権藤権藤雨権藤

Mリーグもいよいよ1次リーグの佳境に入った。ここからはカットラインを巡って下位チームの熾烈な戦いが続くことになる。長期戦とは違う一戦必勝の戦い方だから、どうしても各チームエース級を投入することになる。

といっても、麻雀だから「エース級」という位置づけは微妙だ。エース級を数人揃えたつもりのチームでも好不調は出てくるし、衆目の一致するエースよりも成績がいい選手だって出てくる。野球だってそういうことはあるが、麻雀のゲーム性からしてそれは半ば必然でもある。

それでも、各チームの監督は、それぞれの考えに従って「勝ちに行く」。負けは許されない。結果が全てだ。そうでなければMリーグはエンターテイメントとして成立しないだろう。残酷な世界だ。地獄、と言ってもいい。

もちろん結果ではなく過程を見るものなのだと主張してもいいのだけれど、それはそれで別の地獄になるだけだ。(バラエティだと主張したって同じことだ)

野球なら、投入した選手が振わずに負ければそれは使った監督が悪い。その采配が問題になる。サッカーもそうだろう。Mリーグはどうだろうか。

カジノのディーラーというのは、誰がディールしても同じだと思う人も多い。カードの並びは最初にセットした時点で決まっているのであり、誰がカードを配ろうと変わりはないと考えればそれは正しい。

中には、カードは誰かが絞って数字が見えた瞬間に確定するのであり、それまでは不確定な未来だと考える人もいるのだけれど、そのシュレーディンガー的世界観が誤っているかどうかはここでは論じない。要するに、ディーラーが人であろうと機械であろうと、勝負の結果は一緒であると考えたときには、ハウス(カジノ側のことだ)の勝ち負けも誰がディールしようと同じだという結論になってくる。

もちろんディール技術自体に巧拙はある。客により多く張らせるためのトークスキルはちゃんとあるし、ゲームの回転数を上げるためには配当でもたついていてはダメだから、計算やチップ捌きも大事だ。

そうではなく、連日連夜賭場に立っていると、単なる技術の差とは思えなくなってくる。バカラというゲームにおいては、ハウスはP側に張られたベットとB側に張られたベットの差額を被るから、毎ゲーム、ハウスも勝負に参加していることになる。(極端な話、P側とB側の差額が常に0であればハウスは絶対に負けない。B側の配当は0.95だからだ)

でもそうはいかないから、PとBの差額を受ける。人気のない方が勝った時にはその差額がハウスに入り、人気のある方が勝ったらその差額はハウスから出ることになる。

不思議なことに、調子の良いディーラーがディールすると人気のない方が勝つことが多いし、調子の悪いディーラーがディールすると人気のある方が勝つことが増える。P側とB側の差額が100万のテーブルなどで人気のある方ばかりが勝つと、一瞬で1000万くらい飛ぶ。

となると、やはり調子の良い(と思われる)ディーラーをより多く使うことになる。調子の悪いディーラーは一日お茶を引くことになる。その使い分けが正しいかどうかは誰にも証明できないが、ディーラー回しもピットボスの重要な仕事だ。客が入っているのにハウスの売上が上がらないと、それはディーラーの使い方が悪いということになる。(イカサマのチェックは当然するのだが)

結果の出せないピットボスは降格されるし、ディーラーも技術があっても結果が出ないと首になる。いつ踏み込まれるか分からないアンダーグラウンドの世界だから育成期間だとか放牧だとかいったのんびりした話にはならない。

下位同士の直接対決だった3月4日のMリーグ。ドリブンズは鈴木、コナミは佐々木、セガサミーは近藤、パイレーツは朝倉を投入してきた。実力的にはともかくとして、パイレーツが朝倉を投入してきたのはちょっと甘いかなという気はした。ドリブンズは今丸山を使う余裕はあるまい。セガサミーは和久津は使わないだろう。この状況ではそれが普通だ。

ここまでの成績を考えれば、朝倉は調子がいいとは言えまい。誕生日祝いで勝てるわけじゃないだろう。調子がいい選手かエースのどちらかを投入するところだろうし、今のパイレーツのエースは朝倉ではないはずだ。小林の連投になっても仕方があるまい。実際セガサミーは近藤近藤の連投だった。

朝倉はよく戦った。ミスらしいミスはなかった。

タンヤオ三暗刻含みの最大跳満まで見えるリーチだって、ほんのちょっとの差で近藤の手から4pや6sが止まった。死に物狂いのケイテンを取ったオーラスは、北はツモ切りではなく空切りした方が得なのではと思ったが、そんなのはごく僅かの差でしかない。

二戦目の園田の2600オールだって、本来であれば例え三面張の受け入れであっても白を切ってMAXに取るべきではないかと思ったりする。ああいう1牌の差が、前原という兜首につながるのだからやっぱり運ゲーなんだなと思う。

朝倉は、結果的に負けた、それだけの話でしかない。それでも負けるから不調なのだ。35になったと聞いて時の流れの速さにちょっと驚いたのだけれど、心折れることなく頑張ってもらいたいなと思っている。

でも、誰かが勝って、誰かが負ける戦いであっても、采配が結果論で叩かれるくらいまで、Mリーグは成熟するだろうか。

僕だって生活を懸けて1960年代の中日ドラゴンズの監督をやるなら、権藤博をできるだけ使う。130試合のうち44試合で先発、投球回429.1みたいな使い方をMリーグでして勝てなかったらどうなるだろう。首になるのかな。でも本来監督ってそういうものでしょ。

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