それでも私は食べていく②

【伝説のわらびのたたき】

 ひいおばあちゃんが亡くなったのはもうずいぶんと前のことだけど、忘れられない味がある。娘であるおばあちゃんに聞いても、

「作り方、よく知らないのよね。私味になっちゃう。」と言っていた。孫であるお母さんにも聞いてみたけれど、

「味もうっすらとしか覚えてないし、直接は聞いたことないかも。」とまるで戦力にならなかった。

 たぶん、私も数えるほどしか食べたことはないのだけど。ひいおばあちゃんが作ってくれた「わらびのたたき」は伝説だった。当時の私は今ほど山菜が好きだったわけでもないし、田舎のおばあちゃんちに行くと「おかず地味だなぁ」と心の中で思っていた。子ども舌だった私が何とか白米を食べ進めるために見つけたのがひいおばあちゃんの「わらびのたたき」だった。ひいおばあちゃんのわらびのたたきは確かみそ味で、ぐちゃっとした見た目とは裏腹に、ご飯に合う。合うなんてレベルでしか表現できないことが申し訳ないくらいだ。


 ひいおばあちゃんが亡くなってから、おばあちゃんにも何度か作ってもらった。「私、わらびのたたきとっても好きだから、春になったら作って」と言っているだけあって、旬の時期に私が遊びに行くと必ず「わらびのたたき」が食卓に並んだ。でも、ひとつ問題がある。おばあちゃんの「わらびのたたき」はだし醤油とおかかの味付けなのだ。無論、こちらもご飯にばっちり合うのだけれど。私が食べたいのは、ひいおばあちゃんの「わらびのたたき」だなといつも思うのだった。

 お彼岸やお盆のお墓参りの時、おばあちゃんちの仏壇に手を合わせるとき、いつも必ず言ってしまう。
 「ひいおばあちゃん、伝説の「わらびのたたき」の作り方、そろそろ教えてください。」

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