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ミニ小説100編 その④

100
ミニ小説100編です。その④
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記事一覧

夕焼けは綺麗とよく言われるけれど、僕にも今日はそう見える。

理由を説明しないといけないと考えると憂鬱だった。 理由は「いっぱい」である。 誰にでもわ…

23

「泣いちゃう」のリピート。

変な興奮をしたくない日。 小沢健二が新曲「泣いちゃう」を配信開始。 コロナウイルスの影響に…

28

山籠もりしたい会社員の山本君。

出来るだけ山に籠って、静かな生活がしたい同級生の山本君はバリバリの会社員になっていた。 …

18

誰も見ない写真。

余命が半年と分かってから、静かに整理をしてきた。 それとなく、退職を伝え、仕事を引き継ぎ…

44

夢は叶っている。

通っていた美容室の、担当美容師さんが独立して、お店を持った。 ローカル線の、小さな駅の少…

42

ざわざわ。

あれは、嘘だ。そんな簡単なわけがない。 と、いう否定。 「……」 ただ、そこに、僕のモヤ…

15

気がかり。

社員が十人弱のうちの会社に、新人が一人入って、二か月弱で辞めていった。 三十代後半の女性。 物静かだけれど仕事は淡々と捌いて、個人的にはとてもやりやすかった。 あとから聞いた話だと、入って二週間ほどで、家族の間で起きた問題で、あまり来れなくなるかもと社長に相談していたらしい。体調不良や、兄弟の仕事を手伝わないといけないことがあったり、彼氏との間に解決しないといけないことが出てきたりと、色々な理由で、出勤が飛び飛びになり、結局、辞めることが決まったのだけれど、最終週は一度も

静かに撫でる。

実家の犬が亡くなったと母親からLINEをもらう。 電話して状況を訊いた。 車との接触事故。 …

13

「僕」の物語。

僕の時間を差し出していることに対し、たまに酷く心苦しくなる。 時間を差し出すことによって…

16

空き地があるだけ。

数カ月前までは畑だった。 今では雑草が生い茂り、たぶんそこが畑だったなんて誰も信じてくれ…

13

震えている。

電車に揺られながら、少しだけ長く目をつぶった。 電車が茅ヶ崎駅のホームに到着し、扉が開き…

17

友好的さは漂う。

少し落ち着こう。 と、思った。 少し落ち着こうと思えば、少し落ち着くことができるのかはわか…

13

昨日観た優しい映画。

昨日、Netflixで観た映画の余韻がまだ残っている。 いい映画だった。 いい映画を観たあとの心…

14

自由気ままに、楽しく、の才能。

自由気ままに、楽しく生きていけたら良いのに。 そう思う。 サーフボードを抱えて、海へ向うおじさんを眺めながら、ラジコンカーを抱えて、公園へ歩く少年の姿を重ねる。 「何かを楽しむのもまた才能です」 と、校長先生が昔、全校集会で言っていた。 「人間は何事にも興味を失ったら、ただ衰えていくだけです。皆さんも、少しでも興味を持てたのなら、是非、学ぶ姿勢を育てていただきたい」 校長先生の話なんて、ほぼ覚えていていなかったのだけれど、「興味を失ったら、ただ衰えていくだけ」という言葉が