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現実をゲームのように楽しもう。「Do It Now」による現実ゲーム化計画(1)

「現実は私達を幸せにするためにデザインされていない。ゲームに比べて現実は不完全だ。」REALITY IS BROKENより

ゲームだったらお買い物クエストでもレベルあげでも、楽しいしいくらでも時間を使ってしまうのに、現実の家事や仕事はなぜこんなにも楽しめないのだろう。ゲームにハマったことがある人なら多くの人が一度は考える疑問です。

その疑問に対して、現実ってそんなもんよね、と諦めずに、現実をゲームのように面白くしてやろうと考える人達がいます。

ARGという言葉をご存知ですか?

「あーAR(拡張現実)のゲームかな?」と思う人もいるかもしれませんが、そのARとは関係ありません。現実に仮想を重ね合わせるのがAR(Augmented Reality/拡張現実)であるのに対して、ARGはAlternate reality game/代替現実ゲームの事を指します。

簡単に言うと「ゲームの面白い要素を現実に取り込んで、現実をゲームのように楽しもう」という取り組みです。

ゲームの面白い要素を現実に取り込んで、というからにはまずゲームの面白さ、ハマる仕組みを分析してそれを現実に取り入れなければなりません。冒頭に紹介した文章はREALITY IS BROKENという本の一節で、この本ではゲームの面白さを「現実修正法」という挑戦的なフレーズでいくつも説明しています。

今回の目的はARGアプリである「Do It Now」を説明することですので、それらをひとつずつ取り上げることはしません。しかし、ゲームの面白さについて触れなければ、ARGの魅力も、そもそもなぜARGを楽しめるのかもわからなくなるため、少しだけゲームの面白さについて考えてみましょう。

ゲーム(主にデジタルゲーム)の面白さとは何でしょう。なぜ時を忘れてデジタルゲームに没頭してしまうのでしょう。

レベル上げが楽しい、ランクアップが楽しい、世界観がいい、物語が楽しい、新しいアイテム・レアアイテムを手に入れたら嬉しい…さまざまな理由があると思います。これらはすべてゲーム内の行動に対してのフィードバック、比較的短時間に得られる報酬です。

しかもこの報酬はお金や現実の物のような外的報酬ではなく、手には触れられないし資産化できるものではないけど嬉しい、という内的報酬です。私はゲームの成果に応じてお金がもらえたり、現実の商品がもらえるからゲームをするのだ、という人はほとんどいないでしょう。

すこし乱暴ですが、ゲームを楽しいと感じる理由をごく単純化すると、自分の行動に対して、内的報酬が短時間で得られることが約束されているから、と言えるかと思います。

この、短時間、約束されているという部分が現実の家事や仕事との大きな違いです。

ゲームの場合、それぞれのクエストにはもちろんそれをクリアする道筋が必ず1つは用意されており、時間を使ってレベルをあげたり、ゲーム内通貨を増やしたりすればいつか必ず達成できることが約束されています。

仮にクエストが達成できなかったとしても、達成できない理由が納得できるものであれば、それは次への目標となりモチベーションを上げることにもなりえます。そしてゲームの中ではさまざまなレベルにあわせた複数のクエストが用意されているので、プレイヤーが望むなら次は自分にあったクエストを選べば確実に内的報酬を得ることができます。

しかし現実の仕事はそうもいきません。

どうすれば課題が解決できるのか。もしくは、そもそも課題は何かから考える必要がある仕事もあります。課題の捉え方や解決のための手法を間違えば、仕事は不完全となり内的報酬は得られません。ひどいときは叱られたり、マイナス評価をされたりと負の報酬を得る結果となります。

近年は分業化・複雑化が進んでおり、自分に与えられた部分的な仕事が完了しても直接的な内的報酬(その仕事を喜ぶ人の声や、完成品を作り上げる達成感)を得にくかったり、長期プロジェクトでは完成までの時間が長すぎて日々の仕事に対して正のフィードバックを得にくかったりと、現実世界ではゲームに比べて内的報酬を得る機会が少ないのです。

そこで、現実の活動に対して短時間、約束された内的報酬が与えられれば、現実をゲームのように楽しむことができるのではと考えて現実をゲーム化するのがARGの考え方です。

朝起きました。さて、布団をたたみましょう。布団をたためれば経験値+1、規律+1、そして2コインゲットです。次は洗濯機をまわしましょう。できれば経験値+1、衛生+1、1コインゲットです。と、そういうフィードバックがある生活をつくるのが「Do It Now」というアプリです。

得た経験値は何になるのか。レベルがあがったり、称号を得たり、実績が解除されたりします。コインをゲットして何になるのか。ゲーム内アイテムを入手できます。そして、活動によって得る経験値やコイン、称号や実績、アイテムにいたるまで、すべて自分で1から設定できます。

自分で設定した称号や実績、アイテムをゲットして何が楽しいのか。という問いに対してはこう問い返しましょう。

「他人が作った称号やアイテムをゲットして何が楽しいのか」

これは、あなたは他人の作ったものでしか楽しめないのか、というような挑発的な意味ではなく、他人の作ったものでも楽しめるのだから自分で設定したものであっても楽しめるのではないか、というようにポジティブな意味にとらえてもらえればと思います。

Do It Nowは現実を主体的にゲームのように楽しんでみたいと願う人のためのゲームです。この家事やタスクの経験値はどのくらいにしようか。コインをどのくらい集めたらどんなアイテムを入手できるようにしようか。そういった創作・設計の部分も楽しめる人でないとDo It Nowを楽しむことは難しいでしょう。

何かを達成することが好きであれば、その日しかできないことをクエスト化して経験値を高めに設定してみましょう。

アイテム集めが好きなら、毎日少し頑張れば買えるアイテムを設定してそれを買えるように頑張ってみましょう。

他人に自分の偉大さを自慢することが好きであれば、ツイッターなどで自分のレベルや経験値(家事などをクエストとしてこなせば本来の意味の『経験値』も貯まります)を自慢しましょう。

競い合うことが好きであれば、いつもは家族の誰かがやっている家事をクエストとして登録しておき、その人よりも早起きして先にその家事を消化して経験値をゲットしましょう。もしあなたがDo It Nowにハマることで家事をこなすようになり家族が興味を持てば、一緒にDo It Nowをプレイし、経験値やコインを同じように設定することでゲームとして競い合うこともできるかもしれません。

Do It Nowの中で経験値が増え、パラメータがあがり、コインが増えていくだけでも自分が何かを成したという充実感は得られるものです。しかし、これは人による部分が大きいと思いますので、それがあまりイメージできない人にはおすすめしません。

「Do It Now」は「現実にゲームの面白さを取り入れる」という取り組み、ARGの初歩として最適なアプリであると思います。

しかし、なぜか日本語のレビューはあまり見かけず、アプリの説明も見当たりません。おそらく日本語対応したのが2020年の2月のアップデートからなのが理由かと思われます。

ARGをどこかで知り「面白そう。よし、やってみよう」と思った人がネット調べても具体的にすぐに体験できるARGを見つけられず、結局日常にARGを取り入れられないというのは悲しいことです。

将来、ARGを知り、始めてみたいと思った人のために、まだネット上に情報の少ないDo It Nowについての情報やノウハウをまとめて行きたいと思います。

ちなみに「代替現実ゲーム」の読みは「代替(だいたい)現実ゲーム」と読みます。「だいがえげんじつゲーム」とは読まないのでご注意あれ。私は間違えて読んでました。

次回から具体的にDo It Nowの説明をしていきたいと思います。

「Do It Now」 android

※iOS版は不明

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