、木漏れ日のきらめきや手前に植物を配した大胆な構図などまさに印象派な作品で、次章以降の印象派の国際展開にうまくつなげていました。

Chapter3、Chapter4では、パリで印象派に触れた画家たちが自国でその様式を展開していった様子が紹介されていました。筆触分割、非対称の構図など印象派の技法を用いつつ、北欧の光の柔らかさ、アメリカの広大な農村、地中海の強烈な陽光など地域性を感じる作品ばかりで、各国を旅しているような気分になりました。またそれ以前に比べて地球規模での情報伝達が加速度的に早くなっているのが分かるのも興味深いコーナーでした。

Chapter5は印象派を経てさらに新しい表現を模索した作品が展示されていて、特に色彩の力を感じたセクションでした。中でもポール・シニャックの「ゴルフ・ジュアン」とジョルジュ・ブラックの「オリーヴの木々」が印象に残りました。どちらも実在の風景を独特の色彩で描いた作品ですが、この世ならざる光景(楽園というか、彼岸というか)のように感じられ、色彩というのは観念に訴える要素もあるんだなと思いました。

撮影スポットより

作品の合間に美術館と画商、あるいは美術館と画家本人の作品購入をめぐる手紙や電報のやり取りが紹介されているところも面白い点でした。美術館特別価格の提示であったり理事会の内容であったりと、絵画購入のリアルな様子が伝わりました。アートは美術館で展示されていると単純に作品として見ますが、ビジネスの側面もあるということを改めて感じました。

4.個人的見どころ

魅力的な作品ばかりでしたが、特に印象に残った作品は下記の通りです。

◆ジュリアン・デュプレ「干し草作り」1886年 ウスター美術館
斜めに交差した人物が互いに引き合っているというか回転しているようで、ダイナミックさを感じる作品でした。

ジュリアン・デュプレ「干し草作り」1886年 ウスター美術館
※グッズのポストカードを撮影

◆ピエール=オーギュスト・ルノワール「闘牛士姿のアンブロワーズ・ヴォラール」1917年 ウスター美術館 
ルノワールの量感のあるタッチで男性を描くと威厳があるなと思いました。特にふくらはぎのがっちり感に目が行きます。

◆ジョン・シンガー・サージェント「キャサリン・チェイス・プラット」1890年 ウスター美術館
暗室でモデルにスポットライトを当てたようなライティングが印象的で、印象派というよりも世紀末芸術に通じる耽美さを感じました。サージェントの「カーネーション、リリー、リリー、ローズ」の実物を見るのが私の夢の一つです(笑)。

ジョン・シンガー・サージェント「キャサリン・チェイス・プラット」1890年 ウスター美術館
※グッズのポストカードを撮影

◆チャイルド・ハッサム「朝食室、冬の朝、ニューヨーク」1911年 ウスター美術館
現実の光景の時間を止めたような作品はあると思うのですが、こちらは絵の中に固有の時間が存在するような不思議な作品だと思いました。窓の外の急速に近代化が進む光景とゆったりとした時間が流れる室内の取り合わせがそう感じさせたのかもしれません。

◆ブルース・クレイン「11月の風景」1895年頃 ウスター美術館
侘び寂びを感じるような清浄な気を感じるような、日本人の感性に訴えるものがある作品でした。

◆ジョージ・イネス「森の池」1892年 ウスター美術館
静謐で神秘的な光景に引き込まれました。ヨーロッパとはまた異なるアメリカ独自の信仰心が表れているように思いました。

5.まとめ

魅力的な作品が多く、また美術と社会のかかわりについても感がさせられるとても充実した内容でした。会期末に差し掛かっていますが、興味のある方は是非行かれることをお勧めします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?