見出し画像

法務のミニマル・デザイン

火曜夕方5時、赤坂見附の駅前は明かりがちらほらとつきはじめ、夜の街が始まりつつある。そんな繁華街を横切り、私は訪問先へ向かった。訪問先はお世話になっている弁護士事務所である。

もともと私は、大学で法学を学んだわけでもなく、法律や弁護士の先生には何の接点のない仕事をしていた。しかし、仕事がだんだん現場から管理職に近づくにつれてカバーしなければならない領域が増え、各種契約業務もまた避けられない仕事となった。

はじめのころは、見よう見まねで契約書の雛形を自力で作っていた。とはいえド素人の見よう見まねほどヒドいものはない。この条文だと、こういうケースはカバーされないんじゃないか、こういう事態が起きた時今の文言にはどこにも対応することが書いていない… つぎはぎを重ねていくうちに、100条はゆうに超えそうな分厚い案ができてしまう。さすがに素人の自分でもわかった。「これは見苦しい。」

そんな試行錯誤ののち、とあるきっかけで弁護士の先生が作成した契約書を目にする。以前自分が作ったものと同じような内容だったのにもかかわらず、四分の一ほどのボリュームに収まっている。しかし、そのスリムな文言には、かつての自分の作成したものではカバーしきれていなかった様々な事態にもきちんと対応していた。まさに法務のミニマル・デザイン。これがプロの仕事か、初めて見た弁護士先生の仕事に大きく感銘を受けた。

そういえば、かつてR社の職業適性検査を受けた時、私が一番向いている職種が、実はダントツで法務職だったのを思い出す。もっと若くにキャリア転換していたら、それはそれで面白い仕事に巡り合ってたかもしれない。

そんなこんなで、私の中で縁遠かった法務の仕事だが、最近はその奥深さを感じるようになった。さて、弁護士先生の打ち合わせ。お盆明けからの連日の外出続きもようやく終盤戦。気を引き締めていこう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?