炎上備忘録~裁判好きが転売問題を考察する

最近とある麻雀プロ団体の周りが騒がしい。先日は所属プロの接客で燃えたかと思えば今度はTV出演者の人選で燃えた。何で燃えるかわからない時代だなという気はするけれど、正義感なのか私怨なのか、かなり執拗にあちこちに働きかけていて、ついに代表や対象人物がわざわざアカウントを作ってまでコメントする自体にまでなった。

ただ、何が問題になっているのか、その所在が今ひとつ不明確なので、この機会に整理しておこうと思う。

転売の法律上の問題

法律上、転売そのものが違法とされているのは、マスクや消毒アルコールなど社会情勢上必要として規制されている(現在は規制が解除されている)物品や、薬など薬機法の規制に係る物品(これは無許可転売が違法だ)がある。逆に言えばそれ以外の物品の転売自体は規制されていない。安く仕入れて高く売るのは商いの基本なので、なかなか線も引けないのだろう。

ただ、その他にも気をつけないといけないことがある。中古品の転売には古物商の許可が必要だし、もちろんそれらによって得た収入は確定申告する必要がある。転売そのもの以外にも法律上の問題は発生しうるということだ。

だから、もし本人が出てきてコメントするなら、

① 転売自体をしていない。したこともない。

② 転売はしている(いた)が、規制されている物品は手がけていない。

③ 転売している(いた)が、古物商許可は持っているし申告もしている。

についてコメント(法的措置を執るなら、場合によっては証明)する必要があるのではないかなと思う。てかなんでわざわざアカウント作ってるのにこれコメントしないの?

転売の倫理上の問題

転売はしていた(していなければここの問題にはならない)が、違法な転売ではなかった、としても倫理道徳の問題は出てくるだろう。とある統計によれば3人に2人はチケットの転売行為に反感を持っているとのことだ。

https://www.research-plus.net/html/investigation/report/index109.html

ゲーム機器なども同じようなものではないかと推測する。

この点について本人として、あるいは団体として、スポンサーとしてどう考えるのかということは問題になるかもしれない。問題ないと考えるのであればその旨コメントすべきであって、そこをぼやかすといつまでたっても「なんとなくの反感」を買い続けることになる。(問題があると考えるのなら言うまでもあるまい)

僕個人の評価はどうでも良いんだけど、その点が問われているならそこを答えないといけないんじゃないのというだけの話だ。ステマ(ステルスマーケティング)もそうだけど、違法ではなくても倫理的にどうなのか、ということはよくある話で、芸能人などがステマで炎上しているところを見るに、おそらく倫理的にはステマはあまりいいこととはされていないのかなとは思う。転売もおそらくそうなのではないか。

その辺は個人の価値観みたいなところがあって、法律で規制されていなければ何をやってもいい、という世界は少し嫌な感じはするんだけど、逆に自粛警察みたいな同調圧力で埋まる世界も嫌な感じはする。どこに線を引くか、みたいなところまではここでは触れない。手に余るから。

ただ、転売をしている(いた)かどうかに触れることのない反論には意味がない。していない、あるいはしていても問題ない、という反論をするべきだ。擁護するならそう擁護しないといけない。

名誉毀損?

代表や本人は、転売についてのスポンサー凸について法的措置を執るとコメントした。名誉毀損か信用毀損か業務妨害あたりになるのだろうか。侮辱罪の問題にもなるかもしれない。

一つ一つの構成要件などを書いているときりがないけれど、名誉毀損についてはよく問題になるのできちんと理解しておきたい。一般的に、名誉毀損になるかどうかについては次の要件が問題となるとされている。

① 公然と

これはまぁいいだろう。不特定多数が知ることができるように、という意味合いだとされているけれど、インターネットでの行為だから、ここが問題になることはおそらくないんじゃないだろうか。世界中に向けて発表しているのと同じだからね。

② 事実を摘示すること

事実というのは必ずしも真実かどうかは関係ない。真実であっても(例えばあいつには前科があると摘示して、実際に前科があったとしても)名誉を毀損するとされることがある。本件で言えば「転売屋である」というのがこの事実の摘示になるだろう。本当に転売屋であるかどうかは関係が無いということだ。

③ 名誉を毀損すること

摘示された側の社会的評価が傷つけられることとされている。「黒い人脈」「詐欺で逮捕された人間と繋がっている」という表現などはここの問題になるんじゃないだろうか。(逮捕されたかどうかとその罪を犯したかどうかは必ずしも一致しないのでここにも気をつける必要がある。この国では逮捕=悪いやつみたいな捉え方はマスメディアでも頻繁にされるので、それはやめないといけない。逮捕されても無罪になることだってあるんだから)

代表が重用しているとか出演させるように働きかけているとかは疑問には思うかもしれないので、質問事項としてはあっていいと思うけど、答える前に前提事実とするかのような筋立ては問題があるんじゃないかなとは思う。

名誉毀損にならないこともある

上記の要件を満たしていても、名誉毀損にならないことももちろんある。以下の要件を満たす場合だ。

① 公共の利害に関する事実

公共の利害というのは要するに国民が生活する上で知る必要がある、ということとされている。プライバシーなどはあまり公共の利害とはされないことになるけれど、公人などにおいては公共性を認められることもある。

本件においては、公共財である電波を用いて放送される番組に出る人物の人選だから、まぁ公共の利害に関するのかな。僕が決めることではもちろんない。

② 公益性

その事実を摘示することが、公共の利益を増進させることになるかどうかという話だ。麻雀というゲームを楽しめることは公共の利益だろうし、そのゲームのイメージを悪化させないようにという目的なのであれば、一応は公益性はあるということになるだろうか。でも「代表個人が嫌いだから」って言ってたな。私怨はたぶん公益にならない。まぁこれももちろん裁判官が決める話だ。

③ 真実相当性

摘示した事実が真実であること、あるいは真実であると信じるだけの相当な理由があることとされている。当たり前の話だけれど、いくら公共の利益に繋がるからと言って、でたらめをまき散らして良いはずがない。

本件においては「転売屋であるかどうか」になるんだろうけど、これは本人の著作物からして明らかなのかな。「転売のススメ」という本を書いたからと言って転売屋かどうかは分からないのかな。もちろんこれは摘示した側が立証する必要があるし、決めるのは裁判官だ。

法的措置って言ってたね

訴える気も無いのに訴えるぞと言って訴訟などをちらつかせることは、場合によっては脅迫罪になることもあるとされているので、やたらめったら法的措置って言わない方がいいよね。問われている事実について何も触れずに法的措置をちらつかせること自体には疑問を持たざるを得ない。そういえば、楠栞桜もそんなこと言ってたけどあれどうなったんだろう。

あと、これは僕の個人的な感想に過ぎないけれど、代表が「そのビジネスにはあまり詳しくないので」といったコメントをしていた。でも、マスクやアルコール、チケット、ゲーム機器など、転売ってかなり大騒ぎされているよね。半ば社会問題化している事象について、曲がりなりにも団体のトップにいる人間のコメントとしてはいささか情けない気はする。結局のところは業界自体の意識に問題があるのかなという感想は持った。

当該団体の内規は知らないから推測だけど、入会に際して、いわゆる反社条項(反社会的勢力を排除する)の誓約書などは取っていると思う。これを取っていないようではお話にならない。

でも、会員個々の事業について、倫理上の問題があるかどうかの調査義務まではなかなか負えないだろう。そこまでの調査権、調査能力なんかあるわけない。飲食店(バー)やってますって会員がいたとして、価格の適正まで調べられるかって言ったら調べられないよね。

ということで、論点整理はおしまい。ここからは僕のポエムなので有料です。買う人はお駄賃代わりに買ってください。

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