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【コラム】医療者に性・セックス・性生活に関する相談をするときの心得

※今からお伝えすることは私(看護師)の経験からの一意見です。

「医療者に性に関する相談をするときの心得」とえらそうな題名をつけてしまいましたが、ラフに、でもお時間あるときにぜひ一読していただければ嬉しいな思います。

本来ならば患者さんが医療者に対して「これって聞いてもいいのかな」と遠慮することは、できれば避けなくてはなりません。

しかし「忙しそうだな…」とか「なんだか威圧的!」とか「このタイミングで聞いてもいいのかな…」など、さまざまな理由があって聞きたいことを聞けないことってどうしてもありますよね。

さらに性に関する話題はやっぱり医療者も患者さんもお互いにとって繊細な話題で、一筋縄にはいきません。

この前おこなった勉強会ではサバイバーさんから、医療者から積極的に情報を発信してほしいという声が上がっていました。

私もそうすべきだと思います。

医療や看護は患者さんの発言や客観的事実を踏まえたうえで介入することが大切ですので、「この情報はおそらくいらないだろう」「この話は避けておいた方がいいだろう」と勝手に思い込んでしまうことはよろしくないと思います。

でもそれができないのはこの問題の特徴…

ある医療者向けのがんとセクシュアリティの教科書では、医療者が患者さんにセクシュアリティの支援をするにはまず「自分が性についてどのように認知しているのかを理解すること」、さらに患者さんの性に関する価値観の違いを乗り越え適切なコミュニケーションをとるために一種のトレーニングが必要だと書いています。

医療者には十分な準備状態が必要ですが、なかなかそのトレーニングができていないのが現状です。

さて今回は私の経験から、みなさんが医療者に「いざ!相談してみよう」と思い立ったときに、ぜひ知っておいてほしい心得を4つお伝えしたいと思います。

みなさんの心の支えとなるといいなと思います。

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【心得その1】
性、性生活のことについて聞くことをためらっている方へ
「聞きたいことならば聞いてはいけないことはない!」

この記事を読まれている方の中には、「医療者に性のことについて聞くのはタブーだ」とか「命のことを考えてくれている医師に失礼なんじゃないか」と思われている方がいらっしゃるかもしれません。

「性=人に話しにくいこと」という価値観であるとよりこの気持ちは大きくなるのではないかと思います。

しかし今まで体験したことがないがん、そして治療。訳が分からないことばかり。

さらに性のことなんて調べてもなんだか通り一遍のことしか書いていない…誰かに相談したい!と思ったならいつでも聞いてみていいのです。

「聞きたいことがあるならば絶対に聞いてはいけないことはありません」

さてやっとの思いで医療者に相談したときに、必ずしも期待している答えがこないことがあります。

医療者が1人の人間として持っている性への価値観、そして医療者として持っている性への価値観がバリアになっています。

命を扱う現場にいても、性に対してどのような価値観を抱いているかは、人によって大きく違います。相談した医療者は「性の問題は医療の現場に持ち出すものではない」と思っているかもしれません。

あなたがもし勇気を振り絞って「あの、先生…!」と声をあげて聞いてみたところ医療者がぶっきらぼうな対応をしてきたことがあったとしたら

それは医療者に大きな気づきを与えるチャンスです。

「私にとって大切なことなんです!」と強めに主張してやりましょう。その医療者は真摯なその思いを受け止めて、患者さんの価値観に合わせながら話をしてくれるようになると思います。

やっぱり人間と人間の関係性ですからね。

【心得その2】
「実は性生活について悩んでいることがあるんですが相談していいですか」と言ってもらうと意外と医療者は肩をなでおろす
「医療者の背中を押してあげるために、性のことを声にしてみよう」

医療者が1人の人間として性に対して持つ価値観は、日々のひとつひとつの態度や行動に現れてきます。例えば退院指導の性生活の項目だけさらっと飛ばす看護師いませんでしたか…?

少々体験談ではありますが、そのときの看護師の心情とはこういったことが多いです。
「性・セックス・性生活のこと話したら、今じゃないわ!ってヒンシュクを買うんじゃないかな…」「なんだか気まずい空気が流れそうだな…」

価値観やそこから生まれる感情がバリアとなって医療者も性に関する話題を出す前にものすごい勇気を振り絞っていることがあります。

そのハードルを乗り越える大きな大きな力となるもの。
それは「患者さんがその情報を知りたがっていることに気づくこと]です。

もちろん医療者から性に関する話題を出すことが大切であることに変わりありません。しかしまだ十分な準備できていない医療者の背中をぜひ押してください。

【心得その3】
話しやすい医師、看護師、相談員、1人でも強大な味方を作ろう

さて思い切って話を出してみたときに、医療者1人1人の反応って全然違いますよね。ときにはなんだか逃げ腰な医療者もいる。

しかし医療者のなかには、この分野に関心があってちゃんと勉強している人がいる、知識が少なくてもしっかり目をみてこの相談に乗ってくれる人がいる。

だからある1人の医療者に期待と反するような態度をされても、病院で性のことについて話してはいけないと思う必要はありません。

1人の医療者がだめでも他の医療者に話してみること。「この人はどうかな?」と試してみるという気持ちでいるとよいです。

その中でいつかあなたのとって強大な味方になってくれる医療者が見つかると思います。

【心得その4】医療者をうまく使い分けよう

さて最後の心得、それは医療者を使い分けよう!です。どういうことかと申しますと、医療者にはそれぞれのプロフェッショナル領域があるのでそこをうまく利用して質問してみようということです。

これは私の知り合いの患者さんとっても上手にやっていました。その方は治療の関係で婦人科の主治医のほかに放射線科の医師にも受診していたので、放射線科の医師には放射線による影響を、婦人科の先生には概要的なところを聞き分けていたのです。

それぞれの知識や考えをうまく聞き出しながら統合し、問題を乗り越える力にできることはとても大切なことだと思います。

もしかしたらパートナーとのコミュニケーション、言葉にできないような葛藤、思いは看護師さんや相談員のほうが聞き上手かもしれません。

術後にセックスしても大丈夫か、痛いけど何が原因なのかは医師に聞いた方が納得のいく説明がもらえるかもしれません。

ぜひいろんな職種、いろんな人に聞いてみてください。これは性に関すること以外にも言えること。きっとそれぞれの答えが返ってくるはずです。

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ここまで私が考える心得を4つあげました。
みなさんの背中を押せる言葉になれたら、とても嬉しいなと思います。

(今回のお花の写真は1月に咲いていたアタミザクラの写真です。)

活動、研究資金とさせていただきます。