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パリのスーパーのレジで怒鳴った時の話

パリにいた2年間の間、一度だけ声を荒げた事があった。(子供達と夫に対してはしょっちゅうなので除く。)
その日はいつも行っていたスーパーが臨時休業していたので、初めて行く小さなスーパーに足りない食材や日用品を買い足しに行った。
予定していた物たちをカゴに入れ、レジに並ぶ。まもなく私の番になり、ピッピッと商品がレジに通された。ところが提示された金額を見ると、思っていたより高い気がする。その日はあくまで足りない物の買い足しだったので、5-6商品しか買っておらず、おおよその金額の見当がついていたのだが、それより10ユーロ近く高い気がする。
とは言えとりあえずレシートを見てみないことには何もわからないので、一旦支払いを済ませてから出てきたレシートを確認した。1つずつ目で追うと、買っていない商品が載っていることに気がついた。目の前にあるニンジンの代わりに、オーガニック・パイナップルと記載されていたのだ。無事違和感の正体を発見し、レジの人も間違えることくらいあるよねと思って私はレジ係にこれが間違っているよ、とレシート上を指差した。するとそのレジ係は、それはこれでしょとニンジンを指したのだ。後から考えるとこれは明らかにおかしい。フランス人が(そのレジ係は移民系だったが)、フランス語で記載されているパイナップルの事をニンジンだなんて言うはずがない。この野郎(そのレジ係は女性だったけど)、明らかにわざと間違えているのだ。
しかしその時私はそれが意図的だと言うことに気づかず、ただ「何言ってんだ?こいつ」としか思っていなかった。そして「いやこれニンジンじゃなくてパイナップルって書いてあるでしょ。修正して差額を返して」と伝えた。するとそのレジ係は渋々私のレシートを手に取り、レジを打ち直して私に差額を手渡した。(ちなみにその間ずっとぶすくれた顔をしており謝罪も一切なしである)そしてそのままレシートをしまおうとした。私はとりあえずまず見つけたオーガニックパイナップルについて指摘しただけで、残りの商品の確認がまだ終わっていなかったので「他のも確認したいからそのレシートを返して」と言った。するとなんとそのレジ係、心底面倒そうな顔で私を手で払う仕草をしながら「It's OK」と言ってそのレシートをレジの中にしまったではないか。私はこういった、自分の非を認めない、無礼で態度の悪い人間が大嫌いなのである。気づくと私はその小さな店内に響く大声で「It's NOT OK!!」と叫んでいた。「あなたが金額を間違えたんでしょう。OKかどうか決めるのはあなたじゃなくて私よ。他にも間違いがないか確認するんだから今すぐそのレシートを返しなさい!」そこまで言って初めて、そのレジ係は驚いたような顔になり、やっと私にレシートを返した。

海外で生活していると、こういったトラブルがたまにある。たまにしか無かったのはむしろ、幸運と言うべきかもしれない。そんな時、控えめな日本人は強く主張できない人もいるかもしれない。もしかしたら自分の勘違いかもしれない、言葉がうまく通じないかもしれない、相手の態度が悪くて心が折れる…など理由は色々あるだろう。でも、そんな事は気にせず、不利益や不当な扱いには遠慮なく怒ってもらいたい。例えば自分の勘違いだったとしても、なるほど理解したわ、と言えばいいし、言葉なんか通じなくて当たり前である。ちなみに私はこのレジ係には英語で話していた。フランス語では到底あの内容をすっと話す事はできない。でも、そんな事は気にしない。とにかく自分の伝えたい事が伝わり、要求が通ればいいのである。だいたい、言葉なんか話さなくても、状況とジェスチャーで大まかな事は伝わるだろう。そこに片言でも言葉を付け加えれば、理解できない方が馬鹿である。それくらいの強いハートが、海外生活には欠かせないのである。


#海外生活 #パリ生活 #フランス #海外旅行

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