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【第十二回】ちょっと小腹がすいたんで。

肥後橋/(食)ましか/イタリアン

大阪の中心街、梅田からすぐの肥後橋はビジネス街である。
夜ともなれば人影は疎らだ。

そんな閑散とした街の一角。
夜光虫のように光に寄る人の群れがある。

(食)ましか

イタリアンを貴重にした酒場である。
この店がとりわけ面白い。

タバコ屋を改装した店内は人でごった返している。

どこから人が沸いたのか。

それくらい表との温度差は激しい。
週末の夜なんかはまず、夜営業は予約をしなければ到底入れないときている。

この店は朝、サンドイッチを売るパン屋になり、
昼はカレーランチが出来るカレー屋に早変わり。
夜はこういう様相のバルになる三毛作営業の無駄のないスタイルなのだ。

面白い作りだ。
レジ係が居てそのスタッフさんが店内を仕切っている。

ここで大体の料理を注文して席へつく。
酒は━━━━

グラスビールやグラスワインはセルフだ。
ボタンをポチッとで一杯分。
レジ係のスタッフさんが杯数を管理してくれているので安心して飲んだくれよう。

レジ下にある冷菜なんかをチョイスしてカウンターに持っていく。

こういう感じで始めよう。

こんな面白い導入だとそれだけでテンションが上がり浮つく。
食はアトラクションだから導入の仕方もそれ相応に重要じゃないかとボクは思っている。

兎に角メニューが豊富だ。
カウンター越しで威勢良く楽しそうに、そしてどこかしら誇らしげに調理や接客を楽しむスタッフさんがいる。
こういう人気店で働いているという矜持が意識を上げているんだろう。
実に良い循環である。

こういうの見ると全部食べたくなるのはボクだけだろうか。

取り敢えずガッチリと飲み、話を楽しみながら料理を待つ。

ラクレット・チーズを乗せたバケット

いきなりのラクレット・チーズである。
この手狭な店内にラクレット・オーブンがある。
片手でつまむにしたら勿体無いくらいのハイジ感はでている。

カプレーゼ

しっかりと柔らかい水牛チーズを使ってジェノベーゼが惜しげもなくかかっているカプレーゼだ。
こんなモン、ワインが進むに決まってる。

スタッフさんにボトルで頼んだほうがお得ですよー、なんて悪魔の囁きをされまんまと━━━━

引っかかるボクは罠にも気づかないバンビ。
ああ、ワインが美味い。
まだ二品なのに美味い。

レバーペースト

言わずもがな。
血合いの香り含みのモノを少し重た目の赤と流し込む。

ちくわの磯辺揚げ

磯辺揚げといってもゼッポリーニだ。
海藻をピザ生地に混ぜて揚げたモノ。
それを和的に落とし込んでる。
面白い。

軽く燻したビンチョウマグロとカラスミ

いわゆるサラダだが、刺し身を瞬間燻製とはこれまた楽しい。
スモークガンを使っているのだろうか?
仄かな燻香とカラスミの風味がひどくマッチする。
これは白ワインだな。

真空調理した胸肉と食べるラー油のパクチー乗せ

これが面白かった。
どこにラー油がかかっている?
そうだ、そのナッツ地味たモノなのだ。
オリーブオイルでラー油の具材を長時間熱したあと、その具材をラー油として引き上げ使っている。
実に美味しい。

それじゃあ、胸肉はどこにある?

葉っぱの奥底に隠れているのだ。
真空調理した胸肉もしっとりとしている。
それをドライでスナック感のあるラー油と山盛りなパクチーと和えて一緒に頂く。

しっかりと味が落ちていて何故かイタリアン的に落ち着いている。
イタリアン×中華な正解を導き出してくれている。

こういうギミックあるメニューは大好きだ。

黒牛のタリアータ

表面がカリカリにグリルされ、中身はくっきりレアに仕上がったタリアータだ。
ケイパーが香り酸いソースも実に食べさせる。
ワインが水のように消える魔法がかけられた。

紅ズワイガニのあんかけチャーハン

うん、やはりイタリアン×中華。
これは中華寄りだがパラパラに仕上がったチャーハンに餡という鉄板な仕上がり。
さあ、まだジャンジャン来るぞ。

黒トリュフのタヤリン
あさりバタークリームソース

これがこの店のスペシャルともいえる。
自家製手打ちの玉子麺タヤリン。
タリオリーニに近く平打ちの細麺だ。
これを濃厚にバタークリームとあさり、じゃがいもの角切りで仕上げたパスタだ。

クリームソースがよく乗る。
そしておろされた黒トリュフがよく薫る。

これは一度行って味わって貰いたい。
(ボクは家で真似したい)

玉子麺のプツプツした食感とぽってりとしたクリームソースの相性がとても良い。

あさりのコハク酸とバタークリームがここまで合うとは。
卑しく、皿まで舐めたいくらいだ。
本当に満足できるヒトサラである。

ラザニア

まだくるか。
そう、この店の名物ラザニアである。
生地は勿論自家製。
自家製のパスタってある線を越えていないとすごく不安定で美味くなかったりする。

だが、閾値を越えると絶対的なヒトサラに変わる。

肉ダネたっぷりでしっかり目に焼かれた生地。
焦げたチーズとクリームソースの相性は抜群だ。

ここまで食べて飲むと気持ちがいい。
いくらでも入ってしまいそうな気分になるが腹にも限界はある。
接遇も最高だしこの店もまた大阪に行った際には必ず寄りたい店舗である。

〜後日談〜

ちょいと刺激を受け過ぎて、自宅でタヤリンを手打ちしたのだ。

やはり、いっぺん食ってるモノは再現しやすくかなりいい線で生地も練れた。

延圧で麺の薄さもしっかりとキメ。

粉を打って切り出し。
パスタでアンティーク製麺機使うなよとか言われそうだけど使えるんだから仕方ない。
その辺のパスタ・マシンよりずっと調子が良い。

この様相にまとまる。
タヤリンである。

何玉か打って試食(というかガチ食いだけど)

良い具合に茹で上がりますなぁ。

微細な固さも(食)ましかで味わってるからこそ少しでも近づけるわけで。

ホタルイカのタヤリン、アーリオ・オーリオ

自家製タヤリンという技をラーニングした。
やはり良いモノを食うと刺激が違う。

そして、黒トリュフは高くて手が出ないのでポルチーニを使いバタークリームと牡蠣でソースを。

ポルチーニのタヤリン
牡蠣バタークリームソース

牡蠣は正解だった。
じゃがいもクリームソースとよく融和する。

大粒の牡蠣は火が通り過ぎないように。

本来の流れとしてはこうして美味しい刺激を受けてインプットしてから、自分で作ってみてアウトプットするまでが一環の流れである。
またましかのような良い店に行って(ましかまたも何度でも行きたい)インプットしたいモノだ。
美味しかった。

営業時間

月〜金

朝(サンドイッチ)
9:00〜売り切れまで

昼(カレー)
11:30〜15:30

夜(バル)
17:00〜1:00(L.O.24:00)

土・日・祝


17:00~翌1:00(L.O.24:00)


定休日

朝の部、昼の部は土日祝休み。
夜の部は定休日なし、不定休。

席数

30席

備考

夜の部は確実に予約を取ってから行ったほうが妥当。
人気店のため飛び込みで行っても殆どの場合座れないので注意。