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ブライトン三笘薫と“相棒”エストゥピニャンに見るウイングとSBの理想的な関係

 エクアドル代表の左SBペルビス・エストゥピニャンが左からフワリと送った山なりのボールを、ハーフバウンドで浮かすようにトラップした三笘薫は、次のタッチでリフティング。そして3タッチ目でリバプールゴールを揺るがした。

 FAカップ4回戦、ブライトン対リバプール。後半47分に三笘が決めたこの逆転弾を見て想起したのは、2018年のアジアチャンピオンズリーグ準決勝第2戦、水原三星対鹿島アントラーズ戦で、西大伍が決めたゴールになる。

 左から左SB安西幸輝が挙げたクロスボールは、中央で構えるセルジーニョの頭に当たり方向が変わっていた。反応するだけでも難しいボールだったが、西はそれを右足でトラップと同時にリフティングした。そして次のタッチをシュートに持ち込み、ネットを揺るがすという技ありゴールを披露した。

 三笘のゴールがシュートまで3タッチだったのに対し、こちらは2タッチ。西のゴールも三苫に負けず劣らず高級で、凄いものを見たという印象に変わりなかった。劇的でもあった。この西のゴールが決まっていなければ鹿島は負けていた。アジアチャンピオンに輝けなかったと断言したくなる、値千金の一撃でもあったのだ。

 左SBの上げたクロスを右SBが決めるという得点の過程も、先進的で洒落ていた。当時の鹿島は、現在より好チームだったと記憶する。「SBが活躍した方が勝つ」、「サッカーはサイドバックで決まる」とは、欧州でよく耳にした解釈だが、西と鹿島の関係にそれはあてはまっていた。

 日本代表キャップはわずか2だが、西は日本を代表する名SBだと筆者は思う。フィリップ・ラームやファンブロンクホルストなどに代表されるDF的と言うよりMF的なSBだ。

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