東京都美術館「マティス展 Henri Matisse: The Path to Color」感想と見どころ
1.概要
東京都美術館で開催されている「マティス展 Henri Matisse: The Path to Color」を観てきました。例の如く「日曜美術館」、「新・美の巨人たち」を見て興味が湧いたのですが(笑)、とても楽しめる展覧会でした。
2.開催概要と訪問状況
展覧会の開催概要は下記の通りです。
訪問状況は下記の通りでした。
【日時・滞在時間】
日曜日の13:30 頃訪問しました。全8章とボリュームのある展示だったのですが、導線が工夫されているのかテンポよく鑑賞することができました。グッズも買って16:00頃会場を後にしました。
【混雑状況】
結構混んでいましたが、混雑しているというほどではありませんでした。会期末なると大混雑かもしれません。
【写真撮影】
4章~6章のフロアは撮影可でした。
【グッズ】
ポストカードの種類が豊富で迷ってしまいました(笑)。マティスは「窓」がテーマの作品が多かったそうですが、窓にちなんでかポストカードやポスターを入れる額縁のグッズが推されていました。
3.展示内容と感想
展示構成は下記の通りでした。
幅広い作品群からマティスの研究熱心さが伝わる、知的好奇心を刺激される内容でした。ほぼ年代順に作品が展示されていて、各年代で色と形(1章~2章)、平面と立体(3章)、装飾と単純化(4章~6章)といったテーマを徹底的に考え抜いて制作にあたっていたことがよくわかりました。会場では完成作と構想段階の素描が並べて展示されていたり制作風景を記録した写真があったりと、制作過程を想像できる工夫がされていました。マティスは自分の感覚を表現するというよりは色や形が感覚に訴える要素を突き詰めることに関心があったと思うのですが、素材の持ち味を最大限に活かすシェフのような制作態度だなと思いました。
展示には第一次世界大戦の閉塞感の中で制作された「窓」をテーマにした一連の作品や大病の後に取り組んだ切紙絵の連作も含まれていて、逆境をバネに傑作を生みだす人間力も感じることができました。
制作に対するストイックな姿勢の一方で、作品自体は鑑賞者に対して開かれているように感じられました。自他ともに集大成と認めるロザリオ礼拝堂について「神を信じているかどうかにかかわらず、精神が高まり、考えがはっきりし、気持ちそのものが軽くなるような場所」(展覧会キャプションより)を目指したと語っていたそうですが、こうした感触はマティス作品に共通しており、このあたりのバランス感覚が作品が愛される所以かと思いました。
4.個人的見どころ
これだけ作風の変遷が激しいと全ての期間がストライクというのは難しいのですが、私としては特に2章、4章に好みの作品が集中していました。
◆アンリ・マティス「グレタ・プロゾールの肖像」1916年末 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館蔵
かなり簡略化した描写なのですが、モデルの知的な魅力が伝わるところが凄かったです。青と黄色というのはマティスが良く使う配色の1種ですが、黄色の鮮やかさによって絵の印象を自在にコントロールしているように思いました(この作品の場合は黄土色に近く落ち着いた感じがします)。
◆アンリ・マティス「金魚鉢のある室内」1914年春 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館蔵
◆アンリ・マティス「窓辺のヴァイオリン奏者」1918年春 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館蔵
この2点は色の持つ印象がダイレクトに伝わってきて、インパクトがありました。「窓辺のヴァイオリン奏者」は亡霊のような人物に加えて、窓から見える赤く染まった空が終末的なものを感じさせ、赤ならではの動的な緊張感がある作品だと思いました。一方で「金魚鉢のある室内」は青が基調で金魚鉢の外の世界は時が止まっているかのような印象を受けるのですが、こちらは青の持つ静的なイメージが活かされているように感じられました。
◆アンリ・マティス「ニースの室内、シエスタ」1922年1月ごろ ポンピドゥー・センター/国立近代美術館蔵
白い服の女性の清楚な雰囲気とお洒落な室内の描写の取り合わせが魅力的でした。人物が画面の下側に斜めに配置されていて、人も含めて室内空間全体でシエスタ(休憩)を表現しているように思いました。
◆アンリ・マティス「赤いキュロットのオダリスク」1921年秋 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館蔵
華やかで目を引く作品でした。衝立とヴェール(?)、絨毯とキュロットが一体化して見える一方でモデルの女性の描写は立体的(特に腹筋)で、不思議な存在感がありました。
◆アンリ・マティス「馬、曲馬師、道化」(「ジャズ」より)1947年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館蔵
「ジャズ」シリーズは奔放なフォルムとタイトルの関連性を想像する楽しさに加え、どこか毒気があるところも面白いところだと思いました。「馬、曲馬師、道化」は楽しいサーカスの中で馬の楽しくない感が滲むようで、シュールな味がありました。
5.まとめ
マティスと一緒に絵画探求の旅に出たようなワクワク感が味わえる展覧会でした!会期まだありますので、気になっている方は混む前に行かれることをお勧めします!!
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