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Diary - FUJI ROCK FESTIVAL'22 感想

フジロック2022に参加してきました。例年通り、聴いてきたライブの感想・日記を残しておきます。ただの日記です。
前回はこちらから。
Diary #FUJI ROCK FESTIVAL'19 感想 

書きだそうとしたら「いつもどんなノリで書いていたっけか」と手が止まってしまいました。前回参加は2019年だったんですね。3年ごしなのか……。


初日(7/29)

フジロックに来ること(飛ばせもする)

一番最初に観たのは「幾何学模様」だったんですが、素直に書くと、自分が身にはいっておらず、途中で抜けてしまった。

内本順一さんの記事が、今年のフジに参加した人の気持ちを大体書いてくれています。ただ、ココを他人に代弁させて終わるのも違うと思うので、まとまり・論理もないですが自分も主観から日記を書いておきます。フジの実際は上の記事が詳しいです。

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今年のフジロックは発売直後に3日間通しチケットを購入しました。当時と今では状況も違いますが、昨年の配信を見ていた時の「この場所は続いていけるのだろうか」って無力感から、「メンツはともかく絶対行くぞ」とチケットは買った。でもここまで感染が直前で広がるとは(ほぼノーガードにしたんだから当然の流れですが)。

国的には大きな制限はなく市民に任せているのが今の状況だと思っていて、自分としては「マスクをし、距離をたもち、節度を持って行動すれば、生活の延長でライブには行ける(会場内のマナー悪い場所には近づかない)」の考えです。しっかり余裕をもった状況でライブを見ること、自分の場合後ろでユラユラしながらステージを観ることに、非常に高い感染リスクがあるとは思っていない。もちろんライブに「行かない」方が間違いなくリスクはないし、「行く」をとる時点で自分は医療関係者の方や各位への負担を増してる側です。観客のコントロールの難しさにおいてフェスはライブハウスよりリスクが高まる認識もありつつ、昨年の配信でみるかぎり野外で広いぶん逃げ場所もあるなと。なんで行くか聞かれたら、(リスクを低めに出来ると考えたうえで)「生活の糧が欲しかった」より大層なものはありません。

自分に関していえば幸運にもフジ参加後から盆にかけての10日くらいをほぼ在宅勤務にできたし、チケット(45.000円)も宿もずっと前に確保済みだし……自分のなかで天秤にかけて、とりあえず行くことにした。


時系列を飛ばして、フジロックの様子について。目次のとおり派手な満員アクトをほぼ見ていないので、主観ではソーシャルディスタンスは7割がた守られていました。ステージ前方客・単純にマナー悪い客は怪しい・守ってなかった。これは実生活でも同じくらいの比率に感じるかな。見かけた中ではJPEGMAFIAと深夜レッドはヤバくて、アクト差が激しかったろうなと。

フジロック側がしっかり対策出来ていたかと言えば、軽いアナウンスはあれどスタッフによる徹底はほぼなかったので、観客の意識に投げられていたと思います。そして観客の緊張感は日がたつにつれ薄れていった。主催側がそんな「緩み」を引き締められたのでは、日本語以外のアナウンスはあったか、アクト側への声出しにつながる煽りの警告を強める……とか、きっと対策はもっと出来たし不十分だった。手洗いの徹底などよく出来てるところもあったし、マナーの悪い客への対応など出来てないところもあった。今年も統括(の一般公表)はない気がするので、主観だけですが※1。この参加人数と広さなら工夫すれば密環境を回避できる余裕は感じられた。

ただ自分の気持ちとしては、実効果がどれだけあるかはともかく「"いつもの"フジロック」を開催前に撤回しても良かったんじゃないか。フェスも雇用であり地域ふくめた大規模な経済活動なので、国のスタンスがほぼノーガードを前提にした、それこそ「いつもの」と同程度の補償状況とフェス保険適用外の中(認識合ってますか?)で、「はい直前だけど全部止めて」は死刑宣告で現実的に無理だと思います。だからせめて、国のスタンスと歩調を合わせるだけでない善意(誠意?)として、「この状況だ、”いつもの”じゃなく、やっぱり昨年にちかい緊張感で行こう」とは言いなおすこと、そんなスタンスを打ち出す意義はあったのではと感じてます。

ただ、直前まで演者キャンセルがあり、スタッフにも欠員が相次いだだろう状況で、何とか開催し終わらせたことには一労働者として敬意がある。今年も本当に大変だったと想像します。開催に強く感謝している。フジは問題も多いですが無くなってほしくは絶対ない。文章展開も支離滅裂になってきた。

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再び時系列を初日午前に戻して。ここまで2000文字くらいか。こんなグルグルでライブをちゃんと見れるわけがない。とりあえずフワッと来た以上はない。そして実際に来てみて、まぁ予想通りノれなかった。

頭がボンヤリしていた。


THE NOVEMBERS @WHITE

そんな曖昧な感覚がいったんスッと抜けたのがノーベンバーズのライブでした。別になにも問題は解決していないんですけど、視界がクリアになり、自分の中でなにか折り合いがついた。節度は持って、そして「楽しもう」と思えた。伝わるかすごく不安なんですが、「ハメを外しても良いと思った」じゃないんですよ。「行くと自分で選択したことについて、責任と節度をもった上しっかり楽しもうと思えた」というか※2。自分をこのマインドにセットしてくれたであろうバンドは、3日間観た中では恐らく彼らだけです。そういう意味ではベストアクトと言っていい。

折坂悠太に象徴されるように、ミュージシャン側も当然葛藤を持っている。そこにフロントマン小林さんの佇まいはあまりに凛としていて実直で。MCでの「いま働いてる方、医療関係者の方、通学してる方、主婦の方……みんなみんなお疲れ様です」のようなコメントは、会場にいる人、配信を見てる人――音楽が好きな人――すべてに響くものがあったと思うし、改めて音楽ライブを通して、たまにはマジな語調で言いますが「音楽の力」、生活しようと思わせてくれる影響力(糧)、音楽フェスが開催されたことの「価値」の方が確かに存ったと思います。配信で観てる方にもきっと何か力をあたえたはず。

ノーベンバーズはそのキャリアと音楽性の変遷において、非常にしなやかな曲線を描いて成長してきたバンドだと思ってます。初期の「攻撃的」「切っ先の鋭い」から現在の「柔らかい」までの変遷。確かな地続きであり、進化・変化であり、人間的な成長。だからまず単純に「人(バンド)としての尊敬」があって、だからこそ自分は最初の思いに至れた。本当に"実直"その一言の活動をしていて、この人たちが報われなかったら世の中嘘だろと。この日のライブを観ていてその感覚はさらに強まりました。

■ライブを観て
自分のなかで「最高(≒優勝≒自分にとって気持ちよい)」「素晴らしい(≒一般的にみても評価されうる)」「カッコいい(≒クール)」って3つの柱があって。例えばこの日だとJPEGMAFIAは「カッコいい」を、オウガは「最高」を、DAWESとBONOBOは「素晴らしい」と「最高」が立ちました。そしてノーベンバーズは3つ全部があった。別に3つあると最強でもないんですが、3つ全部を感じられるのは稀有なのです。

分解すると。「素晴らしい」はシャウト含むボーカルクオリティの高さに。「カッコイイ」はバンドの佇まいと、ひとを惹きつけようと努めるフロントマンとしての振る舞いに!(良くも悪くもインディに欠けているもの)。「最高」は「New York」→「楽園」→「Kaneda - From Akira」→「BAD DREAM」あたりにありました(公式のセトリプレイリストに何事もなくAKIRAのサントラつっこんでるの面白すぎる)。

音楽性の振れ幅を、バンド名で包括できること。Radiohead……いやラルクにしますか。例えば「HONEY」「浸食」「花葬」は全部音楽性が違くて「ジャンル名」ではひとつに括れないけども「ラルク」の語でもってすれば括れる。それはバンド自体が「表現」の新しい結晶(存在)として確立しているからで、そういうバンドにはやはり痺れます。最高で素晴らしくカッコいいライブでした。「Close To Me」は本当に良い曲。


JPEGMAFIA @WHITE

ブルックリン出身のラッパー、シンガー、プロデューサー。メジャーとアングラの緩衝地帯、独特な立ち位置の人物って印象。音源にはそこまで馴染がなかったですが、フジで初来日ってことでとりあえず赴きました。

ライブはいろいろな意味で「治安」でした。JPEGMAFIAも最前方面の観客も、煽るわ乗り込むわ暴れちらかしている。ペットボトルも宙に飛び交います。前項のノーベンバーズで見いだせた確かな価値が、目の前で破綻している(激苦笑、マジで)。こんな感じでほかのアクトも演るならフェスなんてやらないほうが良い。ぜったい近寄りたくね~と遠くからみてました。
そして音。ホワイトステージは低音に定評ありますが、これほどハマってるものはないって音楽性、崩壊的にサウンドが響き渡っていた。上の音も下の音も、もうスピーカー壊れるんじゃねぇかと。これは配信より現地が伝わったはず。特に序盤がヤバくて、後半は絞られていた気がする笑。

そんなJPEGMAFIAのステージングは、率直には「カッコよかった」です。いや冷静に日本のコロナ対策の観点からすれば間違いなく最悪、でもその辺をさしおけるのであれば。特にその声には切実な迫力があって圧倒されました。ホワイトステージでこの音と声を浴びれて良かった。くわしい曲評はきっとファンが書くでしょう。

次の来日があるなら、心置きない状況で、また「無法地帯」を作ってほしいなと。その時は自分も前方に混ざりたい。


DAWES @FIELD OF HEAVEN

カリフォルニアはロサンゼルスのロックバンド。聴けば分かりますが往年のウェスト・コースト・ロックを思わせるTHE USなサウンドはもう絶対FIELD OF HEAVENに似合うだろうとすごく期待してました。しかも初来日!これは行かねばと、Hiatus Kaiyoteを蹴って!!いやこのタムテかぶりは恨むよ。

結果、最高だった。「最高だっただろう?」「最高だったぜ」で終わらしたいくらいストレートに最高だった。JPEGMAFIAから続けて観ると本当に真逆の「治安」で笑ってしまいましたが。

まず素晴らしかったのは演奏技術とサウンドバランスです。3日間通して一番キレイに全パートが鮮明に聴きとれた。その中で気づかされたのはベースラインのグルーヴィさ。ソロによって長引く一曲が、ベースとドラムスの絡みだけで全くダレない。ルーツやスタンダードをしっかり正しく継承し鳴らせる偉大さですよ。んで、個人的にDAWES最大の聴きどころは「ツインギターソロ」なんですが、この日は好きなソロをほぼ全部やってくれた!感無量。プレイリストを作ってたので是非聴いてみてください。自分の推しは「If I Wanted Someone」のアウトロと「Somewhere Along The Way」す。初来日もあってベストアルバムのような盛り選曲でしたね。

この手のバンドを1時間半たっぷり観れるのはフジ最大の魅力のひとつ。次は皆で「When My Time Comes」大合唱したい。観客の反応も最高で、バンドもかなり手ごたえを感じたと思います。次も野外が良いな~~。


BONOBO @WHITE

前回のフジで最高なのはわかってましたが、今回も全く外さない盤石の内容だった。たびたび書いてますが、2000年に入ってからの「(一部)ポストロック」と「エレクトロニカ(フォークトロニカ)」はバンド形態とラップトップでY字分岐しただけでかなり近いものだったと思っています。それはFridgeだったFour tetしかり、The Album Leafしかり、そしてbonoboも。特にこの人はバンドセットだからよりそんな風に感じる。

バキバキに踊れる時間も、チル系R&Bを聴いているような瞬間も全部詰まっている。ノーベンバーズと同じ結び方しますが、そんな音楽って一言で何?で「BONOBO」なんですよね。ボーカルとホーン隊が行ったり来たりし、ボノボがベースを持ったかと思えば、途中ではソロのDJセットになり、って世話しなくもあるステージングに良く表れていました。「BONOBO」が1時間半にパッケージングされている。こういうセトリ組めるのはやっぱ凄いミュージシャンだなと。

個人的なベストタイムは新譜のベストトラック「Otomo」から前作のベストトラック「Kelera」へのメドレー!これは声あげそうになった人も多いのでは。特に後者は、前回出演時の模様がフジ公式でアップロードされていたので思い入れ強かったのは自分だけじゃないはず。もはやアンセム。あのドラムブレイクも再演してくれたし、更に4つ打ちピアノブレイクビルドブレイク大団円のロングバージョンになってて盛りすぎ笑顔でした。どんどん味をしめてくれ。


OGRE YOU ASSHOLE @PLANET GROOVE

この日の締めはオウガ。「深夜オウガ」とか絶対サイコーでしょと向かったらブッたまげるセットで迎えられました。

セトリ、3曲50分。

自分の記憶だと、おおむね「朝」25分、「見えないルール(を元にした何か)」20分、「他人の夢」5分。30分以上ミニマルテクノのようなキックが会場を地ならししている。ギター持つ時間と同じくらいの間テルミンみたいな機械とシンセいじってる。そのすべてがダブワイズされて狭いレッドマーキーの会場に反響していく。浮かび上がっていたのは、サイケ、テクノ、クラウトロック、ダブ、かつどれとも位相の異なるもの。ひねり出して言うなれば「人力E2-E4クラウトロック・リアルタイムダブミックス」みたいな。これがWORKSHOP3.5なのか。

ただ何よりヤバかったのはステージ音響含めた「出音」です。今までも地を唸らせるような「低音」は聴いてきましたが、ココでやばかったのは「上」の音。空間いっぱいに敷き詰められた音。乱反射。質量すら感じられそうな音の空気密度。これが一番得難い体験でした。初めてレッドマーキーの神髄を食らった気がする。キマった。すごかった…。

深夜レッドは総じて治安悪かったですがオウガだけはどうしていいかわからない人も多くて(草)そこまででもなかった気が。これだけやって最後にすっとぼとけた「あ、ありがとうございましたオウガでしたー。」は逆にカッコつけすぎだろ。来年は、1日目深夜にこのスタイルで出演、3日目の夕暮れごろ通常スタイルで出演、これでお願いします。


ベストアクトならぬ「ベストデイ」を決めるなら個人的には1日目です。
観たアクトみんな方向性が全く違っていて、その振り幅がすごくフジロックっぽいなと思ったんですよね。アホみたいですが、改めて「音楽」面白い、そんなことを強く実感するタイムテーブルでした。


2日目

二日目。今回は初めて宿を「苗場」つまり会場徒歩圏内に確保できたので、朝の移動がとにかく快適でした。24時間営業の温泉「雪ささの湯」もあり体力はバッチリ。

石橋英子 @FIELD OF HEAVEN

『ドライブ・マイ・カー』でのサウンドトラック仕事も印象的だった石橋英子氏。個人的にはジム・オルークのプロデュース作、そして星野源での仕事が印象的です。各プロジェクトに忙しく、ライブを観る機会もなかなかないと思うので非常に楽しみでした。バンド編成も凄い。ジム・オルーク、藤原大輔、松丸契、山本達久、マーティ・ホロベック、ermhoi。はぁ~。

演奏は、予想通りフェスとは思えない音楽横断的な内容でした。ジム・オルークに引っ張られずとも、その音の一言での言えなさに「ポスト」なんて言葉が浮かんだ方は多いのでないでしょうか。

個人的なトピックは二つあり。まず「たいくつなものがたり」が聴けたのがとても嬉しかった。このプレイリストでもあげたように、(たぶん)ジム・オルークによるストリングスワークが神がかった一曲で、ここではサックス2本によってそのセクションが再現されてました(曲は短くされてたけど間奏はしっかりあった!)。感無量。あとはやはりラスト「ドライブ・マイ・カー」での、満を持してといわんばかりのジム・オルークギターソロ!フジの紹介にもパート(g)と書いてあった割に、最初はパーカス補佐、つぎはラップトップと焦らしていたところのクライマックスど真ん中陣取り。この人が立ち上がらんばかりにトレモロピッキングしてる様が見れただけでもうね。

にしても山本達久さんのドラムは本当に映像的で凄かったですね。石橋英子の音楽性をライブ演奏しようとしてるだけで凄い光景だったし、VJもないのにかなり視覚的な印象のつよいライブでした。野外もいいですが、コレは(自分としては珍しく)室内、ビルボードなどで観たいなって。


SHERBETS @WHITE

若干「いつもの」枠。違うの観ても良いのかな~と思いつつやっぱり観てしまう。新譜『Same』聴きましたか?浅井健一の「寂び」の部分がよく出たノスタルジックな一枚で個人的にはなかなかツボです。歌詞の謎の生活感と「小並」感も10周くらいして堂に入っていて、ぜんぶが「郷愁」に結びついててアリ。これがなければ他に行ったかな。

ライブは「HIGH SCHOOL」「アンドロイドルーシー」で始まる『SIBERIA』ファンにはたまらない奴でした※3。「グレープジュース」はフェスで演ると思ってなかったので嬉しかったです。真っ昼間のホワイトには感傷的すぎたけども笑。やっぱあの死んだタム音が良いんですよね……。高音が出なくなったベンジーも、もう歌い方のマイナーチェンジが完全に馴染んでいて安定していた。やっぱいいもんはいい。

選曲は不思議でした。新譜からは数曲、でも初期だらけでもなく、割かしここ7年くらいからセレクトしてる。「Stealth」「ひょっとして」、そしてショーンジェットでなく「小さな花」で締めたあたり、今の世界に対するベンジーなりのメッセージを伝えたかったんじゃないかな。「小さな花」、良い曲だった。収録EPみたら『GOD』('08)の2曲目でした。あんなクソ歌詞曲(曲は割と好き)の次がコレだったのか……。


<チラ見>折坂悠太(重奏) @GREEN

「折坂悠太(重奏)」も途中からですが後ろの方で観てました。間違いなく凄かった。ベストアクトに選ぶひとも多いはず。圧倒されるべき内容だった、んですが自分にはまだ「馴染」が足りず入り込めなかった。音だけじゃなく、「尊敬」あるいは「自分と距離が近いって感覚」(気に入れるか)がないとのめり込めないんですよね。ダメなリスナーだ~と感じてはいるんですが……。

「折坂悠太」に関しては、SSWの部分で「現実(実生活)との距離感」に自分と剥離を感じてしまうんです。この感覚の最たるものが「小沢健二」なんですが。生活のなかに、例えばVTuberの配信10時間みてたら休日終わったとか、SNSやまとめサイトを死んだ顔で更新ループしていって無意味で無刺激な数時間を過ごすとか、そんな時間・人間が視界にそもそも存在してないような……いやどう考えても勝手な難癖ですね!でも例えば浅井健一って「でもぉ、サイレンススズカのシナリオは、やっぱ純粋だと思う。。」とか言いそうじゃないですか(?)。

こんな「新手のクソリプおじさん」のような文章を垂れ流しておくのは、ちかい将来唐突に「折坂悠太、天才では」となったとき(自分はしょっちゅうこうなる)、この文章を見て「はぁ~~コイツマジカス」と振り返るためです。おれはこの時近づけなかった。


GRAPEVINE @RED MARQEE

若干「いつもの」枠笑。違うの観ても以下略と、完全におなじフレーズが使いまわせてしまう。Snail Mailも観たい気持ちは強くありました(フジ直前で聴きましたが一番最初の『Habit EP』('16)が一番すきです!)。思い返してみると、折坂悠太を聞いて「自分に沁みる日本語」が聴きたなくなった、っていうのは実際あった気がしています。まぁクソ陽ざし強かったし、フジは日陰少なすぎるし……。

でもやっぱり観て間違いなことはありえないバンドですね。盤石。代表曲「光について」「風待ち」、フェス定番「FLY」、最新曲、意表をつく「CORE」「NOS」「エレウテリア」と全リスナー層対応でこのバンドの様々な顔を見せるやつ。いくつかは先月見たけども。

近年フジファブリック「若者のすべて」がクラシック認定されましたが、「風待ち」は「若者以降のすべて」ですよ。「エレウテリア」、まさかまさかココで聴けると思わなかった。実績解除案件。別世界に違えたような浮世離れした美しさと高貴な寂寥を持つ、全オタクが好きな名曲。面白いのはギタープレイだけなら「ブルージー」で、先にあげた曲の印象と正反対なんですよね。不思議なバランス。にしてもこれで終わるの何なんだ……田中……どうする気なんだ……。


DINOSAUR JR. @WHITE

若干「いつもの」枠以下略。この日ホント安牌取り続けてんな……。ARLO PARKSはめっちゃ見たかったです。今更聞きましたが去年の新譜Collapsed In Sunbeams』超良いですね。

2016年初めて見たときの感想記事をみてたら「Thumbとか聴けたらもう満足して消えれます」書いてたけど、1曲目「Thumb」。はい、ベストテイクって感じではなかったですが成仏しました。全体的にセトリの畳みかけ方が「新譜 + ベストアルバム」で、Spotifyの再生回数上位曲から決めたことを疑うレベル。おじいちゃんが「みんなの好きなダイナソーやった」感。アリ。

惜しむらくは音量が巨大でなかったこと。大きくない訳ではなかったが、物足りなかったです。JPEGMAFIAの3/4じゃないかな?ともかく次は更にアンプ2倍で来な。

何曲かふれます。
「Little Fury Things」。これを聴いてなければもう少しマトモな人生おくれたかもしれない大名曲、そして前回やらなかった奴!嬉しかった。でも自分にとってこの曲はアルバム収録の音・声・録音が全てなんです。ライブは、奏法はあってるけどさ~この曲のマジックはさ~ってなって……だから100点満点で原曲を9999点とするなら、ライブは100点という感じでした。満点です。ありがとう。

「Start Choppin’」。Jマスシスのどこに魅力を見出すかは人それぞれだと思いますが、個人的にはジミヘンと一緒で「歌えない分ギターソロでキレる」所に一端があります。こちらのクソ音質ライブ音源を聴いてほしいのですが、Jのギターが絶不調でミスが散見されます。その結果コーラス部でいつになくキレ気味で覇気あるボーカルが入る。カッコイイ。だけど続く裏声が死ぬほどか細い。ブチ切れて尚まったく声量のないファルセット。から!「クソが!!」とばかりに飛翔するギターソロ!!!自身とギターを通じた感情の放物線、これに自分はやられた(このテイクはソロも危ういが)。昨年の無観客ライブ音源はやっぱ大人しくなって安定したなと。クソ語りですが自分はヒトカラに行ったときたまにこの曲いれて時々涙目になります。和訳みたことあります?裏声パート全てで泣けますよ。どうしようもなさが気だるく歌われるけど、ギターでは爆発してしまう。恐竜印の名曲です。

この日のベスト演奏は「Been There All the Time」でしょう。再結成後初アルバム『Beyond』('05)収録の痛快なグランジパンクチューン。一番バンドサウンドのバランスもキメも決まってた。この音の無敵感よ。やっぱり根本的に、Dinosaur Jr.3人のバンドサウンドが好きなんですよね。だから何度も見たくなっちゃうんだ。観てよかったですよ。

次回用の遺言も作っておこう。
「Forget The Swanやられたら天国にいける」。
Spotifyの人気曲ランキングをハックしていくぞ。


<チラ見>JACK WHITE @GREEN

ここの被りも死ぬほど悩ましかった。WHITE STRIPESはかなり聴いてましたし、直近リリースのソロ作『Fear Of The Daws』は有無を言わさぬジャック節全開の痛快な作風で久々に身を乗り出して聴いてたので。にしてもTwitterでも呟いたようにDINOSAUR JR.→JACK WHITEのライン考えたひとはサイコーですね。この世でクソデカ音だけが正しい。

チラ見ではありましたが、鬼気迫るテンションで突き進むジャックはやはりカリスマ的で、いやぁ凄かった。ジャック・ホワイトのギターってフレージングどうこう以上にトーンとリズムの存在感だと思ってます。質量・圧。そして声自体もギターソロみたいな通りとキレあるのがチートくさいというか、スゲーカッコイイと思う。全部見れた人は羨まです。


CORNELIUS @WHITE

でもこれだけは絶対に最初から観たかった、もとい迎えたかったので。
件の騒動については賛否あるでしょう。自分は、「当初拡散された情報(しいてはネット上にこれまで引用されていた下り)はメディア用に誇張された表現が多くあり事実と異なる点も多くあった」ことを踏まえた上で、(仮にその責任として何かを制裁を受けるべきだとして)あまりにもコーネリアス側の失うものが巨大すぎただろうと思っています。責められすぎだと。誇張された点を差し引いても嫌悪感が強いという方については理解しますし何も言い返しません。ただ、最初に拡散された情報時点で止まっている方がいたら、もう少しだけ周知されてほしい気持ちです。

本編前は裏がJACK WHITEとは思えないくらい大入りに感じました。注目度はかなり高かったと思います。

開始は「Mic Check」→「Point Of View Point」。迎えたい気持ちはあれど、そこまで強い思いを抱いていたつもりはなかったんですが、この始まりにふつうにボタボタ涙が出てきて自分で自分にビックリしました。なんだろう、いま冷静に思うと、(最初に書いた通り自分はいくら何でも過剰に責められすぎたと思っているので)「戻ってこれて本当に良かったな」という気持ち、そして「この2作に対する自分の思い入れ、単純な凄さ」あいまったのかなと。初見だった前回のフジは「Mic Check」なかったし。

実際、止まっていたものが動き出したように、基本的には2017年フジのマイナーチェンジなセットリストだったと思います。でも、明らかに細部はより研ぎ澄まされていた。2017年の時の感想は「良いね」くらいだったんですよ。でも今回は、当時との感情図の違いを差し引いても、明らかに全てが良かった。ホワイトステージの音響がハマっていたのもあるかもしれない。自分には差異を具体的に書きだせないので、ツイートから。

「Another View Point」特に最高でした。途中の明らかに版権ヤバいYoutubeかき集めたよな洋楽ライブ映像集は配信だとどうなったんだろ。そのまま「Count Five or Six」「I Hate I Hate」とつなぐ流れは熱かった。おそらく配信側ではカメラアングルが演者・引きなど移り変わっていったと想像するんですが、このライブに関しては「定点カメラ」が一番その魅力を伝えたんじゃないかなと思います。ただ一点を直視しているだけでどこまでも引き込まれるVJだった。

「Surfing on Mind Wave pt 2」は昨夜のオウガを思い出させる超サウンドスケープでした。強大なアンビエント・シューゲ・ドローン。いやホワイトの音響ガッチガチに映えますね。音の波に飲み込まれた。「消える変わる」「環境と心理」のコーネリアス版も素晴らしかった。前者に彼の心境を連想しないのはムリ。後者はマジ音源化してほしいけどそれをすると本当に"断絶"という感じになってしまうから悲しい。全員が一斉に単独ボーカル・リアレンジ版をリリースしないかな……いやムリだよなぁ。

最後はやっぱり「あなたがいるなら」。演奏自体は前回も聞いたので驚きはなかったですが、今回はここで感極まった人も多いんじゃないかな。自分は大サビ「ほらね まただれか きみのうわさをしている」「みんな きみをすきなんだ」でまた涙がつたいました。だってさ、淡々としてるけど、この歌詞をうたう小山田圭吾に見出さざるを得ない万感さとか、「また誰か君のうわさをしている」「皆きみを好きなんだ」のラインに悪意と善意がごちゃ混ぜに見出だせてグシャグシャになってしまった。この場にいた人のほとんどは小山田圭吾が、少なくともその音楽活動が大好きです。ありがとう。


どんぐりず、見ようとしてましたがもう満足しました。というか入場規制でした。今年出た『4EP3』は最高のクラブなので皆聴きましょう。


3日目

1日目2日目で完全に満足したのがよく分かりますね。書きだそうとして4組しかいないじゃん……。

JAPANESE BREAKFAST @GREEN

勝手にインディポップ系、自分からは遠い音楽性のひとかなと思ってスルーしてたんですが、直前になって「好きかも?」と参加。

結果、好きでした。かなり好き。たしかにインディポップの要素もあるんですが、何よりバンドサウンドの旨味が楽曲の肝にあって。この辺、超雑くくりですが「ダンス寄りのポップス感」と「インディロック寄りのポップス感(≒ギターポップ)」ってけっこう断絶あると思ってて(自分は前者が苦手めで後者いわずもがな)、でもこの人は完全に折衷出来てる感じ。仕草もとてもキュートで、とにかく魅力にあふれたアクトでした。一番好きなのはやっぱりアウトロが否応なく刺さる「Posing For Cars」かな。

そして!非常に印象的なカバーもありました。The Cranberries - Dreams!といっても自分にとってコレは「むかし親の車で流れていた記憶がある、今思い返すと超良い曲だったやつ」で、Faye Wong - 夢中人なのですが。思い出せなかった大切なものを呼び覚ましてくれたようで、とても嬉しいカバーでした。言語が違うことまでちゃんと思い出せましたね。


鈴木雅之 @WHITE

一気に年齢層を高めて。現20代としては「違うそうじゃないのジャケ元ネタのひと」あるいは「かぐや様の曲歌ってたひと」の印象も強い大ベテラン。この辺の、ガチバンドを率いてるガチ大御所ミュージシャンをホワイトに(グリーンじゃないのが個人的ポイント)召喚するやつ、マジで毎年やってほしい。出演発表時点で「確定演出」的アクトでしたが、まぁ間違いなかった。

個人的にはドゥーワップがこの大観衆にハッピーに響き渡っている光景にもけっこうジーンとしました。ルーツからいえばFIELD OF HEAVEN側なわけで。でもJ-POPなんて言葉のずっと前からいるこの人がコレでホワイトを湧かせている。なんかとても良かったです。YOASOBI「怪物」も槇原敬之も清志郎も、何を歌っても「鈴木雅之」になるボーカル力・バンドアレンジ力にも脱帽。

「ランナウェイ」もね~スピッツカバーが印象的だったので本家嬉しかった。「かわいた街は爪をとぎ 作り笑い浮かべ」とか、「とても好きさ 連れて行ってあげるよ 二人だけの遠い世界へ」ってスピッツぽくもあるんですよね。でも続く「お前を抱いて ランナウェイ」これが絶対シラフのマサムネにはないラインで笑。マサムネはこのロマンチックなダンディさに憧れ・乗っかりたくて歌った(他人の曲ならそう歌えるみたいな笑!)と思うんですが。鈴木雅之はもうドップリ「俺がお前を」って感じの横綱相撲でした。ラブソングの帝王は伊達じゃない。

あとは「夢でもし逢えたら」のときにシンガロングを求めてたんですが、(そりゃこの空気じゃ皆歌っちゃうか……)と思ってたところ「心の中で歌ってる声も聴こえてるよ」と言ってくれたのが、グッッと来ました。

かぐや様曲をやらなかったのはアニサマとの差別化なのかな?でも最新系(カバー) + キャリア代表曲、で貫禄のセトリ・ステージパフォーマンスだったんじゃないかと。MC力といい、なぜ人気なのかの全てが理解できる1時間だった。また来たらまた観ちゃうな。


MOGWAI @RED MARQEE

時間が一気にとんでモグワイです(Balck Country New Roadも観てたんですが、疲れててあまり記憶なく……)。なんだかんだ高校から聴いてるし縁が深い。「Travel is dangerous」聴いて、一番最初に手に取ったのが『Mr. Beast』('04)でしたね。15年くらいたってついに生でみるのか……と思うと感慨も深い。

開始40分前くらいにつき、まだ観客もまばらだったころのリハ音出し音量はヤバかった。音に震える。「轟音」――それはMOGWAIのトレードマークであり、(一部)「ポストロック」の代名詞ともなった。「音楽フェス」と「ポストロック」は非常に密な関係があって、特にMOGWAI、SIGUR RÓS、TORTOISEはライブを通して外に広がり、内を変化させてきたバンドです。

でも本番の音量バランスは非常に的確なものでした。大きくて繊細だった。ウ ワ ア ア ア ア みたいなレベルじゃなかったので、逆にファンからしたら物足りなかったのかも。自分としては「入門」みたいな感じで大満足。

多くのアルバムから曲を披露していましたが、美学は一貫したバンドだと改めて感じます。なにより、巨大な音の幕からスネアとハイハットが漏れ聞こえてくるような、そのバンドサウンドの美しさに感動した。なぜ長い間支持を得ているのかよく分かるライブでした。


<小休止>

ということでほぼ燃え尽きたので、この辺でフジ終了。
今回もSNS上の何人と話す機会がありましたが、楽しかったです。ありがとうございました。いろんなゲーム・漫画の話からVTuberRTAの話にまで出来て、日常では接種できない栄養素を得られました。フジロックがいちばん色んな人が集まる気がしていて、そのあたりも自分がここに来る理由のひとつだったり。替えがたい場だと思ってるんですよね。


Fake Creators (LITE, DE DE MOUSE) @PLANET GROOVE

最後に観たのがコレ。深夜レッドでの狂演、DE DE MOUSEと邦マスロックの雄LITEのコラボ。これ最高でした。優勝案件。3日目かつ深夜レッドの治安はかなり酷かったですが安全地帯で踊り狂った(イキッて書いてるけど自分の「踊り狂った」は射程距離10cmくらいでなんか揺れる動作を指します)。

個人的にLITEの音楽性はすこし硬い、職人気質な所を感じて。逆にDE DE MOUSEには過剰なものを感じてたんですが。このコラボはその両極端の見事な科学反応を感じた。楽曲は恐らくDE DE MOUSEが主体で、LITEがフレーズを提供している感じと想像。人力ドラムンからトランス、EDMばりのビルドアップとブレイクが展開し、いっぽうでポストロック系のギターフレーズ、マスなキメが曲調の幅を大きく広げる。いやー楽しかった。ふたつほど動画に残してしまったので参考までにどうぞ。(1)(2)

バンドサウンドでスタジアム系エレクトロはよくありますが、そこにマスロック要素が絡んでくるのはかなり面白い組み合わせじゃないか。馬鹿テク人力ドラムは正義。今回のフジが初ライブとのことで、これからの展開も期待大です。



おわり

ということで3日間のフジでした。結局は楽しかった。運が良かっただけですが、特に発熱や症状も出ず、とはいえ在宅勤務で過ごし、そのまま盆の連休に至りました。で今も家でひたすらこんな文章かいて過ごしてます。

フジロックは「放任する」って基本姿勢によっていろいろ限界が来てると思います。ただ同時に、その放任加減が「フジロックらしさ」だと言われると、半分くらいは"確かに"とも頷いてしまう。ギッチギチに管理したのがフジかと言われると違う。でも制御して(正して)ほしいところもある。大きくなりすぎて立ち行かなくなってきたオンラインゲームみたいだ……。でもきっと出来ることはあるはず。

まぁコロナはもう終息してくれよ、そしてこの禍で浮き彫りになった諸問題は解決にむけていきたいよなと。
そんな感じで終わり。

STAY HOMEよろしくでフジ再配信してくれないかな……。現地行くと配信が見れないの普通に悔しいんだよ。チケット代に配信アーカイブが含まれてても良くない?いやほんとに……。


■注釈・補足など
※1. 昨年のフジについて、公式文に「今後も〜改めて報告」とあるにもかかわらず開催後の経過報告がなかったことに自分はハッキリと失望しました。
公式リリースと取った行動が一致しない点について特に失望してるので、たぶんほかの方とキレ所の焦点は微妙にズレてるんですが……。

※2. 「行くと自分で選択したことについて、責任と節度をもってしっかり楽しもうと思えた」について。この「責任」は感染・症状が出た場合に正しく対応することを指してます。そこで生まれる負担が向かう先は、自分はもとより周囲です。コロナに関係なく、生活する以上全員が大なり小なり負担を掛け合ってるもんだと思ってます。自分の超過残業もそう。その中で、コロナって異常状況のもとでは医療関係者の方への負担が莫大すぎる。フェスに行った自分はともかく、普通に生活してるだけでも感染してしまう以上、その「莫大な負担」を軽減できるのはシステム側じゃないかという考えでいます。それはともかくとして、自分は今回他者に負担をかけうる行動をとって自分の生活の糧をとりました。

※3. 「HIGH-SCHOOL」でかっこよく始まってすぐ歌詞が飛んでたのは聞き逃しませんでした。そのあと少しはにかんでくれたのと、あの間奏ギターが来たので許しました。


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