見出し画像

Q.ホルモン補充療法について②

前回記事の続きです。まだお読みでない方はぜひ読んでからこちらの記事を読み進めてください。(https://note.mu/olas/n/n22c076fb5761)

3.HRTはやってもいいいのか
それぞれの疾患に分けて解説していきます。
【子宮頸がん】
扁平上皮癌の場合は一般的にホルモン依存性がないためHRTは問題ないと言われています。しかし腺癌はエストゲン単独療法にて発症率が高まりました。しかし再発率に関しては十分な研究結果はなく、エストロゲンがもたらすメリットを考慮しながら慎重投与するよう言われています。

【子宮体がん】
子宮体がんのⅢ期以上の方に対してはデータがなくHRTは禁忌と言われています。しかしⅠ、Ⅱ期であれば再発率上昇はみられずHRTは勧められています。少し太られている方は血栓症のリスクが高まるため慎重投与するよう言われています。(血栓症のリスクに対しては後程副作用の項目で説明します)

【卵巣がん】
HRTと死亡率や再発率の関連はないと研究によって示されているため進行期においてもHRTは推奨されています。しかし血栓症はやはりリスクとして十分に注意が必要であり、特に化学療法でベバシツマブを使用する際や腹水が多くある場合は慎重投与されるべきだと言われています。

【遺伝性乳がん卵巣がん症候群】
リスク低減で若くして卵巣を摘出される方は、卵巣摘出後であれば乳がん上昇は認めず、早期にHRTを始めるべきと言われています。

4.いつ始めるべきなのか
がんサバイバーがホルモン療法をいつ始めるべきなのかという指針に関してはガイドラインに記載されていません。
しかしエストロゲン消退による影響を考えると摘出後早期にHRT開始を勧められることが書かれています。

5.どの薬がいいのか
HRTにおいてどの薬を使うかは年齢や合併症が考慮されます。
基本的に子宮がない方は内膜増殖のリスクがないためエストロゲン製剤を使用します。
代表的なエストロゲン製剤の種類に関しては下の表をご参考ください。
みなさんが使われている薬剤もあるでしょうか。

※エストラジオールとエストリ-ルはそれぞれエストロゲンの種類で基本的にエストラジオールが主な役割を果たします。

経口薬と経皮薬はどちらがいいのかという疑問があるかと思います。
この二つお薬の違いは肝臓を通るか通らないかにあります。
経口薬では肝臓を通ることが原因で血栓症のリスクが高まりますが、
経皮薬ではあまり増加がないと報告されています。
そのためもともと心血管疾患のリスクが高いと判断された場合は経皮薬を使用する方がいいとされています。
ただし経口薬は用量が調整しやすく、皮膚に貼っていなくてもいいなどの特徴があります。

また低用量と高用量はどちらがいいのかという疑問があると思います。
これはHRTを行う目的次第になります。
参考として下の表はエストゲンの投与量別にそれぞれどれくらいの量のことを指すのかを表しています。

更年期症状を抑えたいという目的であれば高用量が求められます。
また基本的に早期に閉経した方はエストロゲンを2㎎/日(内服)もしくは75㎍~100㎍/日(経皮)で閉経年齢までは投与するよう推奨されています。
しかし経口薬を使用していた場合血栓症のリスクは用量が高ければ高いほど増加するため、閉経年齢を超えた場合は低用量や経皮剤に移行するなど時期に合わせて使う薬剤を検討する必要があります。
また、乳房不快感などの副作用がみられれば用量を調整する必要があります。

膣萎縮による生殖器症状が強い場合は血中のエストロゲン濃度を増加させずに症状のみを改善できるエストリールという経腟薬が最も効果が高いことも知られています。

さて気になる副作用や合併症のリスクに関して次の記事で説明します。

活動、研究資金とさせていただきます。