見出し画像

61歳母、留学13日目。~開き直り~

オーストラリアに来て2週間目、
語学学校で友達を作ることができ、やっと生活のリズムが掴めてきた母。
 
しかし、相変わらずホストマザーとのプチバトルは続いている。笑
キウイ事件スパルタ旅行の記事で登場しているホストマザーだが
なかなか母と折り合いがついていない。笑
 
母が滞在しているホストは63歳のインド系女性のお家だ。
IT系の仕事をされており、若い頃にインドからオーストラリアに移住されたらしい。
旦那さんを早くに亡くし、今は一人暮らしをされている。
 
ちなみに、ホームステイ先がどのように決まるのかというと、現地の語学学校が手配してくれるのでランダムに割り当てられる。
渡航前に動物アレルギーや子どもOKかどうかを聞かれるくらいで、どの家庭にホストしてもらうかは自ら選ぶことはできない。
そして、どんな家庭に滞在することになるかは渡航1週間前までは分からない、というシステム。
 
オーストラリアのシドニーは実に多民族な都市だ。
おそらく日本人がイメージしているであろう一般的な「ホームステイ」とは少し異なるかもしれない。
 
アメリカのドラマに出てきそうな見上げるほどの大きな家、
ハーイ!と笑顔で迎えてくれるフレンドリーな家族、
緑の芝生広がる庭には大きな犬が駆け回り、子供たちと遊んでいる、、
夜は大きな長机で家族団らんご飯を囲み、休日は郊外へ一緒にお出かけに連れてってもらう・・・
 
(これは私の完全なる独断と偏見。笑)
 
しかし、実際はこんな感じとは限らない。
オーストラリア、特にシドニーにはホームステイ先にもいろんな人種があるのだ。
白人系、中華系、ベトナム系、ネパール系、、
市内の小さなアパートだったり、おばあちゃんの家だったり、実は英語があまり得意な家庭じゃなかったり、ご飯を家族とは別々に食べさせる家庭など、各家庭それぞれ。
とにかく、シドニーのホームステイ先は一辺倒ではなく、多種多様なのだ。
お家に間借りさせてもらう、くらいの感覚のほうが正しいかもしれない。
 
母の渡航前、留学エージェントからホームステイ先の情報が送られてきたとき、
63歳の女性のお家ということで、ステイ先を手配した人が61歳の母のことを気遣って同じような年代の家を手配したのだろうかと思ったりした。
名前を見る限り、アジアの人っぽい。
使用言語の欄に、英語、ヒンディー語とある。
「インドの方なんだね・・・!どんな人なんだろう?」と母は期待に胸をふくらます。
「ビーガンってなに・・・?」
ビーガンとは、お肉をはじめ、卵や乳製品も食べない徹底的な菜食主義の人たちのことだ。
ベジタリアンは卵や乳製品がOKなのでケーキやパンを食べられるが、一般的なビーガンはベジタリアンよりも食べるものがかなり限られている。
当初、母はビーガンという言葉を知らず、今回初めて聞いたらしい。
 
ホームステイを勧めたのは娘である私だったが、改めて少し考え始めた。
 
母は約25年前に夫を亡くして以来、娘である私以外とは誰とも一緒に住んだことはなく、
私が大学生になり12年前に家を出てからはずっと一人暮らし。
まさか、外国人と一つ屋根の下で生活することになるなんて今まで想像したこともなかっただろう。
 
また、もうひとつ気がかりなことが。。
私の母は自他共に認める超綺麗好きな性格だ。もはや潔癖症なところがある。
家でホコリや髪の毛を見ると掃除をしないと気が済まない性分。
日本では掃除機を持って家を駆け回っているような人種である。
そのような潔癖症な母が他人の家で暮らすことができるか・・・。
 
インド系、ビーガン、63歳の女性。
かたや、外国人と関わったことのない、他人と長らく共同生活していない、生粋の日本育ちの母、61歳。
この2人が同じ屋根の下に暮らすといったいどんな化学反応を起こすんだろうか・・・
 
なんとなく想像はしていたが、予感は的中した。
 
ホームステイ先に到着して数日、母から出てくる言葉は、
 
「部屋が汚れててひどい・・・。自分の生活エリアだけは徹底的に掃除したわ!」
 
「ご飯が全部カレーの味がする・・・。ダシの文化とかないんかね。ジャパニーズダシ!教えといたよ」
 
「晩御飯、毎回一人で食べさせられてるんだけど、おもてなしの心とかないんかね・・・」
 
「シャワー短めにしてるつもりなのに、長い!って怒られた・・・ゆっくりお風呂も入れない~」
 
「がんばってホストマザーに話しかけてるんだけど、すごい塩対応される・・・」
 
現実は大歓迎でもてなされるようなホームステイとは限らない。
空き部屋の有効活用としてビジネスライクにホームステイを提供している家もある。
まあ、これらの苦労はホームステイあるあるだろう。笑 (母には想定外だったかもしれないが。)
 
ただ、ホストマザー側にとっても想定外だったことがあったようだ。
 
おそらく普段ホストマザーが受け入れているのは若い学生がほとんどなので
彼らの場合、夜は友達と外でご飯を食べることが多いらしい。
ビーガンの料理なのでやはりお肉が食べたい学生たちは、外で食べて帰ってくるのが大半のようだった。
そのため、普段ホストマザーは学生に毎晩ご飯を準備する必要はあまりないのだろう。
生活もあまり干渉せず、基本的には放置しているような感じ。。
 
しかし、61歳母は違う。
定時終わりのサラリーマンの如く、毎晩きっちり帰ってくる。笑
ホストマザーからすると家でゆっくりされると家事が増えるので、外に出てもらった方が楽なのか、
 
「夜は友達と出かけないの?友達いないの??」
「週末はどこかに出かけないの??」
「他の学生は料理作ってくれたり、掃除手伝ってくれたりするよ???」
 
と、分かりやすく母に主張してくる。笑
 
それに対して母、英語でうまく会話できないので受け身姿勢で聞くしかない。
キウイ事件しかり、うまく反論ができず聞いて耐えるしかない現状、、、
すると溜まったストレスが電話越しの私に向かって飛んでくる。
 
「ちょっと聞いてよ・・・!
ホストマザーにすごく嫌味言われてる気分なの・・・!」
 
そんな矢先に起こってしまったキウイ事件。
ただでさえ生活環境が合わずストレス過多だったところ、ホストマザーに盗み食いを疑われたことで、母のストレスが爆発。
ステイ先をもう変えてもらう!というところまで信頼関係が崩れてしまったのだが、
現地の留学エージェントの方になだめられて3週間がんばることに。
 
しかし、そこから母は何かが吹っ切れたようだった。
 
「もう私は開き直った!!
 
学校の行き帰りだけでもう精一杯、very tiredだから夜にはもう帰りたいの!って言ってやった!
 
友達はいないのかと言われたけど関係ない!ご飯だって家で食べるんだから!
 
日本人は綺麗好きだから、トイレットペーパーもシャワーだってたくさん使うのって言ってやった!
 
最初は泣いてたけど、お母さんはもう開き直った!!!」
 
(母、言い返せるくらいに成長している。笑)
 
色々と不満はありつつも、なんとか生活を続けている母。
とはいえ郷に入ったら郷に従えの精神に習い、トイレットペーパーを節約しなさいと言われて以来、2ミシン分だけの小さなペーパーでがんばっている母。
(明らかに長さ足りない。笑)
 
そんなにがんばらなくても、自分専用のペーパー買ってきたらどうかと思っていた数日後、
 
「お母さん、スーパーでトイレットペーパー買ってきたわ!!今日から思いっきり使ってやるーー!!」
 
こうやって生きる術を身に着けていくんだろう。
心置きなくペーパーを使えるようになり、開き直りのおかげで徐々にホストマザーにも対抗できるようになってきた母。
 
さて、ホームステイも残り2週間、ホストマザーとうまくやっていけるのか・・・?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?