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14歳でドイツ人学校に放り込む その2

前回は「では、始めよう。」が最後の文だったが、実際はどう書き進めたらいいのか、五里霧中だ。
スタイルをどうしていいのか、わからないのだ。
一つだけ、強調したいことがある。
このエッセイは、子供(ティーンエイジャー)を、いきなり全くできない語学の現地校に放り込んだ親の立場からの文章である。
子供の立場からではない。
子供(今では立派な成人だが)には、自身の言い分、意見がある。
親の立場とは異なるはずだ。
そこだけは、頭の中に留め置いて、読み進んで頂けるように、お願い致します。

前回述べた様に、住居・学校・全てのインフラ契約を、ドイツから日本への帰国があると信じて、解除する手続きをしてしまっていたが、これらを全て元に戻した。
日本からの出向の地位を、ドイツの現地雇用社員の立場に変える手間もあった。
しかし、上記の諸々の手続きの煩瑣さやストレスは今回のエッセイのテーマに関係ないので、省く。

ただ、前回の繰り返しになるが、海外赴任としての雇用と現地採用社員との待遇の差(家賃補助がなくなる、学費補助がなくなる、滞在中の毎年の一時帰国補助がなくなる等々、また現地採用になると、馬鹿高い社会保障費を全てドイツに納めなければならない)は、子供の学校選択に大いに関係するので、繰り返し書いておく。

読んでくださる方が、ドイツの教育制度をご存知ない前提で書くと、ドイツでは、もし子供に大学進学の希望があるなら、ギムナジウムに進学する。そこで、最後の卒業試験に該当するAbitur(アビトゥーアと発音される)に合格するのが大学進学への道だ。そしてこのAbitur合格は、日本でも高校卒業と自動的に認定され、高価な翻訳文(認定を受けた公文書翻訳者による)をつければ、日本の大学入試でも高卒書類として国立でも私立でも大学入試を受けられる。
また、多くの外国の学校と同じで、ドイツの学校は4月に始まるのではなく、夏休み明けが新年度である。

情報は自分でとる・他人や専門家からもらう・役所に頼るをバランスする


14歳中二の三学期で、日本に帰れないことが判明したので、どうすべきか?
先ず誰でも思いつくのは、インターナショナルスクールだろう。
わたしのドイツの勤務地にもあった。
しかし、学費をご存知だろうか?
検索したところ、およそ年間300万円越え、これは学費のみで、合宿等のエクストラは含まれない。
つまり卒業までの3年間で、軽く一千万円超えの覚悟がいる。
その後に大学が控えているのに、だ。
日本人学校からインターナショナルスクールに行く生徒さんはいらっしゃるが、これはおうちが裕福か、会社が学費を補助しているからだ。
当時のドイツの勤務先の直属の上司の奥様が、偶然にもインターナショナルスクールの副校長をなさっており、そこからの情報を含め、上司は、インターナショナルスクール進学は難しいだろうと忠告してくれた。
兎も角、4月からの中三の一学期は日本人学校に通うことにして、ドイツの新学期にあたる夏休み明けからドイツの学校に通い始めるという方針で、学校探しを始めた。
住居の近くの公立のギムナジウムに片端から電話したが、「ドイツ語は話せない・わからない」と言うと、全部断ってくる、面接さえしてくれない。
ではと、私立の学校に電話したら、面接だけはしてくれたが、矢張り受けてくれない。
よく考えたら、当たり前だ。
ギムナジウムは大学進学を視野に入れた教育をしているので、程度が高い。そこにドイツ語ができませんで学習についていけるわけがないのだ。
何回も何回も断られるストレスは、親だけが被った(子供は日本人学校に通学している)。
無駄な努力とストレスだったとも言えるが、親が現実の過酷さを正しく認識する契機にはなった。
さて、どうする(こればっかりだ)?
子供は14歳なので、ドイツの学校制度では9年生に相当する。
ということは義務教育の範囲なので、役所が管轄ではないか?
ここは自分を褒めたいが、日本で言う市の教育委員会に相当する役所のHPを読み、電話し、子供連れで面接をすることになった。
役所の職員は、筆記用具の持参を言ってきた。
こちらは日本人学校の成績表ドイツ語版を持参した。
職員は、簡単な会話を子供とかわそうとし、ドイツ語(無)能力をはかり、英語の筆記試験を課して、英語の検定もした。
因みに、ドイツ語は英語と共通点が多いので、ドイツの現地校の英語レベルは、日本の学校の同学年よりは遥かに高い(数学は中学レベルでは逆である)。
職員の判定は、ギムナジウムは無理だから、兎も角外国人の子弟用のドイツ語補習授業が充実している、総合学校に行けということだった。
ということで、夏休みにその学校を外側から(夏休みで無人)見て、新学期開始数日前に、教師たちが新学期の準備を始めたころを見計らって、面談を申し込み、子供も伴って、学校に顔を出した。
日本人学校のドイツ語版成績表(オール5ではないが、4がちらほら、あとは5)を見せ、潜在能力はあること、ドイツ人家庭教師をつけるつもりであること、大学進学を目指していることを、最初からはっきりさせた。
校長と外国子弟ドイツ語補習部門長の先生は、この総合学校からも、成績優秀者はギムナジウムへ推薦し、途中編入の道があることを教えてくれた。
これは大変重要な情報で、道に明かりが灯った気がしたものだ。
同時に、先生方は、これまでのドイツ語が全く出来ない外国人の生徒の教育経験から、留年する可能性が大いにあるという忠告もしてくれた。
明かりはとても暗かった。

14歳の子供は、夏休み明けに、こうしてドイツの総合学校9年生に入学した。

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