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石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」野村不動産ホールディングス(3231) 2016/08/23

※このレポートは2016年8月に作成されたものであり、企業情報や数字等は当時のものです。またリンク先の変更によりリンク切れの場合があります。あらかじめご了承の上お読みください。

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        石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」
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            ◆Contents◆

 ◇銘柄研究 野村不動産ホールディングス(3231)
 ◇コラム 株価下げは新たに投資しようと考える投資家には有利なこと


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◇銘柄研究 野村不動産ホールディングス(3231)


 本日は、2004年(平成16年)に設立され、「野村土地建物株式会社」から「野村不動産株式会社」の発行済株式全部の現物出資を受け、持株会社としての業務を開始した、野村不動産ホールディングスを研究銘柄として取り上げます。

 野村不動産は、1957年(昭和32年)に設立され、ビルの賃貸・管理を主業務とした不動産事業からスタートし、以来、時代やマーケットに適応しながら総合デベロッパーとして積極的に事業領域を拡大してきました。

 1957年設立当初は、当時の日本の社会的課題であった住宅難解決のためにニュータウンの建設をターゲットとしていました。

 野村不動産では、製販管一体の強みを活かし高品質な住まいづくりにこだわる「PROUD」シリーズと、上質な住まいを魅力的な価格でお届けすることをコンセプトに首都圏で展開している「OHANA」シリーズの2つの住宅ブランドを基軸にした『住宅事業』、オフィスビル・商業施設・物流施設などの企画/開発/運営を行う『都市開発事業』、企業不動産価値の最大化をサポートする『CRE戦略支援業務』や、不動産ファンドの組成・運用を行う『資産運用事業』といった幅広いフィールドにまたがり、デベロップメント事業を核としながら、時代に即した商品・サービスを提供して成長しています。

 野村不動産ホールディングスは、野村証券から生まれた企業です。戦後の復興期に成長を続けていた野村證券は、1952年に新社屋の建設計画を発表しました。この新本社ビルの計画推進や完成後の管理運営業務の担い手として、1957年に創設されたのが野村不動産です。

 この当時、住宅難の解消を目指した宅地開発やビル開発が相次ぎ、官民一体となった戦禍からの復興・発展事業が各地で推進されており、不動産業界は活況を呈していました。
 設立翌年に野村證券の新社屋竣工を迎え、管理運営業務をスタートさせることになった野村不動産は、より幅広い事業分野への進出を視野に入れることになりました。設立趣意書には、「日本の住宅難解決のため、一大ニュータウンの建設に全力を投ずること、これこそが社会に報ゆる最善の道である」との社会的使命が記されています。

 設立以来、野村證券関連部門と一般不動産部門を2つの柱として事業展開してきた野村不動産ですが、1969年に野村證券関連部門の分社化が決定しました。これにより、野村不動産は、一般不動産部門の発展・拡充を目指して独自経営の道を歩むことになりました。

 野村證券関連部門を分離したことにより、野村不動産所有のオフィスビルは2棟になったことで、急務となったのが新しいビルの建設です。そこで野村不動産が目指したのが超高層ビルの建設です。

 1970年当時の日本のビルの大半は地上10階建て未満でしたが、元々所有不動産が少なかった野村不動産は、空中にスペースを求めたのです。

 当時、都市計画が決定していた新宿副都心をターゲットにして、1972年に用地を取得。前例の少ない取り組みだけに、設計事務所や建設会社とともに「新宿野村ビル建設委員会」を設置して、さまざまな協議・検討を進めました。中、日本経済がオイルショックに見舞われるなどの逆風もありましたが、関係者はあきらめずに粘り強く事業を推進しました。

 災害の早期発見や迅速な対応を可能にする最新の防災設備を完備するほか、節水や空調の効率化などの省エネ化、コンピュータによる優れた管理体制の確立など、時代の最先端をいく超高層ビルとして、1978年に竣工しました。業界内では後発だった野村不動産が、いち早く超高層ビルの建設に挑戦したことは、全社員の結束力を高めるという点でも寄与しました。

 海外展開も積極的に行ったことがありました。1971年に行った南太平洋フィジー島での別荘地開発からスタート。その後、1983年に米国ロサンゼルス市内でのオフィスビル取得や、中国・英国における営業拠点としての現地法人設立など、事業規模を拡大していきました。そして、1989年からは事業活動が本格化しました。ワシントンDCのオフィスビル開発やニューヨーク郊外の大型ショッピングセンター開発、豪州シドニーの大規模複合開発など、米国を中心に大型プロジェクトを次々と始動させていきました。

 しかし、その後まもなく日本国内ではバブル経済が崩壊し、日本経済は大幅に失速します。また、米国や豪州も金融不安や大不況の只中にあったため、海外の事業推進は困難を極めることになりました。1993年9月時点で海外には600億円もの資金が投下されていましたが、深刻な状況を受けて売却による資金回収が進められ、2005年には完全撤退しました。

 このように野村不動産の海外進出は、事業面から見ると大きな痛手となりましたが、不動産ビジネス先進国だった欧米から得た知見は貴重なものでした。特に、当時の日本にはなかった開発資金調達のスキームに関わったことが、後の不動産投資ビジネスにおける先駆性へとつながっていきます。この海外進出で学んだ知識が大きく開花するのがビル投資ファンドビジネスです。

 不動産を取得して、賃貸や売却によって利益を得るというのが、それまでの不動産開発のビジネス・モデルでした。

 しかし、物件取得や工事に投入した資金を回収して利潤を得るまでには、事業規模によってはとても長い時間がかかります。巨額の借入金を抱えたまま事業を推進することになるため、たとえポテンシャルの高い物件であっても、途中経過では経営の圧迫要因になりかねないのです。

 このリスク回避策として、野村不動産が考え出したのが、ビル投資ファンドの組成です。野村不動産は、1998年に投資家導入のための特別目的会社を設立しました。海外投資家を主眼に置き、米系証券会社からの融資や、米国不動産投資顧問会社からの投資を受けてファンドを組成し、ビルの取得や賃貸運営、売却などの不動産投資ビジネスの仕組みを構築し、成功に導いたのです。

 なお、こうしたビジネス・モデルは、欧米の不動産市場においてはすでに確立していました。野村不動産が日本国内でこのビジネスを立ち上げる際には、海外事業を通じて得た知見が大きく役立ったのです。

 また、2003年には国内でも不動産証券化ビジネスが正式に認可されましたが、これに先んじて不動産投資ビジネスに着手していた野村不動産は、いち早く投資商品を開発するなど、先駆者としてのアドバンテージを発揮し続けています。

 これが、業界のフロントランナーとして現在運用資産残高『1兆円超』を誇る野村不動産のファンドビジネスの先駆けとなりました。


 野村不動産は1957年の設立以来、不動産に関する社会的要請に応える事で成長してきました。

 現在の日本の社会環境は、少子高齢化による人口の減少やエネルギー問題など、解決すべき課題がより大きくなっており、社会のニーズも大きく変化しています。変化の本質を見据え、デベロッパーとして培ってきた独自のノウハウと経験、経営資源を総動員して、課題を解決していくことが野村不動産の次なる成長を目指しています。


 この様な状況の中、新しい時代に向けた様々な戦略を企画し着実に実現させていくため、2014年4月に「開発企画本部」を新設しました。

 これまでの知識や経験を活かして、都市再生のための再開発事業を積極的に推進し、耐震性に劣る建物の建替えなど、街に安心や安全を提供していくことで、デベロッパーならではの社会貢献を実現していきたいと考えています。
 また一度は失敗した海外事業への進出も計画しており、現在はアジアをメインターゲットに中国北京、シンガポールに拠点を確保し、2015年9月には、ベトナムホーチミンの「フーミーフン」エリアにおける日系企業初の不動産開発「(仮称)ミットタウンプロジェクト」を開始することをプレスリリースにおいて発表しました。今後も海外事業の積極拡大に向けて事業を推進する方針です。


 財務面においては、野村不動産グループで更に安定的な財政基盤と高い資産効率を維持しつつ、持続的な収益成長を実現するため、2025年3月期までに営業利益を倍増(1500億円水準)、売上高1兆円超を目指しています。デベロップメント分野での事業量・事業領域の拡大など、3つの重点戦略を実行することで、野村不動産は次なる成長ステージを目指しています。


〇野村不動産が描く未来
http://www.nre-career.com/special/future/


 まず、野村不動産ホールディングスを本日の研究銘柄として選んだ理由を説明します。


1.野村不動産ホールディングスは、着実に業績を伸ばしており、特に2012年3月期からの利益の伸びが好調です。

 2011年3月期から2016年3月までの純利益(と一株利益)の推移。そして2017年3月期の予想を確認します。

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