5節までの現状整理

ここまで五節を消化して勝ち星のない大宮アルディージャ 。順位は最下位になってしまった、やりたいサッカーははっきりしている。しかし、結果が出ない。混迷を極める現状で、どのような課題があり、どのように改善すべきかを自分なりに考えてみた。


1.喫緊の課題


・ビルドアップが安定しない(致命度:10)
  ハイプレスをかけられると顕著に不安定になる。アンカーを抑えられ、CBには中切りをされる。
  左サイドでは抵抗の余地があるものの、右サイドでは奪われること必須の状況。
・サイド裏を使われる(致命度:7)
  右サイドで顕著。SHno守備が曖昧になり、フォローに入ったSBの裏を使われる形が目立つ。
・敵陣での枚数不足(致命度:5)
  後ろに枚数をかけてビルドアップを安定させようとすると前にボールが入っても攻撃の幅を作る
  役目の選手が不足して単調な攻撃に終わる。失点リスクを考えると、重点を置くのは厳しい
・ライン間を使われる(致命度:3)
  4141だろうが、442で守ろうが、どうしても入ってしまう縦パス。容易に前を向かれて、
  ここを起点に右へ左へと展開されてしまう。最悪、ゴール前で根性で守備すればなんとかなる。


2.スタメンとして考えられる組み合わせの検証

2-1 ベースの配置

ベース配置

できること
・左サイドの攻撃面での連携◎

できないこと
・右サイド裏を使われる
・敵陣でのプレスはできたり、できなかったり
・ブロック守備が怪しい

ベースの配置であるだけに、各人の特徴等にも触れておきたい。
まず、当分の間、スタメンの座が確保されていることが間違い無いのは河田、柴山、矢島、西村、新里、三幸、小野の7名であろう。河田は間違いなくチームのエースであり得点源である。柴山は相手のプレッシャーがあったとしてもボールをキープでき、前への推進力も有している。矢島は守備に不安を抱えるものの、局面を打開するテクニック、ゴールを手繰り寄せる技術がある。西村、新里は少ないCBの陣容の中で序列が不動なのは明らかだ。三幸は長短のパスが繰り出せ、守備面でもある程度(あくまである程度ではあるが)のパフォーマンスが期待できる。小野はまさかのSBへのコンバートではあったが不安視されていた守備面を上回るパフォーマンスを攻撃面で見せている。
その他の選手に触れていくと、奥抜は武田や高田に比べ、経験もあり、ドリブル突破能力に優れ、良くも悪くも計算が立つ。ただ、オフザボールやプレー判断に難がある。大橋はネガティブトランジションの予測において非常に良いものを持っているが、ボール回しにおいてはやや単調なボール回しに終始しており、徳島戦ではミスが目立ち、無念の前半で交代。茂木は攻撃面で期待できるような足元・オフザボールはあるものの、チームの戦い方なのか、IH、WGとの相性なのかいまいち本領が発揮できず、守備面でのしわ寄せを受けている印象。南はスタメンが続くとは思うものの、ビルドアップの改善にチームが踏み切った場合、上田に譲ることも考えられなくはない。


2-2 富山右WG

富山右WG

できること
・ロングボールが入れられるようになる
・前線からプレスができるようになる

できないこと
・サイドでの幅取り
・右サイドからのクロス


2-3 山田右SB

山田右SB

できること
・右サイドの守備が安定
・クロス対応が安定

できないこと
・ビルドアップ
・効果的なオーバーラップ


2-3 小島IH、三幸アンカー

小島IH、三幸アンカー

できること
・安定したビルドアップ
・IHによるハーフスペースへの侵入

できないこと
・ネガトラ時の攻撃の芽潰し


3.霜田さんが443でやりたいこと


・安定してハイプレスを剥がして前進できるビルドアップ
・ハイプレスをかけてショートカウンターにつなぐ
・安定したブロック守備
・球際での競り勝ち(トランジション)
4試合勝ちがない中自陣から徹底してつないでいる様子を見るにビルドアップの安定化が最も高い優先度なのであろう。ハイプレスは得点に、ブロック守備はそれぞれ直接に得点と失点に結びつく。また、安定したビルドアップはトランジションでの優位を導くであろう。


4.これまでの結果

第一節 vs横浜FC(2-3●)
前半は横浜のマンツーマンハイプレスの前に何もさせてもらえず、後半に富山を投入してロングボール&ハイプレスで盛り返すも、試合終了間際にPKで決められ敗北
得点1:茂木(左サイドのスローインから矢島のピンポイントクロスを茂木が頭で合わせる)
得点2:矢島(右サイドの崩しから茂木のパスを矢島がゴラッソ)
失点1:齋藤(ビルドアップでの西村のミスからボールロスト。斎藤のゴラッソ)
失点2:小川(右サイドの崩しからライン裏に侵入されてクロスを押し込まれる)
失点3:クレーべ(左サイドの崩しからPKを取られ、決められる)


第二節 vsアルビレックス新潟(2-2△)
前半20分まではハイプレスで何度も決定機を作り2点先取するも、本間至恩のアシストから2失点
得点1:河田(ハイプレスから右サイドでボールを奪い、クロスから河田が合わせる)
得点2:河田(柴山のアーリークロスを河田が頭で押し込む)
失点1:高木(右サイドから本間に中央へドリブルで運ばれ高木へスルーパス)
失点2:イッペイ(自陣でのボールロストで右サイドからの本間のクロスにイッペイが頭で合わせる)


第三節 vsロアッソ熊本(1-2●)
ビルドアップで苦戦し、効果的に前進できず、じりじりと押されていき後半に2失点
得点:河田(左の崩しからミドル)
失点1:菅田(CK)
失点2:粟飯田(ライン間を使われ左サイドからのクロスを頭で押し込まれる)

第四節 vs栃木SC(1-1△)
終始ボールを保持をするもビルドアップが後ろに重く、ゴール前に圧力をかけられず、セットプレーで決められて引き分け。
得点:小野(CKからのサインプレー)
失点:トカチ(直接FK)

第五節 vs徳島ヴォルティス(0-2●)
前半は徳島のハイプレス、カウンタープレスに苦しめられ自陣でのプレーが続く。後半に大橋を小島に変え、アンカーを三幸にすると、徳島のプレスラインが下がったことも影響してか、ビルドアップが安定し、敵陣でのボール保持が増えるも、決定機は作れず
失点1:西谷(再三ライン間に縦パスを入れられ、右サイドからフリーでクロスを上げられ、こぼれ球を押し込まれる)
失点2: ムシャガ バケンガ(自陣でのビルドアップをカットされてPKをとられて決められる)


5.目標をどこに設定するのか

・可能な限り上位を目指す(理想的)
・今年はベースを作ることに徹し、来季に備える
・残留をする(現実的)

これについては時期尚早ではあるが現実的な策を取らざるを得ないいと思う。上位を狙ったとしても、ここから立て直す時間やチームの現状を見れば上位を目指すことは至難の技だ。ここからの立て直し、夏の補強を大成功させてどうにかなるか、というレベルだ。
ベースを作るという考えも、現実的に視野に入れるべきではない。ペシミスティックな考えになってしまうが、J2の中位でシーズンを終えれば、待っているのは有力選手の流出だ。当然、チームの主力が狙われる。自ずとベースはなくなり、来シーズンは更地からチームを構築することを前提としなければならない。
前述の通り、ベースは残りづらい。ただそのなかでもベースを作ることを諦めてはいけない。残留しつつもチームの戦い方は整える。たとえ主力を抜かれても。そういう覚悟が今から必要だ。それだけにチームの数人だけではなく、チーム全体として霜田監督の目指すサッカーを全員が理解し、実践できるようなシーズンにしなければならない。


6.最適解はどこに?

以上のようにここまでのすごーくざっくりではあるが現状を整理してみた。これらを総合して、どのようの考えのもと最適解を見つけていくべきか考えていきたい。これは、ビルドアップが改善されれば・・・、右サイドの守備が良くなれば・・・という単純なことではなく、総合的に考えた上で、最も結果に結びつく改善手段は何かということを考えなければらないといけない、ということと同意義だ。当然ながらここでの議論は1.で挙げた課題をどのように改善するかという点に終始する。以下は3.に記した霜田監督の目指すサッカーおよび433システムで戦っていくことを前提とする。
まず何よりも改善すべきは、4.を見ても明らかなとおり、ビルドアップの安定化であろう。敗北した3試合ではいずれもビルドアップが不調に終わっている。今期の不調の全ての原因と言い切ることはできないが、ボール保持が安定すれば、それだけ守備の時間も減る。右サイドの守備よりも問題と考えるのはそれが理由だ。これを改善する術としては、GKとCBによる左右の使い分けと、3センターの人選であろう。特に大橋のアンカー起用に関しては徳島戦で大きく疑問符がついてしまった。これまでの4戦ではシンプルなパス捌きで大きなミスもなく。かといって効果的なパスもそこまでないといういんしょうであったが、徳島戦の後半に三幸がアンカーを努めたことで、後ろのビルドアップが大きく改善した事実は徳島のプレスラインが下がったことを受けても看過しづらい。個人的にはアンカーには当分三幸を据えて最適解を探らざるを得ないと思う。大橋が再度スタメンに返り咲くには、アンカーに頼らずビルドアップが安定してできるようになるか、チームとしてハイプレスを主体に戦うような相手と当たる際に限るのではないかと思う。また、小島の起用も興味深いものがあった。機をみてDHの一角としてビルドアップに参加しつつ、前線にも顔を出し、あわよくばハーフスペースでライン裏を狙う。ちなみに私は小島の覚醒こそ大宮の好調につながるとさえ思っている。また、時折見せる小野DH位置への移動は右サイドのビルドアップ難を幾分かサポートすることにはなりうる。
次に、右サイドの守備だ。これにはビルドアップの問題とトレードオフにならざるを得ない部分もあり、霜田監督も悩みが深い問題だ、右SBに山田を据えてもなお改善しない以上、私にもどうしようにも改善策が思い浮かばない。これについてはビルドアップを安定化して守備の負担を減らしつつ、シーズンを通してブロック守備のクオリティを向上させるということしか言えない。これは非常に根深い問題で、現状ではファーストプライオリティにはなっていないが、いずれは本格的に向き合わなければならない問題であろう。なお、ビルドアップの課題を持ちつつ、山田を右SBに入れたことは、単に一人を変えれば、あらゆることを総合して考えた結果、改善が見込まれる可能性のある課題だと霜田監督が考えたからであると思われる。
ライン間を使われることに関しては、右サイドの守備の問題と同様だ。これは誰か個人が悪いという話ではなく、チーム全体の問題だ。前線からどのように攻撃を制限をするのか、縦パスのコースをどのように中盤が消すのか、ライン間にいる相手を中盤とDFラインでどのように受け渡すのか、等々様々な要因が影響する。ただ、おそらくは前線からどのように攻撃されるサイドを限定していくのかという点が最も重要なのだろう。それは冨山が出ている時間とそうでない時間を見れば良くわかる。しかし、富山の守備面の貢献だけで、全て片付けられないから皆頭を悩ましている。
最後に、敵陣での枚数不足の問題だ。これはいわずもがなビルドアップの不調と大きく関係する。ビルドアップがうまくいけば、さらに言えば、IHを低い位置に下げなくても前にボールを運べていれば、IHは高い位置を取れ、WGへのサポートにも、CFのサポートにも、前線へのロングボールのセカンド改修にも加われるわけだ。つまり、後ろに枚数をかけずビルドアップが安定化すれば、少なからず改善はする問題なのだ。
であるからして、1.において、まずはビルドアップの安定化、そして守備面の2つの課題、そして敵陣での枚数不足の順番に致命度を順位づけた。霜田監督が、コーチ陣が、そして選手が最適解を見つけ、一刻も早く今シーズン最初の勝ち星を掴むことを切に願う。

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