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Q.ホルモン補充療法について①

痛みにどう対応するかの続きとなりますが、
今回はホルモン補充療法(HRT)についてみなさんにお伝えできればと思います。
(ホルモン補充療法は以下HRTと略します)

治療によってエストロゲンの分泌がなくなり、性交痛の一つの原因となります。
(こちらの記事をご覧ください。https://note.mu/olas/n/nab2f79c99986)
そのためなくなってしまったホルモンを補充することは、一つの解決策となります。

ただHRTは性交痛の解決だけではない大切な役割を果たします。
HRTについてがんサバイバーの声をもとに疑問点を下記に挙げました。
2017年に日本産婦人科学会が出したホルモン補充療法ガイドラインに基づき、お答えしていきたいと思います。

1. そもそもなぜやるべきなのか
2. どのような効果があるのか
3. HRTはやってもいいのか(がん種別に解説)
4. いつ始めるべきなのか
5. どの薬がいいのか
6. 副作用や合併症はどうなのか
7. どれくらい続けるべきなのか

1. そもそもなぜやるべきなのか
おそらくみなさんがHRTを始めたタイミングは医師にホットフラッシュがきつくなってきたことを訴えたとき、が多いのではないかと思います。
手術などで閉経を迎えた方は自然閉経よりも更年期の症状が強く出てくることが知られています。
HRTはホットフラッシュに対して非常に強い効果を示しますので、始める動機付けとしてはいいでしょう。
しかしHRTの効用において、ホットフラッシュの改善はほんの一部分にすぎません。
そもそも女性ホルモンがもたらす影響が多岐に渡ることを過去の記事で書きました。(https://note.mu/olas/n/n83b4b31ee48b)
手術で閉経を迎えることでホットフラッシュや関節痛のような自覚症状が出現すること以外にも
悪玉コレステロール値があがったり、
骨粗しょう症のリスクが通常よりも3倍近く上昇したり、
また50歳未満で卵巣を取られた場合は心血管疾患が増加したり、
と体の中でいろいろな変化が起きていることが報告されています。

もちろん膣の萎縮についても挙げられます。
これらのリスクを考慮すると、HRTをするかしないかは個人個人の状況に応じどの方にも十分検討されるべきだと思われます。
まだ始めていない方はぜひ医師に聞いてみてください。

2. どのような効果があるのか
下記に示します。
① 更年期症状の緩和
いわゆるホットフラッシュや睡眠障害、関節痛、抑うつ症状などのことです。ホットフラッシュに関してはHRTを初めて1週間で75%減少、症状の強さは1/10になったという研究結果があります。
② 骨吸収抑制・骨折予防
HRTによって骨密度が上昇し骨折が予防できた研究結果があります。60歳未満で開始することでその効果は高まります。
③ 代謝改善
LDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールを低下させることが分かっています。また細胞への抗酸化作用も示します。しかし薬の用量に依存します。
糖尿病の発症予防についても結果がみられています。
④ 血管機能改善
血管内皮機能を改善することで動脈硬化を防ぐことができます。
⑤ 血圧に対する作用
閉経すると血圧があがることがありますが、HRTにより血圧が変動しないという研究結果があります。
⑥ 皮膚萎縮予防
皮膚にはエストロゲン受容体が多く存在しているため、コラーゲン量が増加し皮膚の厚みが増すということが言われています。
⑦ 泌尿生殖器症状改善
膣やその周囲の粘膜が萎縮してしまうことに関連した症状として性交痛や繰り返す膀胱炎などがあります。
治療開始から1~3か月程度で効果が認められたという研究結果があります。
⑧ 悪性腫瘍の予防
大腸がんや食道がんの発症リスクを低下させることができます。

続きは次の記事で。

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