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バリュー&グロース銘柄発掘情報#8 【グロース】伊藤忠商事(8001) 2021/06/15


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       バリュー&グロース銘柄発掘情報 第8号

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 プロフェッショナルの執筆者を中心に、グロース銘柄&バリュー銘柄を毎回1銘柄発掘してレポートする内容です。
 毎月第1第3火曜日配信、1回に1銘柄の深掘りレポートです。


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               【目次】


■はじめに
■【グロース】伊藤忠商事(8001) 客員アナリスト 水島寒月


※本メルマガの一部内容を、億の近道へ抜粋の上掲載することがございますので、あらかじめご了承下さい。


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■はじめに


【バリューグロース銘柄プロジェクトより】

 当サービスは、金融のプロフェッショナルを中心とした執筆者が、その時々の注目銘柄の中からバリューもしくはグロースの企業をピックアップし、分析するものです。
 スタンスは中長期投資です。
 ぜひあなたの株式投資ライフにお役立てください。


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■【グロース】伊藤忠商事(8001)

【会社概要】

◆沿革

 同社の創業は江戸時代末期の1858年。近江国(現滋賀県)で初代伊藤忠兵衛が麻布類の卸売業を創業、大阪経由で泉州(現大阪府)、紀州(現和歌山県)へ初めて麻布の持ち帰りを開始しました。
 繊維商社として出発し、戦後は非繊維の取扱比率を1958年にほぼ4割にまで高めるなど、「総合化」を推進。1960年代には、エネルギー・機械・物資関連プロジェクト、鉄鋼関連業務を拡充し、「売上高1兆円商社」に成長しました。

 前期21/3期には、1)連結純利益額、2)株価水準、3)時価総額、でいずれも総合商社首位となる「三冠」を達成。総合商社トップに躍り出ましたが、繊維商社として発展した歴史的経緯もあり、現在でも生活消費分野(繊維、食料など)に強みを持ちます。

 また、古くから中国との関係が深く、1972年には総合商社で初めて中国から総合商社に指定されました。近年は、タイのCharoen Pokphandグループ(CPグループ)および中国最大の国営企業グループCITIC Limited(CITIC)(中信集団)と約6000億円を投じて業務・資本提携を実施するなど、中国、アジアでの事業拡大を積極化しています。

 同社は、伝統的に個性的な社長を輩出し、そのリーダーシップのもとで業容を着実に発展させてきたことも特徴です。「中興の祖」とされる越後正一氏(社長在任期間は1960~1974年)は繊維部門出身ですが、元大本営参謀だった瀬島龍三氏を経営幹部に登用したことで知られます。
 三菱商事、三井物産と比べ、「後発」の繊維商社であった同社に、「国際政治・経済を十分に踏まえた経営判断」を定着させる狙いがあったものと思われます。
 また、食料部門出身の丹羽宇一郎氏(社長在任期間は1998~2004年)は、2000年代に入り、低効率・不採算資産の一掃を断行。一方で、コンビニエンスストア大手のファミリーマートに出資し、持分法適用関連会社としました。
 不良債権の抜本的な処理とファミリーマートへの出資により、今日の「総合商社首位」につながる道を切り拓いたと言えます。丹羽氏はまた、民間人として初めて中国大使に就任しました。同社が長きにわたって中国と良好な関係を続けてきたことが評価されたと言えます。
 2010年に社長に就任し、2018年より会長CEOを続ける繊維部門出身の岡藤正広氏は、「稼ぐ・削る・防ぐ」(頭文字をとって「か・け・ふ」)をモットーに、傘下のグループ会社の収益力向上を着実に推進。中国CITICとの大型資本・業務提携を成功させるなど、同社の収益力の飛躍的な規模の拡大、安定的な推移をもたらし、ついに「総合商社三冠達成」を実現しました。
 岡藤氏は、大阪府出身で東大経済学部を卒業後に同社に入社。一貫して大阪本社の繊維部門を歩み、同社の繊維部門を総合商社有数の地位に引き上げました。現在、総合商社で部門の名称に「繊維」を残すのは同社のみであることが、このことを象徴しています。
 岡藤氏は大阪の繊維部門を離れることなく、同部門のトップに上り詰め、その経営手腕を買われて、本体の社長に就任しました。海外勤務が一度もなく、総合商社の社長に就任するのは、異色の経歴と言っていいでしょう。

 なお、21年4月に社長(COO)に就任した石井敬太氏は、エネルギー・化学品部門出身という、これまた、同社の社長としては「異色」の経歴です。専務取締役・エネルギー・化学品カンパニープレジデント兼電力・環境ソリューション部門長からの社長昇格となりましたが、世界的に「脱炭素」の潮流が加速するなか、蓄電池・再生可能エネルギー事業などを含む電力・環境ソリューション部門を率いてきた知見および経営的手腕を、全社的に展開することが期待されます。

 多くの部門の集合体である総合商社を評価するにあたっては、経営トップである社長をいかに人物本位で柔軟に選択できるかがポイントになると考えます。総合商社は歴史的に、事業環境の激変を、業態を柔軟に変化させることで巧みに対応してきました。
 かつては、「商社冬の時代」などと慨嘆されつつも、これをしのいで生き延びてきたわけです。単なる部門間の妥協、硬直的な持ち回りなどで経営トップを選択していては、対応は不可能だったでしょう。同社には、こうした変化対応のカルチャーが根付いているものと評価しています。


◆事業概要

 21/3期の連結ベースの売上構成比(外部顧客から収益)は、繊維4%、機械10%、金属6%、エネルギー・化学品21%、食料38%、住生活7%、情報・金融7%、「第8」5%、その他1%です。
 また、21/3期の連結ベースの純利益の構成比は、繊維0.4%、機械5.7%、金属25.9%、エネルギー・化学品9.0%、食料6.2%、住生活5.3%、情報・金融14.5%、「第8」5.3%、その他27.7%となりました。
 ちなみに、第8カンパニーは、既存の7部門とは別の組織として19年7月1日に発足しました。総合商社の特徴ともいえる「商品ごとのタテ割り組織」の弊害を是正するため、ファミリーマートを中心に消費者に接する主な事業の資産および人材を移管。既存の組織の活性化および次世代ビジネスの収益化につながることが期待されました。

 また、同社は、既述の中国CITICおよびタイのCPグループ(ともに同社の持分法適用関連会社)を「その他」に含めています。
 21/3期はCITIC、CPグループはともに業績が堅調に推移しましたので、「その他」部門の純利益は1111億円に達し、「その他」の純利益の構成比は約28%に達しています。同社のCITICに対する出資比率は10%ですが、金融事業を中心とする中国最大級のコングロマリットであるCITICの基礎的な収益レベルは、邦貨換算で純利益1兆円程度に達するとされます。
 米中対立の影響なども懸念されますが、業務提携が順調に進めば、同社(伊藤忠商事)の業績拡大に大きく寄与すると見込まれます。

 なお、同社(伊藤忠商事)の部門ごとの主な子会社・持分法適用関連会社は以下の通りです。

 〇繊維~デサント、エドウィン、三景、ジョイックスコーポレーション
 〇機械~東京センチュリー、ジャムコ、ヤナセ
 〇金属~IMEA、伊藤忠丸紅鉄鋼、伊藤忠メタルズ
 〇エネルギー・化学品~伊藤忠エネクス、伊藤忠ケミカルフロンティア、伊藤忠プラスチックス、タキロンシーアイ
 〇食料~Dole、日本アクセス、不二製油グループ本社、プリマハム、伊藤忠食品
 〇住生活~伊藤忠都市開発、大建工業、伊藤忠建材、日伯紙パルプ資源開発
 〇情報・金融~伊藤忠テクノソリューションズ、ベルシステム24、コネクシオ、ほけんの窓口グループ、ポケットカード、オリエントコーポレーション
 〇第8~ファミリーマート
 〇その他~CITIC、CPグループ

【成長ドライバー】

◆柔軟な組織カルチャーが強み

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