見出し画像

石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」ヤマハ(7951) 創刊号2008/12/30

※このレポートは2008年12月に作成されたものであり、企業情報や数字等は当時のものです。またリンク先の変更によりリンク切れの場合があります。あらかじめご了承の上お読みください。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
=================================
-------------------------創 刊 号---

        石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」
---------------------------------
=================================

 早速のお申し込みをいただきましてありがとうございます。
 このメルマガは、億の近道火曜日の大人気執筆者、石川臨太郎が皆様へお贈りいたします。
週に1回(火曜日を予定)配信いたします。
 2009年1月20日配信分まで無料でお読みいただけますので、まずは内容を吟味いただき、納得いただきましたら有料購読をお願いいたします。
 なお、この有料メルマガの売り上げの一部は、億の近道の発行運営に活用されます。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
            ◆Contents◆

         ◇有料メルマガの方針について
         ◇銘柄研究「ヤマハ(7951)」
         ◇コラム「企業の内在的価値について」

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

◇有料メルマガの方針について

 このメルマガでは、
1.企業研究
2.コラム
・自分の決めたことを実行に移すために役立つ考え方を紹介
・調査に使うツールなどについて紹介

以上のコンテンツを週に1回配信いたします。

1.企業研究
A)「将来に向けて株価が大きく回復する可能性を秘めた、将来を託すのに不安の無い企業群」
 ・時価総額が数百億円規模と、それなりに大きくて日本を代表するような企業
 ・自己資本比率が主に50%以上の企業
 ・事業価値の高い企業
B)「いま現在の収益を上げるため、株価の上昇が期待できなくてもインカムゲインという高い経済的効用を得られる企業群」
 ・配当と優待を合わせた総合利回りが高い企業(今の相場環境では6%以上)
 ・低PBRかつ低PERのバリュー株。
 ・過去に蓄えた資産(現・預金+投資有価証券+不動産)が時価総額の2倍を超えるような配当優待総合高利回り企業。

以上、二つのカテゴリーの企業を取り上げていきます。

2.コラム
 銘柄研究も大事ですが、自分が考えたとおりに投資を実行できなければ、成果を得ることは出来ません。
 多くの投資家は、自分の買い値より安くなってしまった含み損のある株を売って、新しい株に投資することに精神的に苦痛を感じて、ポートフォリオの組み換えが出来ない方も多いです。また銘柄シフトを実行しても、損をしたことで精神的に病んでしまったり、自分を責めすぎて暗い人生を自分で作り出してしまっている方も多いです。
 投資が自分の思惑通りにいかずに精神的に苦痛を受け続けるのは、あまり有意義なことではありません。そんなとき、どう考えて、自分を納得させていくのか。そのためのヒントになるようなことも取り上げていきます。

 株式投資を実践していくのは、舗装されていない悪路を車で走るのと同じようなリスクが伴います。アップダウンが激しく、がけ崩れや、落石もときどき起こす株式市場という舗装されていない変化に富んだ悪路、厳しいけれど、目的地にたどり着けば、大きなお宝の山が待っているという、素晴らしい黄金道路でもある道を、なるべく安全に運行し、完走するための技術を身につける。そのための努力を、ごいっしょにさせていただくことが出来たら、とてもうれしいです。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

◇銘柄研究 ヤマハ(7951)

 まずはヤマハの資産価値を計算します(必ず自分で決算短信などを確認してください)。

http://ir.nikkei.co.jp/irftp/data/tdnr2/tdnetg3/20081031/5bghgv/140120081020075791.pdf

 平成21年3月期第2期決算短信のバランス・シートを参考に資産価値を計算しました。

 現・預金513.9億円
+売掛債権(売掛金+受取手形)742.7億円
+短期有価証券110.0億円
+投資有価証券963.8億円
+在庫911.3億円
+土地簿価594.9億円
-全部の負債(=流動負債+固定負債)1863.3億円
=1973.3億円

 時価総額は12月24日の終値815円で計算すると1607.6億円になります(自己株式を除いて算出)。

 ヤマハは明治創業の歴史の古い企業で、土地の簿価は非常に安いです。土地の再評価に関する法律(平成10年3月31日公布法律第34号)に基づき、同社と連結子会社1社の事業用土地の再評価を行っていますが、まだ土地の価格が下落し続けていた時期の固定資産評価額に基づき、再評価しているものなので含みはかなり大きいと判断できます。

 固定資産評価額は公示地の7割程度とされているので、単純に考えれば3割程度の含み益を見込めますが、再評価後の固定資産評価額の上昇分は増額されずに(←無視されて)、固定資産評価額が下がった場合のみ、その下落額が開示されています。すでに簿価で計算しても時価総額以上の試算価値があり、非常に割安です。
 興味のある方はEDINETで有価証券報告書を見て、土地の簿価と実際の公示地とを比較してみると勉強になるでしょう。ただ土地が膨大にあり、大都会地の不動産などは、まとめ書きされています。そのなかに、銀座の一等地にあるヤマハホールなどがあります。一番価値のある都会地の土地の含みを直接計算できないのは残念です。

 資産価値に加えなかった資産もかなりあります。

 建物464.3億円+設備119.7億円+その他の資産393.3億円
 =977.3億円があります。

 景気が悪化して利益が低迷しても、充分生残れる強固な財務基盤を持っている企業だと判断します。

 次に事業価値の定性的な検討をします。

 まず、ヤマハは世界最大の楽器メーカーです。プロ用からアマチュア用まで、多種多彩な楽器を製造しています。技術力も高く、製品開発能力も充分高いと判断できます。しかしヤマハがすごいのはメーカーとしての製造能力の高さだけではありません。

 当社のビジネスモデルはヤマハ音楽教室を日本全国で展開し、楽器の需要と購買者をみずから作りだしていくことです。単なる製造メーカーとは別格の優れたビジネスモデルを構築しています。日本ではエレクトーンという電子オルガンの当社の商品名を、普通名詞(電子オルガン=エレクトーン)的に使われるほど普及させました。
http://www.yamaha.co.jp/

 このビジネスモデルが世界各国で通用するかは未知数ですが、台湾やアジア諸国では、かなりの効果を生んでいるようです。一時的に景気後退により売上が減ったとしても、音楽は世界中の人々から必要とされています。音楽には楽器が必要になります。

 日本では世相を反映する人気テレビドラマ「渡る世間は鬼ばかり」にも中高年おやじバンドが出てきます。実際に若いころ音楽をやっていたお金を持った退職世代が、若いころ持てなかった高い楽器を買い求めてバンドを組むような動きもあるようです。アジアなど経済力を高める新興国を中心に、ヤマハの将来の利益成長は充分期待できると考えます。

 蛇足ですが当社の持分会社であったヤマハ発動機の株を、株価の高かった平成19年に売却して持分会社を外したことも、運の強い企業だと感じます。そのためにキャッシュを大きく貯め込んで、株主にも平成22年3月期まで特別配当として20円ずつ配当することを公表しています。

 今期はこの特別配当を含めて年間50円配当の予定です。配当利回りは6.13%になります。また今期から優待内容を変更し、100株で当社のヤマハリゾートのオリジナルギフト1500円分をいただけます。高技術大型株としては配当優待総合利回りも7.97%と非常に魅力的です。

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

◇コラム:企業の内在的価値について

 株式投資の本質とは、
「株式投資は人間の欲望を変数として機能している制度であり、わずかな入力(投資家の欲と恐怖に駆られた投資行動)の変化が劇的な出力(投資の損益)の変化に帰結するものである」ということを知識としては持っていましたが、今回のサブ・プライム問題を発端に、アメリカの金融システムに君臨していた投資銀行や世界最大の保険会社が倒産の危機まで追い詰められる様を見て、この本質を頭の中に再度刷り込んでおかなければならないと肝に銘じました。

 特に株価というのは、企業の本当の価値(私は、これを企業の内在的価値と表現します)に需給という光がさして出来た影だと考えています。今回のように、買い手がいなくなり、売りたい投資家ばかりが殺到すると、光がほとんど消えてしまい、日食が起こって地球上の影が出来なくなってしまったのと同じような状態が起こります。

 企業の内在的価値はあるのに株価(=影)がドンドン小さくなってしまうわけです。しかし日食(=金融パニック)が収まって、太陽が顔を出せば、また影はできて大きくなっていきます。

 私はこの企業の内在的価値を自分なりに把握して、企業への投資を実行していけば良いだけのことだと、考えています。

 企業の内在的価値を計る方法は、いろいろあると思います。株式投資においては自分だけが、その企業の価値を知っていても、他の投資家が知ることが出来ない価値ならば、意味がありません。たくさんの投資家がその企業の内在的価値に気がついて、買いたいと思い投資することで株価が上昇するからです。そこで誰にも分かりやすい切り口で、企業の価値を計って行くのが一番良いと考えています。
 そこで私は、企業の内在的価値は、その企業が過去の利益などで蓄積してきた資産価値と、将来利益を生み出す力の源泉である事業価値の合計であると、考えることにしています。

 資産価値は、バランス・シートに表示されているので、計算するのがそれほど難しくはありません。ただし、製造メーカーの建物や設備の価値というのは、企業の外から見て的確に評価するのは難しいので、現・預金+投資有価証券+売掛債権+在庫という流動資産と土地だけを、企業の資産として考えて計算していきたいと思います。

 企業の事業価値は、売れる商品やサービスを作りだす能力のことを指しています。特許や製造ノウハウ、販売力、経営者の能力、従業員の能力などバランス・シートには表示されていないものに、その源泉があります。建物や設備やその他の資産は、企業の事業価値を裏付ける担保のようなものだと考えていけばよいと思っています。

 経済の平常時であれば、資産価値より時価総額が低いことはあまりありません。その時は事業価値を定量的に計算するのは無理があるので、代替として過去4年間の経常利益の平均金額を5倍して計算することにしていました。
 そして資産価値+事業価値と時価総額の大きさを比較して、割安かどうかを判断していました。

 しかし現在は余りにも株価が小さくなりすぎて、資産価値-全部の負債(=他人資本)の合計より時価総額が小さくなる企業が殆どになりました。時価総額が資産価値以下になっているということは、企業の事業価値をゼロ以下に評価した株価になってしまっているということになります。これから研究対象として取り上げて行く企業は、殆どがこのようなとても割安な企業となります。

 土地を資産に加えるのは、工場の建物や製造設備などは誰にも使いこなせるものではなく、売って現金化するのが難しいのと比較して、土地は汎用性が建物や設備より高いので、売って現金に換え易い点から、資産のほうに加えることにしました。
 これは、どうするのが正解というものはないと思います。自分が納得しやすい区分けをすれば良いと考えています。

 世界一の投資家ウォーレン・バフェットの師匠であるグレアムは、その著書「証券分析」において、アメリカの大恐慌のあと『NY証券取引所上場の全製造会社のうち、実に40%以上が1932年中いずれかの時点で自社の正味当座資産以下の株価をつけた』と書いておられますが、日本にはすでに正味当座資産割れの企業がたくさん発生してきています。

 正味当座資産とは企業のバランス・シートの現・預金+売掛債権+投資有価証券-全負債(流動負債+固定負債=他人資本)のことで、この総額が時価総額を超えているということです。

 正味当座資産に在庫を加えた正味流動資産以下の時価総額にまで叩き売られた企業はいくらでもある感じです。

 それほど資産背景が豊かな企業であることを確認して投資しているならば、金融パニックで株価(=影)が小さくなってしまっても、世間の投資家の恐怖感に付和雷同して、自分もパニックに陥って、素晴らしい企業の株を叩き売るような、間抜けなことをしなくて済むと考えています。

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

発行者:NPO法人イノベーターズ・フォーラム
 email:magazine@iforum.jp
 http://www.iforum.jp/
このメールマガジンの無断転載・引用・再配布を禁じます。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?