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ワールドカップから学ぶべきことども〜戦争音痴の防衛費増強〜

ワールドカップ(W杯)サッカーはアルゼンチンがフランスとの熱戦をPK戦で制し、幕を閉じだ。天才!神の子!?類希な才能を持ったサッカー選手、リオネル・アンドレス・メッシ・クッシッティーニは、バロンドール(世界年間最優秀選手賞)を7回獲得するなど数々の栄光を掌中に治めてきたが、唯一W杯優勝の栄誉だけを得ていなかった。今次W杯はこのメッシのサッカー人生を完成させるためにあったとも言える。
 
W杯には様々なストーリーを描くことができる。W杯連覇を達成するフランスのストーリー、フランスには得点王となったエムバペという若き天才もいた。あるいは、宗主国を植民地が破るというモロッコの快進撃の果てに新たな時代を指し示す光が描けたかもしれない。あるいは、極東の小国が劣勢から欧州列強を打ち破り続け頂点に立つ日本の成功物語を思うこともできた。
 
夢ではなく、リアルな世界での64の熱戦一つ一つには、込められたメッセージが至宝のごとく散りばめられていた。たとえば、秀逸のミッドフィルダー、モドリッチ率いるクロアチアの三位獲得に至る道のりには、1992年に勃発したバルカン半島の民族紛争の克服のストーリーがある。
 
当時、ボスニア紛争を逃れて祖父と山村で貧しい生活を余儀なくされたモドリッチにとって、旧ユーゴスラビア分裂から立ち上がるクロアチア自身が自らの生き様であり、自分の頑張りが国民の生きる力となることを信じて疑わぬものであった。1995年に戦禍のサラエボに入り、地元の子どもたちとサッカーをした私には、モドリッチが我が子のように思える。その時、私の運転手をしてくれたジオは元ユーゴのサッカー選手でその後クロアチに移住すると言っていた。モドリッチの魂のゴールは、日本のベスト8進出という「あまりにもあまりにも」功利主義的なモチベーションでは越せない壁であった。
 
日本がグループリーグ1位でノックアウトステージに進み、クロアチアを破り、ユーゴ崩壊後のクロアチアの夢を担い、1998年W杯初出場の敗戦を克服し、さらに進んでブラジルを破り、その偶像を打ち破り、メッシ率いるアルゼンチンに勝利して同じく1998年W杯初戦での敗戦を克服し、フランスとの決勝戦でチャンピオンの地位に上り詰めた。とすれば、そのメッセージはアジアの勇気となったであろうし、それは欧州帝国主義からの植民地解放のメッセージであったり、その栄光の壇上で「世界平和」を訴えれば、まさに憲法9条を有する平和国家ジャパンの象徴であっただろう。
 
現実の世界に戻れば、今大会2位のフランスを讃える壇上にはフランス大統領マクロンが待ち、選手一人一人の手を熱く握った。彼にとってサッカーは政治を超えているのだ。日本代表がベスト16で首相官邸を表敬したのがどういうことか、前号の本論でスポーツ思考したとおりである。
https://genkina-atelier.com/sp/index.php?QBlog-20221209-1
 
スポーツが与えるメッセージが世界平和構築に繋がるということを理解している政治的指導者かどうか?そこが未来の世界を担えるかどうかの鍵だが、そんなことを理解できる政治家はこの日本には皆無だ。そうである限り、日本がW杯を有することなぞ夢のまた夢だ。
 
日本はこのW杯で明らかに敗北したのはコスタリカである。そのことを重く反省すべきであり、そこから学んで欲しい。防衛費の増額に必死になるよりも、日本をそして世界を平和に導く道があることを。日本代表がドイツ代表、スペイン代表に勝利して、コスタリカ代表に敗れた意味を岸田首相は学ばなければなるまい。
 
(敬称略)

2022年12月27日

明日香 羊

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編集好奇
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昨日、ネットフリックスのドキュメンタリーに『FIFAを暴く』を発見。シリーズもので、全部で4時間余りの大作。夢中で見入ってしまった。ブラッター以下、かつてのFIFA要人がバンバン出てくる。なぜブラッターが会長を突然辞したかのヒントが見つかった。改めてスポーツ思考したいと思っている。

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