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61歳母、留学15日目。~締め出し事件~

生活にも徐々に慣れ、少し口うるさいホストマザーにも対抗できるようになってきた母。
 
しかし、またしても事件が起こってしまう。
 
ホストマザーは普段、夜から出かけることが多く、家にいないときもあるらしい。
そんな時は母にとって絶好のチャンス。
シャワーが長い!と口うるさいホストマザーがいないのを良いことに、思いっきりシャワーを浴びれるのだ。
 
そしてこの日の夜も出かけて行ったホストマザー。

「今日は思いっきりシャワーできる!」

そう思って、いつもよりのびのびとシャワーを楽しんだ母。
 
みなさんご存知の通り、この時は1月なのだが、オーストラリアの季節は日本と真逆。
まさに夏真っ盛りの時期。
そのため昼間の気温は35度に達することがあるほど暑い。
 
久しぶりにシャワーをたっぷり浴びた母は湯上がりに暑いと思ったらしい。

「ちょっと暑いな~・・・部屋の中にいたらムシムシする・・・
そうだ!ちょっと外に出て涼んじゃえ!!」
 
ホストマザーがいないと気持ちが大きくなって普段はしないことができるようだ。
(上司がいないときの部下みたい。笑)
 
思い立った母は玄関のドアを開けて外に出た。
ここはシドニー郊外の住宅街。広い道路を挟んで、庭付きの大きな一軒家が立ち並んでいる閑静な場所。
オーストラリアはこの時期、夜8時過ぎても日が暮れないようで、そのときやっと夕暮れくらいの明るさだった。
外に出てみると風が吹いて気持ちいい。

「今日はうるさく言われることもないし、、あー、外は気持ちいいな・・・」
 
ひとしきり外の空気を楽しんだ母。
家の中へ戻ろうとドアノブに手をかけた瞬間、
 
ガチャッ
 
「ん。。。?」
 
ガチャガチャッ
 
「え、、開かない?」
 
「あ、、どうしようーーー!!!オートロックだったんだ!!!!」
 
ドアを開けようとしても、時すでに遅し。
固く鍵がかかってしまい、どうやっても開かない。
母は鍵が閉まってしまう事をすっかり忘れていた。。

「とりあえずベランダから入れないか・・・?」

焦って庭に回り込んでみた母。
ベランダの窓から入れるか・・・
と思いきや、ここも鍵がかかっている・・・
家の周りにある窓を全部確認してみたが、どこも鍵がかかって入れない・・・
この家はホストマザーと母の二人しか生活していないので
家の中には誰もいない。

「入れなくなっちゃった・・・」
 
思いがけず、外に締め出されることになった母。笑
 
しかも風呂上がりだったので何にも持って出ておらず。。
スマホもなく、着の身着のまま出てしまっている。
ホストマザーがいつ帰ってくるかなど知る由もない。
 
「やってしまった・・・」
 
ドアの前で立ち尽くす母。。
とりあえずホストマザーの帰りを待ってみることに。
玄関の前に座って、向かいの道路を眺める。。閑静な住宅街なので人通りはほとんどない。
 
「61歳にもなって一人で外に締め出されてるなんて・・・人生でこんなことってあるんだ。。」
 
ホストマザーの帰りを待って玄関に座っていると、途中、犬の散歩をしている近所のおじいさんと孫らしき女の子が通りかかった。
 
「ハーイ、・・・ハロー!」
 
とりあえず挨拶してみた母。
なぜ玄関前に一人で座っているのか、不思議な光景だったであろう。笑
彼らは母に「ハロー」と挨拶を返してくれたが、特に気に留めず去ってしまった。
 
約1時間。
待てど暮らせどホストマザーは帰らず。
 
「何も持ってないし、どうしたらよいやら・・・いつ家に入れるかわからない・・・」
 
これ以上待っていてもダメだと思った母、行動に出ることに。
 
「隣の人に助けてもらうしかない・・・!!!」
 
とりあえずホストマザーと連絡を取りたい。そこで隣の家の人にお願いして電話をかけてもらえれば・・・と考えた。
しかし、隣人に助けを求めるといっても、母がいつも頼りにしているスマホや翻訳機は持ってない。
知らない人の家にいきなり飛び込んで、どうやって伝えたらいいやら。
だがそんなことを考えていては、いつまでたっても家には帰れない。。!
 
決意した母。隣の家まで歩き、ピンポーンとベルを鳴らしてみる。

・・・すると中から大きなおじさんが出てきたらしい。
見慣れない来客におじさんもびっくりしたに違いない。
母は知っている限りの英単語とありったけの身振り手振りで助けを求めた。
 
「えーと、、、アイムジャパニーズ、スチューデント!ホームステイ・・・」

「・・・?」

「うーん、、ホームステイのホームのドア、バターン!って、閉まってーー、
もう、ドア、クローーーズ!入れなーーい!って何ていうの・・・
うーん、ノーホーム!!ノーノーホーーム!」
 
日本語と英語、とにかく身振り手振りで盛大に伝えようとする母。笑
 
「プリーズ テレフォン、、ユー コール マイ ホストマザー・・・?泣」
 
母の勢いに圧倒されたのか、おじさんは事態を理解したようだった。
 
「OK、OK。」
 
そう言って電話を取り出し、ホストマザーに電話をかけてくれた。
 
「ほっ・・・」

・・・
 
しばらく外で待っていると、カンカンに怒ったホストマザーが帰ってきた。
 
「何やってるのーーー!!!〇×△□・・・・!!!」
 
英語で叱られる母。何と言っているかあまり理解できなかったが、怒っていることはよく分かったらしい。笑
実は母、つい最近ホストマザーからドアの鍵のことで注意されたばかりだった。。
またやらかしてる!と怒られる始末・・・
 
「だって新鮮な空気が吸いたかったんだもーん!!!」
 
ホストマザーがいないと思ってのびのびしたら罰が当たってしまった、トホホな事件であった。
 
しかし、なんとかカタコトの英語とジェスチャーで乗り切った母。笑
これからのハプニングに、どう対応できるかな?

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