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来日した欧州トップクラブに見る多国籍軍の魅力

 国立競技場を満杯に埋めたバイエルン対マンチェスター・シティ戦。

 この選手は誰? と、こちらの目に止まったのは、後半の頭からマンチェスター・シティの右ウイングを張ったオスカー・ボブだ。風貌から国籍が想像できなかったので調べてみればノルウェー人で、20歳になったばかりの若手である。その昔、アヤックスで活躍していたズラタン・イブラヒモビッチがスウェーデン人だと知った時の方が驚かされたが、生粋のノルウェー人ではない、ミステリアスな雰囲気のドリブラーを目の前にすると、世界の奥深さを再認識させられる。

 カタールW杯に出場したバイエルン所属のドイツ代表選手は7人いた。しかし今回、マヌエル・ノイヤーとトーマス・ミュラーは怪我のため来日しなかったので、この一戦のピッチに立った同国の代表選手は前後半合わせて5人だった。

 一方、マンチェスター・シティでカタールW杯に出場したイングランド代表選手は4人。そのすべてが前後半に分かれて出場した。

 バイエルンの方が代表チームとの関係は濃密だと言える。監督の国籍もダメを押す。トーマス・トゥヘルがドイツ人であるのに対し、グアルディオラはカタルーニャ人だ。マンチェスター・シティの方が無国籍色は強い。

 W杯とチャンピオンズリーグ(CL)。試合のレベルが高いのはどちらかと問われたらCLだろう。代表級の選手が年間を通してひとつのチームで活動すれば、3日前に集合し、試合後直ちに解散する代表チームより戦術は浸透しやすい。代表チームは戦術を練習時間が長いクラブチームから借りる方が理に適っている。

 代表監督も今が旬の気鋭な監督より、クラブサッカーを上がった=卒業したベテラン監督が目立つ。クラブサッカーあっての代表チーム。サッカー界をリードするのはクラブサッカーだとの認識が、欧州では何十年も前から常識として浸透している。かつての日本とは真逆な関係にあった。筆者がその昔、欧州を訪れた際、最初に味わったカルチャーショックの一つになる。

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