Curse Of Halloween 5話①

「おめが は『ウンメイノツガイ』と いっしょ に なれたら、ずっと しあわせ に なれるんだよね?」
「うん、ずっと しあわせ だよ。」
「じゃあ、『ウンメイノツガイ』じゃない あるふぁ と、つがい に なっちゃう ことも あるの?」
「あると おもう」
「もしも きらわれちゃったら、『ウンメイノツガイ』じゃないって、すてられちゃったら、どうなるの……?」
「つがい が いなくなった あるふぁ は、また いつもの せいかつ に もどれるよ。でも すてられてしまった おめが は、まいにち、まいにち、ないちゃう くらい、ずーっと__」


目を覚ますと、もはや見慣れた部屋の天井だった。
頻繁に気を失ってしまうのも、不安定な体質のせいなのだろうか。
身体を起こすと、着替えた記憶のない服に変わっていた。
おそらくニーナが着替えさせてくれたのだろう。
枕元には白猫のぬいぐるみがあった。
手に取ってみたが、1号は入っていない様子だった。
サイドテーブルに置かれたノートに覚えてる範囲でメモを取る。
目が覚めてから数日になるが、一向に過去の記憶は思い出せずにいる。
ゆっくりでいいと御嬢は言っていたが、いつまで経っても自分がわからないというのはやはり不安だ。
少し怖いけど、進まなくては……

扉をノックする音が静かな部屋に響く。
「誰だ?」
扉の向こうからの問いに「にゃおぅん」とブザーが返事をする。
「リスノワールか、入れ。」
了承を得て御嬢の部屋に入る。
「おはよう。体は大丈夫なのか?」
リスノワールは頷く。
「そうか。昨晩、猫型の時に採血したら気を失っただろ?命に別状はなさそうだったから、その後そのまま寝かせた。ヴァンの診察で今のところ判明した事がいくつかある。少し長くなるから、とりあえずそこに座ってくれ。」
指差されたソファーに腰かける。

「まず、あんたの中に混ざった別種族の血がわかった。エルフ族だ。エルフ族の記憶は何かあるか?」
首を横に振った。
「エルフ族は基本、神聖な森の奥で静かに住んでいるらしいが、生息地が特定されないよう幻術が掛けられていて、ほとんど目撃されたことがない。数少ない目撃情報によれば、天使の生まれ変わりと思うほど美しい少年少女の姿をしているらしいが、真相は不明だ。だが、無限に溢れるほどの魔力を持ち、呪文を一切詠唱せずに回復魔法を施すことができるとの噂もある。近くの町の人曰く、かつて住処を追放されたエルフがいて、少し前までこの辺で住んでいたんだとさ。最近そのエルフは行方不明になっているが、もしかしたら1号が会ったことがあると言っていたエルフと同一人物である可能性もある。が、まだハッキリと確定したわけじゃねぇ。どれもあたしがこの目で見たわけじゃねぇからな……ここまでは大丈夫そうか?」
エルフについて多くの情報が押し寄せてくる感覚に混乱しながらも、何とか飲み込んだように頷く。

「まぁ、ここに住んでたっていわれてるエルフと関係するかどうかは不明だが、あんたの中にはエルフの血が入ってることは確実だ。ただ、エルフの血が見つかったのは人型の時だけで、猫型の時には検出されなかった。人型の時に血を混ぜられたから猫型に現れないだけなのか、あるいは……エルフ族の中に獣人族の血が混ざった、という可能性もゼロではない。あくまで1%でも可能性があるってだけで、確定はしていない。不安にさせたなら申し訳ないが、それでも記憶の手掛かりになればと思っている。……ここまでの話で、何か心当たりはあるか?」
しばらく考え込んだ後、首を横に振った。
御嬢は深いため息を吐きながら、おもむろにソファーの背もたれに身を預け、天を仰いだ。

「やっぱそうだよなぁ……そう簡単には戻らねぇよな……わりぃな、力になれなくて……」
御嬢の言葉を否定するように首を振った。
「あたしも医療魔法が得意だったら良かったんだが……初級レベルに毛が生えた程度しかできねぇんだわ……医療魔法に特化した知り合いもいるにはいるんだが、アイツにはあんまり頼りたくねぇんだよな……」
頭をガシガシと掻きながら身を起こし、話を続けた。
「わからねぇものはわからねぇし、焦って考えてミスってもメンド―だしな。とりあえず何か思い出せそうならメモなりノートなりに書いて持ってきてくれ。コッチでも何かわかったらすぐに伝える。」
リスノワールは同意するように頷く。

「あと、白猫のぬいぐるみには入ってないが、屋敷内では基本的にあんたの傍には1号が付き添ってる。チビたちはワケがあってな、あんたにしか存在を明かしていない。他の奴らには内緒にしていてくれ。ぬいぐるみに入っている間はあたしの魔力で区極パペットペットとして紹介しておけば大丈夫だろう。まぁ、屋上の件は完全に1号と4号のやらかしだから、リスノワールは気にしないでくれ。」
少し疑問に思いながらも軽く頷く。

「それでこの後、急でわりぃんだが、近くの町まで買い出しに行って来てくれないか?町までは少し歩くが、2~3件の店であたしのメモとお金を渡してくれれば商品と交換してもらえるはずだ。もちろん一人ではなく、犬……ウルフェルを同行させる。行けそうか?」
突然の外出に戸惑いを隠せない。
「ウルフェル一人で行かせるつもりだったんだが、医者からあんたを運動させるようにと言われてるのと、あと町で何か新しい刺激があるかと思ってな……どうだ、行けそうか?」


***

3月6日(1週目)分の更新です。
遅刻していることに焦りを感じているのか、夢見が悪いです。
筆が早くなりたいというか、早く行動に移せるようにならねば……

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?