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ゲーマーは全員『君のクイズ』を読んでみてほしい

手に取ったきっかけは、オモコロ編集長の原宿さんの呟きだった。

最近QuizKnockさんの動画をよく見ていることもあり「クイズと向き合う人間の矜持」がどういったものなのか興味が湧いた。つい昨日のことだ。

仕事のバカでかいデータの保存時間やご飯中、風呂などのスキマ時間にこまごまと読み進めていたらあれよあれよとページをめくる手が止まらなくなってしまい、気づけば朝の4時に読了していた。繁忙期なのに。

ごめんカビゴン、また約束守れなかった…。

あらすじ

TV番組の決勝戦で対戦相手が問題を一文字も聞かずに正解した「0秒解答」が本当に「(イカサマを)やっているのか」をクイズと向き合いながら解き明かしていくミステリー。
生粋のクイズプレイヤーである主人公のクイズへの取り組み方、考え方、対して芸能人である対戦相手への読み合いや思うところの言語化がゲーマーに刺さること請け合い。

驚くほどの読みやすさ

まず文章がめちゃめちゃ読み進めやすい。不思議な推進力みたいなものすら感じる。
なんでこんな読みやすいんだろうと考えてみると「ブログサイズの文章量の連続で成り立っている」というところが大きそうだと感じた。
ブログサイズといっても実際にブログ形式を取っているわけではない。主人公が過去のクイズを回想しながら謎に徐々に迫っていく形式がベースにあり、その回想したクイズにつき1エピソードの小話が挟まるのがちょうどブログの1記事をサクッと読んだぐらいの感覚になる。エピソードごとに明確に「●」と区切りも入っており、読み手側の一息いれるタイミングのわかりやすさも読みやすさに一役買っているように思う。

これだけ聞くとバラバラと短編的なものの連なりのように聞こえるかもしれないが、それでいてちゃんと本流に向かってすべてのエピソードが収束していく面白さは存分にミステリーなので安心してほしい。
また「クイズでイカサマは実際に行われたのか?」という誰しもが想像しやすい謎なのも読みやすさに拍車をかけている。とにかく読みやすさはこのタイパ時代と呼ばれる昨今には強力な武器だと思った。

競技者の思考の言語化がとてもおもしろい

クイズというお茶の間大人気コンテンツ、誰しも1度は楽しんだことがあるだろうものに対して真剣に取り組む人が、どのような考えや矜持をもって取り組んでいるのかということがとても面白く言語化されている。自分が触れたことのあるものや好きなものが上手に言語化されるのは独特の気持ちよさがあり、この本はその気持ちよい部分を大変くすぐってくれる。さらに最初にも書いたように最近QuizKnockさんをよく見ていることもあり、面白みが増す相乗効果もあってよかった。(奥付にQuizKnockさんを参考にした旨が書かれていて少し嬉しくなった)

作中に「クイズが上手い人間は一般人に魔法使いと思われがち」という表現が出てくる。この言葉にQuizKnockさんを始めとする競技プレイヤーの配信がなぜ面白いのかヒントがあるように感じた。

クイズで問題のほんの最初を聞いただけで正解した場合、一見すると何のとっかかりもない状態から急に答えを見出した「魔法使い」のように見える。それこそ伊沢さんの地球押しなどの人間離れしたソレは超人めいていてかっこよかったりするが、実際は別に何もヒントがない状態から答えているわけではない…ということをQuizKnockさんはYouTubeでよく解説してくれている。そこにはちゃんとした理論や攻略法が存在し、地力はあれど皆努力してその能力を磨いていることがよく分かる。
この瞬間に魔法は魔法ではなくなり、今まで魔法に見えていた人間たちにも考える面白さや気づきを与えてくれる。本当にいい時代だ。なんなら自分も少し魔法を使えるような気分にさせてもらえるのも素晴らしい(実際は使えないのだけども)

この本はそうしたクイズ競技に対する思考の言語化の面白さや、現場の臨場感の描写がとても丁寧で、さながらハンターハンターのようなバトル漫画のようなおもしろさも兼ね備えている。一粒で3度ぐらい美味しい。それでいて読みやすい。マジでサクッと読める。

そして何より主人公の思考を巡らせているときのなんとも言えないオタク仕草がゲーマーにとても刺さる。面倒くさく、ちょっぴりイタさや苦味を伴う主人公のソレはどうあがいてもゲーマーのソレで「わかる(わかりたくない)」みたいな気持ちが生まれる瞬間がたまらない。

今回はあくまでクイズの話だが、これはクイズに限らず “ 競技 ” に共通する部分の面白さのように感じる。実際作中で主人公もそう言っている。この感覚は競技に携わる人間全てにあるものだ…と具体的な競技名の中に『リーグ・オブ・レジェンド』も含まれていて密かに嬉しくなった。

いいから読んでみてほしい

個人的にはオチ含めて大変好みでした。それより何よりやっぱりなにかに真剣に取り組んでいる人間の感情や思考を垣間見させてもらうのが好きなんだなぁと改めて感じられとてもよかったです。

現場からは以上です。
この夏の読書感想文にぜひ。


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