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Ka na taへ

わたしがかなたを見つけたのは、たしか2013年とかそのくらい。もう10年だ。

0.8秒と衝撃。やtoldが好きで眺めていた有島コレスケさんや、東京に出てすぐの頃にBOYで見かけてから今日までずっとファンです、な7Aさんのかなたを着たスナップがわたしにとっての初めてのかなたでした。

それから、かなたはわたしの中にひとつの時代を作りました。

わたしに自我が芽生えたのは、高校生の頃だったと明確に思うのだけれど、かなたに出会ってようやくそれは確立したのだと思う。


キチムの試着室で初めてかなたに触れた。 服が大好きだったけど、服屋さんに行くのがなんだかすごく怖かった頃の事。

優しい明りが灯された小さな部屋で、周りの事も時間の事も考えずにただゆっくりたくさんの服で身を包んだり、かなたを記録した本を眺めたりしてものすごく贅沢な時間を過ごしたことをよく覚えてる。

それから少しして、富ヶ谷のお店でまたたくさんのかなたを着させてもらい、初めてかなたの服をお迎えしました。それは黒の45 pantsでした。
最近は生地が仄かに毛羽立ってふわふわしていてかわいい。


初めてのことはしっかり覚えているのに、それからのことはだんだん分からなくなっていくね。
たぶん、大学の卒業式に着たくてlapel jacketとskin pantsのネイビーのセットアップだと思う。
有島さんが着ていたグレーのlapel jacket、わたしにとっての初めてのかなたをどうしても着たかったのだけど、お店で買うことはできなくて、オークションで買った。

お店で買うのと変わらない値段で貯金がすっからかんになったことと、オークションの終了日が友達との旅行中で、旅行中にひとり終了時刻ぎりぎりを狙った入札に奮闘していたことはよく覚えてる。

卒業式で着た後も、特別な時に着ようと思って友達の結婚式とか大事な人に会う時とか、結婚指輪を作ってもらった時とか、結婚写真を撮ってもらった時とか、そういう時にしか着ていなかったんだけど、最近はすこしずつ、なんにもない時にも着るようになったよ。


大学を出てから程なくして東京を出て尾道に移り住んで、なかなかお店には行けなくなったけど、たまに東京に行くときにふらっとお店に行くことがなにより楽しみだったことを懐かしく思います。
おのみちいきたいって言ってくれてたちのちゃん元気してるかなぁ。

キチムの忘年会にも一度お邪魔して、加藤さんのバンドを聴いたり、初めて加藤さんとすこしお話をして、どんな流れだったかよく覚えていないけど一緒に写真を撮ってもらったりして楽しかった。


一度、東京から戻る道中に名古屋に立ち寄ってbar ka na taでカレーを食べたこともありました。
すごくおいしいカレーだったし、ka na taの服がたくさんある2階の部屋を見せてくれたり、お土産にコーヒー豆を持たせてくれたり、うれしかったな。


最後にお店に行けたのは、流行り病が始まる直前の事。
結婚する前に妻と初めて一緒に行って、初めてなのにお祝い頂けてとても嬉しかった。


それから、かなた旅館にも遊びいきました。
母屋も離れもお庭もどれも素敵で、その中でもわたしは入ってすぐの広いスペースから見える外に壁がとてもきれいだなと思った。

普段から、かなたの服に包まれているときは、身体が開いてる、自由になっているような感覚があるんだけど、かなた旅館にいる間はずっとそれが持続していて、身体が呼吸しているってこういうことなんだなと気づくことができたよ。
本当にいい時間だった。またいつか、お邪魔させてください。


尾道では、今年の夏には4年ぶりの花火まつりが開催されました。近所では盆踊り大会もあって初めて参加しました。
どちらもXukata 02を着て行った。
盆踊り大会では、近所のご婦人が「私、着物が大好きなんだけど、こういう浴衣初めて見た~!どうなってるの~~~?」ってすごく嬉しそうに話しかけてくれて、なんだかわたしも嬉しくなったよ。


2か月くらい前かな、大切にしてきたkutsuの紐が切れていることに気が付いた。
同じような紐が見つからなくて、でも切れていても特に履くことに支障はないから切れた靴紐のまま、今も履いてます。


2023年12月9日

さいごのかなたを観に京都に行った。
京都に来るもの随分久しぶりだったので、南禅寺の水路閣を観たり、紅葉がきれいだという永観堂に行ってみたりしてから、かなたに会いに行った。

地下への階段を降りると、かなたはこちらに笑いかけてあたたかく迎え入れてくれた。会場はたくさんのひとで穏やかに賑わっていて、わたしたちはしばらくの間、かわいいなぁ、かわいいなぁと言いながら、服をめくってみたり、撫でてみたりしていた。
すると、かなたは優しい声で ”試着室が空いたから、好きなだけ服を持っていってたくさん着てきて” と声をかけてくれて、試着室へ向かおうとすると、”これもおもしろいから、最後に着てみて”とワンピースを手渡してくれた。

かなたの試着室は外とは切り離されて特別な空間が出来上がる。かなたの服を抱えてひとたび試着室に入ると、外の音は聞こえなくなる。
まるで、トイザらスでお気に入りのおもちゃを見つけたこどもみたいに目が爛々と輝いて、心は少しそわそわとしてしまいます。
キチムや富ヶ谷のお店でもそんな風に感じていて、それはドアで明確に空間が区切られているからそうなのだと考えていたけれど、布で区切られただけの今回の試着室でも同じことが起こって、そこは特別な空間だった。

かなたの服に袖を通すときに肌に伝わる感覚、頭から被って裾が広がって、肩に布が乗った時の身体の一部であるかのように包みこまれる感覚を確かめながら、1着1着、感嘆の息を漏らしながらたくさんの服を着させてもらった至福の時間でした。


さいごにあなたに会えて本当に良かった。あなたに出会えて本当に良かった。

尾道で暮らし始めた頃に、もう服はかなただけでいいって思うようになって、自分のために買う服はかなただけにすると決めて、そうしてきました。
かなたがお休みをすると聞いて、これからどうしようと、途方もない不安がやって来たりもしたのだけど、かなたに出会ってからこれまでそうしてくれていたように、わたしがかなたを纏う時、かなたはまるで暗闇で手を繋いでくれているみたいに身体に寄り添ってくれて、これからもそれは変わらないから大丈夫だなって思えたよ。だってかなたはわたしなのだから。

またいつか、どこかであなたに会えることを祈って、コートの袖に腕を通して、優しく包まれて、寒くなりだした冬を過ごします。

またね。

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