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論文指導 リサーチプロポーザルに向けて(1)

さてこれからChatGPTを使って学術論文リサーチプロポーザルをどうかくのかをChatGPTを使って説明していきたい。

ChatGPT  を使った論文術に 関しては、現在次の3つのnote  連載を同時並行で行っている。

学術論文をChatGPTと会話しながら書いてみる は実際の博士論文相当の論文執筆の話である。これはいま僕が書こうとしている論文の話だ。

作文技法101 は学部レベルの文章術を説明している。論文を書く能力をみにつけるにはきちんとした作文を書く能力が必要で、そのあたりを書いている。

論文指導 リサーチプロポーザルに向けて はその中間のレベルであり、博士課程に入って研究計画レポートを提出して、博士論文を目指すときの次の関門であるリサーチプロポーザルに必要な文章術を説明している。ここで一気に本格的な調査と執筆の組み合わせを身につけることになる。

以上3つの異なるNoteを連載しているが、実際の活動において、3つのレベルの執筆活動を現在平行しておこなっていて、それぞれ独立して動いている話の報告なので、論文執筆に関心のある人は是非参考にしてもらいたい。

さて、ここではリサーチプロポーザルを書くために必要なプロンプトエンジニアリングだけを公開する。興味のある人はできれば自由にエッセイを書いて、それをつかってここで自分で最初のドラフトから論文までの流れを追いかけてほしい。

まず、日本語のエッセイであれば翻訳ソフトかChatGPTで英文にしておく。ChatGPT4は英文でないと使えないので、英語にする必要がある。出来た博士論文プロポーザルが英語でもよければそれを提出する。だめなら翻訳ソフトで日本語にもどして文体を整えればいい。それをChatGPTに読んでもらう。プロンプトエンジニアリングはこうだ。

read this article:

ChatGPT をうまく使うにはコンテキストの共有を行う必要がある。そのためにはこのドラフトを読んでもらう。するとサマリーをつくるが、それは無視して次に進む。

what is the claim of this article?


こう聞いたところ、長い文章が返ってくる。ようするに元の文章では明確にclaimが書かれていないのだ。その答えは省略するとして、

make it short

このように頼んだが、まだ長い。
それも省略するが、次のようにお願いした。

make it a sentence

まだ長い。そこで注文をさらに出した。

make it short more
まだ長い。さらに注文する。

make it shorter

三行くらいのセンテンスでClaimがでてきた。適切な長さのセンテンスでないと、そのClaimが正しいのかどうかを論述することが出来ない。このあたりは対面の論文指導でもClaimとは何か、は定番の質問であり、学生は戸惑うところなのだが、ChatGTPでも、何回目かの質問でようやくすっきりとした。

ところで、Claim  とは何か?ちょっとChatGPTに聞いてみよう。

What is a claim in academic writing?


In academic writing, a claim is a statement or proposition put forward by the writer, typically supported by evidence, to argue for a particular perspective, position, or conclusion on a given topic or issue. The claim is the main argument or thesis of the paper, and it is intended to convince the reader of the validity of the writer's point of view. Claims are often debatable, and they can be challenged by counterarguments or alternative perspectives, making them a central feature of academic discourse and critical thinking.

 訳しておこう。

学術論文において、主張とは、ライターによって提起される、通常は根拠を持って提示される声明や命題、であり、特定の視点、立場、あるいは結論を(正しいと)主張するものである。主張は論文のメインアーギュメントあるいはテーゼであり、ライターの視点の妥当性を読者に説得することを目的としている。主張はしばしば議論の余地があり、反対意見や代替意見によって問いかけられることがあり、それが学術的議論や批判的思考の中心的な特徴の一つである。

ChatGPT の説明にコメントを加えておく。引用すると、

通常は根拠を持って提示される声明や命題: supported by evidence, to argue for a particular perspective, position, or conclusion on a given topic or issue.

とある。

ここには二つ大事な要素があって、
evidence
argue for
という二つの言葉で示されているが、主張は証拠を使って、正しいと論述されるものでなくてはいけない、ということがポイントだ。何かを主張するときには証拠と論述がいる、ということだ。ここで論述としているのは英語でargument   あるいは argumentation  と呼ばれる推論のことである。普通は論議と訳されるが、そのような訳だと声高に正しさを主張しているような感じになってしまう。argument は証拠をつかって淡々と聞き手の理性にうったえかけるように論を述べていくので、物事を筋立て立てて述べるという意味の論述という言葉をargument の訳語として使っている。

さて、この主張は正しいのかどうか?つまり証拠と論述でその妥当性を読み手に納得させることができるのか?このプロセスの妥当性を問いかける質問をリサーチクエスチョンresearch questionという。この意味もChatGPT に質問してみよう。

what are research questions of the article?


The article does not explicitly state specific research questions. However, it aims to explore how(以下省略)

するとChatGPTは、リサーチクエスチョンをいま添削中のエッセイに探すが、明確に記述されていないと答えてくる。そこで君ならどのようにここでリサーチクエスチョンを立てるか?と聞いてみる。

will you bring the research questions in the essay you read?

この論文のリサーチクエスチョンをおしえてくれ、と聞くと見つからないと答えてくる。これもよくあるのだが、この学生のドラフトにはリサーチクエスチョンがない。ChatGPTは次のように言う。

The article presents various ideas and insights that could be useful for practitioners and researchers interested in exploring this topic further.
翻訳しておこう。
この記事は、さらにこのトピックを探究したい実践者や研究者に役立つ様々なアイデアや洞察を提示しています。

 つまりトピックやアイデアはあるがリサーチクエスチョンになっていない、というわけだ。これもまあ、博士課程の学生を教える時には、最初に研究計画のエッセイを課題に出すのだが、明確な主張とリサーチクエスチョンを書いてあることはまずない。ここが実はPhDの訓練の第一歩である。

では論文執筆においてresearch question  とは何か?これも聞いてみよう。

what is a research question?

A research question is a clear, specific, and focused question that a researcher aims to answer through their research. It is a fundamental component of the research process, as it guides the selection of the research methodology, data collection methods, and analysis techniques used to investigate a particular phenomenon or issue. Research questions are typically formulated based on gaps or inconsistencies in existing knowledge, theories, or practices, and they are designed to contribute new insights or knowledge to a particular field of study. The research question should be clear and concise, and it should be possible to answer it through empirical investigation or analysis of existing data.

これは大事なことを言っているので、全部訳しておこう。

研究問題(research question)とは、研究者が自身の研究を通じて答えを求める明確で特定された質問であり、研究手法、データ収集方法、および解析技術の選択において基本的な役割を果たします。研究問題(research question)は、既存の知識、理論、または実践における未解決の問題や矛盾を基にして策定され、特定の研究分野に新しい洞察や知識をもたらすことを目的としています。研究問題(research question)は明確で簡潔であるべきで、実証的な調査や既存のデータの分析によって答えることができるようになっている必要があります。

とある。つまり学術論文は証拠と論述で自分の主張(Claim  )が正しいと読み手を説得するものであり、その論述は著者によって投げかけられたリサーチクエスチョンを著者が答える形で行われる。リサーチクエスチョンにはいろいろなものがあり、
1)既存の知識、
2)理論、
3)実践における未解決の問題や矛盾
について問いかける質問でそれに答えるには
実証的な調査や既存のデータの分析が必要となるのである。

リサーチクエスチョンが明示的に書かれていないと論文にはならない。多くの博士課程の学生の研究計画ドラフトにはリサーチクエスチョンが書かれていない。だが学生の言いたいことは指導していればわかる。このドラフトからリサーチクエスチョンをつくれないか?とChatGPTに聞いてみた。

do you think you can add the research questions to the article you read?


As an AI language model, I cannot modify the original article. However, based on the topic and content of the article, some possible research questions related to the use of (以下、研究内容に関わるので省略)
ときて読んでもらったエッセイからいくつかのリサーチクエスチョンを示してきた。内容の関わるところは省略するが、リサーチクエスチョンと聞かれたら何を書けばいいかわかると思う。

  1. How can ?

  2. What are ?

  3. How can ? これは研究対象の人の動きを聞いている。

  4. What are? 研究方法を聞いている。

  5. How ? 組織的な動きを聞いている。

博士論文を書いている学生にこのドラフトのリサーチクエスチョンは何か、というと本人は問題に深入りしすぎていてすっきりと答えることが出来ないことがおおい。だがリサーチクエスチョンと言ってもクエスチョンつまり5W1Hの形の疑問文であり、研究であれば、何をどのように、つまりWhatとHow が中心となる。このクエスチョニングという一般的な方法を自覚するとリサーチに関するクエスチョニングなんだ、となる。そして5W1HからWhatと Howを抜き出して、自分のドラフトに質問をしまくる。これがこつである。

そして、ここまできて、Claim と research question  を踏まえて、最初のドラフトを書き直してください、と頼んでみた。

Then write a new essay including the claim and research questions based on the essay you read

するとご機嫌な返事でエッセイを書き直した。

Sure, here's a new essay that includes the claim and research questions based on the article 


Title:

まあ書いたドラフトは省略したが、上手に答えたかな、という感じのまとまりだ。ところでなぜこのような研究をしたのか、つまりWhyの質問に学術論文は答えなくてはいけない。これもリサーチクエスチョンであるが、rationale  と呼ばれ、この言葉は一般的な論文技法なので、ChatGPTに指示をだすとすぐさま答えてくる。

write the rationale for this paper


The rationale for this paper is(以下省略)

なかなかうまいね。で論文をさらに展開してもらおう。

bring the rationale and rewrite the essay


Sure, here's a revised essay that includes the rationale:
Title:

ここでChatGPTの書いたエッセイは省略するが、今まで提供したプロンプトエンジニアリングを順番につかっていくと、下書き段階ではあるが、ある程度の原稿が仕上がってくる。

ここですこし高度な論述方法を持ち込むことにする。現在の学術論文執筆の世界では単純な論述方法ではなくて、Toulmin モデルが使われている。それで文章をChatGPTに書いてもらうことにする。そのまえにToulminモデルを知っているか?と聞く。これでこの方法でこれから文章を書くのだというコンテキストがChatGPTに渡される。

Do you know Toulmin model?


Yes, the Toulmin model is a framework for analyzing arguments, which consists of six components: the claim, the data or evidence used to support the claim, the warrant that connects the data to the claim, the backing that provides further support for the warrant, the qualifier that specifies the degree of certainty of the claim, and the rebuttal that addresses potential counterarguments.

翻訳をしておこう
はい、Toulminモデルは議論を分析するための枠組みで、以下の6つの要素から構成されます:主張(claim)、主張を支持するために使用されるデータまたは証拠(data)、データを主張に接続するための保証(warrant)、保証をさらにサポートするバッキング(backing)、主張の確信度を特定する限定語(qualifier)、そして潜在的な反論に対処する反証(rebuttal)。

 英語でChatGPTとやりとりをするので、言葉を決めておきたい。
claim  これは主張としておく。
data データ;これは主張を支持するために使用されるデータのことである。証拠と訳してはいけない。
warrant ワラント これは訳してはいけない。データを主張に接続するための特別な推論の役割でカタカナにしておく。ここは非常に習得するのが難しい推論能力である。
backing バッキング ワラント(warrant)の正しさサポートする活動を意味する。
qualifier クオリファイヤー 主張が正しい範囲を特定する働きをする。これもカタカナで言葉の意味を覚えておく。
rebuttal  リバトル 一応論述が成立したとして、将来的に状況がかわて反論がでてきたときに、それにたいして抵抗する準備があるとまえもって、宣言する。これもこの意味が大事なのでrebuttalをカタカナにしておく。

 論述をToulminモデルで行う、というのが本格的な学術論文の守るべき型である。でつぎのようにChatGPTに聞いてみた。

can you rewrite the essay based on the Toulmin model?


Sure, here's a revised essay based on the Toulmin model:
とうれしそうに、一気にドラフトをToulmin型にした原稿を書き上げた。それは省略する。

 さて、これで論文の骨格ができあがった。しかし、どこか面白みに欠ける。それは論文が論文であるのは、論述によって主張が正しいと推論できるからだけではないのだ。もちろんそれは大事だ。しかし、この枠組みにどのようなデータが持ち込まれるのか、が論文のクオリティと面白さを決定するのだ。

データにはプライマリーデータとセカンダリーデータがある。この区別は学問を行って行くときに非常に重要である。ChatGPT に説明してもらおう。

explain the primary data and the secondary data in academic research.

In academic research, primary data refers to original data that is collected directly from sources through various methods such as surveys, interviews, observations, and experiments. This data is collected by the researcher for the specific purpose of answering their research questions or hypotheses. Primary data is generally considered to be more reliable and valid because it is collected specifically for the study at hand.

On the other hand, secondary data refers to data that has already been collected and is available in various sources such as books, academic journals, government reports, and online databases. This data is collected for purposes other than the current research study and may include data that was originally collected as primary data. Secondary data can be useful in academic research because it can provide a broader context and a basis for comparison with the primary data collected in the study. However, it is important for researchers to evaluate the quality and reliability of the secondary data sources to ensure they are appropriate for their research needs.

学術研究において、プライマリ・データは、調査、インタビュー、観察、実験などの様々な方法を通じて、直接収集された元のデータを指します。このデータは、研究者が自身の研究問題や仮説に答えるために収集されます。プライマリ・データは、一般的に、研究対象に合わせて収集されたため、信頼性や妥当性が高いと考えられています。

一方、セカンダリ・データは、書籍、学術雑誌、政府報告書、オンラインデータベースなど、すでに収集されているデータを指します。このデータは、現在の研究目的以外に収集されたものであり、元々はプライマリ・データとして収集されたデータを含む場合もあります。セカンダリ・データは、研究に必要なコンテキストや比較の基盤を提供するため、学術研究において有用です。ただし、研究者は、セカンダリ・データソースの品質や信頼性を評価し、自身の研究目的に適したデータソースを選定することが重要です。

 ということだ。リサーチペーパーはプライマリーデータとセカンダリーデータをそろえる必要がある。ChatGPTは自分の知っている範囲で、論文に注をつけることが出来る。その注がどれくらい信頼性があるかは別であるが、研究の方向性をかなりしっかりと見ることが出来る。まずはこの論文に関するセカンダリーデータを集める方向性を見ることにする。

please find the references and put them into the adequate places in the text and create a bibliography of the reference and write it after conclusion.


このように質問しても、最初はうまく作れないとか、bibliography  の形式はどうだ、とか言ってくるので、それはそれで答えさせて、次のプロンプトエンジニアリングをする。

make lists of the books and articles related to this essay

これでもまだ出来ないとか言ってくる。で次に

write an academic essay based on the article: Title:

として、上記でつくったエッセイを全文よみこませて、学術論文を書いてくれと依頼する。すると注をつけて原稿を書いてくる。もどってきた原稿は省略する。

このドラフトでspecificationをするところはないかと聞く。

can you find any sentence which requires more specification?


specificationというのも論文技法の言葉で、この意味をChatGPTは知っているので、説明をしてもらう。

explain the meaning of specification in the context of academic writing.

In academic writing, specification refers to providing more specific and detailed information to clarify and support an argument or idea. This may involve elaborating on concepts, providing examples, defining terms, or providing evidence to support a claim. The purpose of specification is to ensure that the reader can fully understand the argument or idea being presented and that the writer's message is clear and unambiguous. Specification is an important aspect of academic writing as it helps to demonstrate the writer's knowledge and expertise on a particular topic and helps to ensure that the reader is able to follow and engage with the arguments being presented.

 大事な技法なので訳しておく。これはChatGPTで行った。

学術論文において、「specification」とは、主張やアイデアを明確にし、支持するためにより具体的かつ詳細な情報を提供することを指します。これには、概念を詳しく説明する、例を挙げる、用語を定義する、または主張を支持する証拠を提供するなどが含まれます。specificationの目的は、読者が提示された主張やアイデアを完全に理解し、筆者のメッセージが明確で曖昧さがないことを確認することです。specificationは、特定のトピックについて筆者の知識と専門知識を示すために重要な要素であり、読者が提示された議論に追従し、参加することができるようにするためにも役立ちます。

そして次を質問する。

can you find any sentence which requires more specification?

に戻るが、この質問に次のように答えてきた。

One sentence that may require more specification is: "Research in the field
以下省略する。

   そこで、指摘をうけた論文を不足しているところを加えてかきなおしてくれ、と頼んだ。これは書き直しよりも、論文にレファレンスをする、という作業を覚えてもらためである。で次のプロンプトエンジニアリングを行った。

will you make a list of references?

すると、うれしそうに参考文献表をつくった。

Sure! Here's a list of references for this essay:
References:

ChatGPTは2021とか2022位の文献まで知っているはずなので、

will you find more recent references?

と聞いてみた。すると

Sure, here are some more recent references related to the topic of using (以下省略)

と言って、追加を加えてきた。

how about after 2020?

さらにということで聞くと次のようにいって、2021年まで加えてきた。


As a language model, I do not have access to the most recent publications, as my training data only goes up until 2021. However, some recent articles related to the topic of

大体そろったので、アルファベット順になれべかえてもらうことにした。

will you make a bibliography based on the lists you gave and write it according to the alphabetical order?


Sure, here's a bibliography based on the references mentioned earlier, sorted alphabetically by the first author's last name:

さらに Bibliographyを作ってきた。(以下省略)
というわけで終了である。この作業はワープロソフトをつかっておこなっていると大変な仕事なのだが、さっさとやってしまった。

お礼をいっておいた。

thanks


You're welcome! Don't hesitate to reach out if you have any more questions or need any further help in the future. Have a great day!

と、うれしそうにこたえてきて、終了。

さて、研究の枠組みをきめるエッセイを書いたわけだが、ここまで出来ると、Literature Reviewという作業の入る。これについては次回詳しくやってみたい。

是非論文に挑戦する人はこのプロンプトエンジニアリングにしたがって自在の思ったことを書いたエッセイから学術論文へと構成とスタイルを変換してみよう。自分の気持ちが論文でも表現できることにびっくりするはずだ。



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