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eってなに?

eってなに?

 指数関数 $${y = a^x}$$ は必ず点 $${(0,1)}$$ を通るが、$${a}$$ の値によって $${(0,1)}$$ における接線の傾きが変わる。その傾きがちょうど $${1}$$になるときがあるよね。そのときの $${a}$$の値を $${e}$$で表すことにしよう。… (1)

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 ところで、 $${y=e^x}$$ の逆関数が $${y=\log_e x}$$ だから、2つのグラフは直線 $${y=x}$$ に関して対称だ。ということは、$${y=\log_e x}$$ 上の点 $${(1,0)}$$ での傾きも $${1}$$ ということになる。… (2)
 そして、このように $${e}$$ を決めると、すごく良いことが起こる。なんと、$${(e^x)'=e^x}$$ になる。… (3)
 シンプルでいいじゃないか。しかも、$${(\log_e x)'=\dfrac{1}{x}}$$ になる。… (4)

 結局 $${e}$$とはなんなのか? (1) や (2) は定義としては心もとない。そこで (2) を書き換えたものを $${e}$$の定義としよう。… (5)

  $${f'(0)=\lim\limits_{h \to 0}\dfrac{e^{0+h}-e^0}{h}=\lim\limits_{h \to 0}\dfrac{e^h-1}{h}=1}$$ … (1)
  $${g'(1)=\lim\limits_{h \to 0}\dfrac{\log_e (1+h)-\log_e 1}{h}=\lim\limits_{h \to 0}\log_e (1+h)^{\frac{1}{h}}=1}$$ … (2)
  $${f'(x)=(e^x)'=\lim\limits_{h \to 0}\dfrac{e^{x+h}-e^x}{h}=\lim\limits_{h \to 0}\dfrac{e^h-1}{h} \cdot e^x=e^x}$$ … (3)
  $${y=\log_e x \; \Leftrightarrow \; x=e^y}$$ で $${\dfrac{dx}{dy}=e^y}$$ だから
    $${g'(x)=(\log_e x)'=\dfrac{dy}{dx}=\dfrac{1}{dx/dy}=\dfrac{1}{e^y}=\dfrac{1}{x}}$$ … (4)
  (2)$${\Leftrightarrow \lim\limits_{h \to 0}(1+h)^{\frac{1}{h}}=e}$$ … (5)
  (1) より $${h \fallingdotseq 0}$$ のとき $${e^h=1+h \Leftrightarrow e=(1+h)^{\frac{1}{h}}}$$
    つまり $${\lim\limits_{h \to 0}(1+h)^{\frac{1}{h}}=e}$$ … (5)

 以上を逆にたどると、次のような流れになる。(5) と定義すると、そこから (2)→(1) が導けて、(3) と (4) の公式が導ける。さらにそれを使えば点 $${(0,1)}$$ または $${(1,0)}$$ での傾きが $${1}$$であることが計算できる。そういうわけさ。

ところで、e の大きさは?

 指数関数 y=eˣ 上の (0,1) における接線の傾きはちょうど 1 。さて、e の大きさは実際どれくらいなんだろう? それを考えてみる。
 試しに y=2ˣ を描いてみよう。y=2ˣ は2点 (0 , 1) , (1 , 2) を通る。その2点を結ぶ線分の傾きが1だから、(0,1) における接線の傾きは1より小さくなる。すなわち、e は 2 より大きい。
 次に y=4ˣ を描いてみよう。 y=4ˣ は点 (–1/2 , 1/2) を通る。その点と点 (0 , 1) を結ぶ線分の傾きが1だから、(0,1) における接線の傾きは1より大きくなる。すなわち、e は 4 より小さい。
 以上から、e は 2 と 4 の間の数だ。では、3 と比べると、e は 3 より大きいのか、小さいのか? そんなことも気になるが、むずかしそうなので、ざっくり言ってしまおう。
 e の大きさはおよそ e ≒ 2.718 … ということだが、そのことは上の議論においても下の議論においても直接は影響しないので、これで良しとしよう。

xⁿ と e との怪しい関係

◎ n が実数のとき、 (xⁿ)'=n xⁿ⁻¹
  たとえば、 (x³)'=3x² , (1/x)'=(x⁻¹)'=–x⁻²=–1/x² , (√x)'=(x¹/²)'=1/2・x⁻¹/²=1/(2√x)
  また、(1)'=(x⁰)'=0x⁻¹=0 …① だから「(定数) '=0」という話とも整合性が取れている。

〇 では、ここで【問題】です。次の命題の真偽を判定してください。

命題1「xᵃ の形の式を x で微分すると、xᵇ の形の式になる」は
   すべての実数の定数 a で成り立つ

命題2「xᵃ の形の式を x で微分すると、xᵇ の形の式になる」は
   すべての実数の定数 b で成り立つ

 答えは、命題1は真、命題2は偽です。
 上の①より「xᵃ の形の式を微分すると、xᵇ の形の式になる」は a=0 でも成り立つが、b=–1 にはなりえない
 つまり、「xᵃ の形の式を微分しても、 x⁻¹=1/x は絶対に出てこない」。

 では「微分して x⁻¹=1/x になるものはないのか?」というと、そうではない。
 ある。それが自然対数 logₑ x だ。式で書くと、(logₑ x) '=1/x となる。

 すなわち「微分して xᵇ の形になるもの」はというと、b=–1 でなければいつも xᵃ の形をしているのに、b=–1 のときだけ対数が、しかもなぜか突然 e が出てくるのである。
 不思議というか、面白いというか、薄気味悪いというか、どう感じるかはあなた次第。

◎ 微分の逆が積分である。以上のことから、xⁿ の積分は、

        ┌  1/(n+1)・xⁿ⁺¹+C  (n ≠ –1)
    ∫xⁿ dx= ┤
        └  logₑ x+C     (n = –1)

 となる。

◇      ◇      ◇

指数で変わるものを対数で見る 〜 
▷ 指数の拡張    ▷ 世の中の増減は率で変わる
▷ 原子から宇宙までを1つの数直線に表してみよう
▷ eってなに?    ▷ e^iπ+1=0 を腑に落とす

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