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大宮見取図#6 レコードを通じて、文化を後世につないでいく。

●レコード屋グリグリ 
  オーナー


現在世界的なムーブメントになっているレコード。
音楽視聴自体はネット上でのストリーミング配信が主流でありながら、一部海外では日本のシティポップが大流行。
山下達郎や竹内まりやといった昭和のアーティストが注目されているのです。
 
その流れを受けてか日本でもレコードを買い求める人が増加中。
 
そんな動きを見せるレコードの買取販売店を、ここ大宮で四半世紀以上続けてきたのが、その名も「レコード屋グリグリ」さん。
 
音楽を、そしてレコードをこよなく愛するオーナーに、お店の魅力、そしてレコードの魅力をたっぷりとお聞きしました!

所狭しとレコードが並ぶ店内。

中古レコードにはストーリーがある。

懐かしの歌謡曲からジャズ、クラシックまでオールジャンルを取り扱うレコードショップ。
以前は海外で仕入れもしていましたが、現在は買取が中心。地元の音楽好きはもちろん、東京やその他地方、近頃は海外からのお客さんも多いのだとか。
 
さっそく、お店の価値とほぼイコールの意味合いを持つ「レコードの魅力」を聞くところから取材をスタートしました。
 
オーナー「音としての魅力は多くの人が知るところだと思いますが、僕としてはジャケットの魅力をまず伝えたいですね。やっぱり昔のジャケットはどれもこだわっているし、いいものは楽曲にアートとしての説得力が伴うようになります。それから例えばオイルショックの時代はビニールが薄いとか、時代によっても質感が違って、細かく見ればキリがない。他にも、歌詞カードがポスターになっているとか、レコード本体以外の部分で趣向を凝らしたものが多いんです」
 
 
また、そのレコードが中古であることで、魅力はさらに増すとオーナーは続けます。
 
オーナー「ワン&オンリーであることがすべてですね。中に書き込みがあったり、ラブレターが挟まっていたり、その曲が好きで聴いていた人のキャラクターにまで迫れることもあります。それに、レコードはちょっとしたことで傷がつきますし、如実に音に出ます。当然価値は下がりますが、それも味として聴くことができるのはレコードのよさとも言えるでしょう。CDやデジタル音源にはない魅力がたくさんありますよね」
 
 
まだまだ語り足りないといった様子のオーナー。
好きなレコードについて饒舌に話し続けるその姿は、なんとも楽しそうです!

若い頃、給料が入ればすぐにレコード店に駆け込んだ。

 お店としては買取に力を入れているそうで、その強みもうかがいました。
 
オーナー「自信があるのは買取です。僕はレコードを買い始めて50年以上で、発売当時の時代背景もよく知っています。その曲がどこで流通していてどんな人によく聞かれていたのかや、レコードの持ち主ご本人の性格やライフスタイルまで見聞きしている。だからそのレコードにどれだけの価値があるかを肌感覚で値付けできるんです。もちろんネットで調べた相場と違うこともありますよ」
 
 
ややマニアックな話もご愛嬌。
オーナーのレコード史が出てきたところで、レコード店を始めたきっかけを聞いてみました。
 
オーナー「もともと洋楽が好きで、ラジオでよく聴いていたかな。いわゆるビートルズの後追い世代=レコードを買い出した世代です。若き日は大手レコードショップで働いていて、給料が入ればすぐにレコードを買うような日々を過ごしていました。独立したのは30歳前後で、その頃に中古レコードで食べている人と知り合って、自分もやってみようと思ったんです」
 
 
レコードを買っては聴きを繰り返していた若かりし日々。
その体験が、今の接客に大きく役立っているとオーナーは話します。
 
オーナー「対面で販売するときは、当時のリアルな情報を話すようにしています。ニール・ヤングやアース・ウィンド・アンド・ファイアーを僕は大学生のときにリアルに見ている。それこそ、ネットにはない情報です。そこから興味を持つ人もいるかもしれないですし。それに他でもない僕が、年上の人でジョン・コルトレーンとかレッド・ツェッペリン、ビートルズあたりを見た人に話を聞いてみたいと思うからです」

街にレコード店があるだけで、それは文化。

ここは大宮で最も古いレコード店と語るオーナー。
そもそもなぜ大宮を選んだのでしょうか。
 
オーナー「地元がさいたまで、なかでも大宮は北関東の玄関口と呼ばれる大きな街。氷川神社という歴史や参道の緑がある。このロケーションに興味があったんです。昔、吉祥寺に4年ほど住んでいたことがあります。井の頭公園をつっきって通勤して、帰りにはレコード店に立ち寄るという生活をしていました。とても魅力的な街でした。そのイメージに近かったのかもしれませんね」
 
 
最後に、この街のレコード店としてどんな未来に向かって行くのかをお話ししていただきました。
 
オーナー「大宮には氷川神社とその参道があり、歴史があるから、今後もずっと残っていくだろうし、僕もこの街並みのなかで続けられる限り続けていきたいと思っています。この周辺の人なら、少なくとも年に一回は氷川神社を訪れるはず。そんなときにふらっと立ち寄れる、知的好奇心をくすぐれるような立ち位置のレコード店であれたらいいなと思います。街にレコード店があるのは、もうそれだけで文化ですから」
 
 
取材の帰り際、中学生くらいの子どもとその父と見られるお客さんが来店。
オーナーの接客を横で聞いていると、父はブルースが好きで、このあとギターを一緒に買いに行くとのこと。
 
「親の聴いていた音楽に子どもが影響を受けていく……なんか嬉しいよね」と、接客後にしみじみと話すオーナー。
 
音楽などのアート、文化は、こうして脈々と受け継がれていく。
その媒介のひとつに、街のレコード店があることを目の当たりにしました。
 
大宮の街の文化継承地としても、レコード屋グリグリさんにはこれからもずっとあり続けてほしいと願うばかりです!

レコード屋グリグリ オーナー 埼玉県さいたま市 大宮区大門町3-63

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