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ダークな世界観の中に光る岡上淑子センス

東京・白金代の森の中に佇む「東京都庭園美術館」。4月7日まで開催されている『岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟』は数十年前に生み出されたとは思えない、ダークな世界観の作品が集まる展覧会でした。


フォトコラージュニスト、岡上淑子

岡上淑子(おかのうえとしこ)は1950年代にフォトコラージュ作品で注目を集めた高知県出身のアーティストです。

ヒトとモノ、ヒトと動物などを切り合わせたフォトコラージュは、一見きらびやかな世界を呈しているものの、どこか無機質で不穏な空気がそこかしこに漂っています。

《夜間訪問》東京国立近代美術館蔵 岡上淑子 © Okanoue Toshiko

高知県出身ということで、今回の『岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟』の前に、2018年には高知県立美術館で『岡上淑子コラージュ展―はるかな旅』が開催。

実はそれまで岡上淑子の作品を見たことがなかった、ワタシ。たまたま展覧会の関連ツイッターで岡上淑子の作品を拝見して、ファンタジーをリアルな世界に持ち込んだようなダークな世界観に惹かれました。

ちなみにその時見たのが、『岡上淑子コラージュ展―はるかな旅』のメイン作品にもなっていた《招待》です。美女の手を優しく掴む男性の頭部が恐竜(?)にすげ替えられており、その姿がどうにもペストマスクを連想させて、マスク好きのワタシの心をつよく捉えたのです。

岡上淑子《招待》1955 年 © Okanoue Toshiko, Invitation 高知県立美術館所蔵

不穏でダークな世界観と素晴らしいファッションセンス

彼女の作品には、女性、というよりも、ドレス姿の女性のカラダが数多く出現します。ゆるやかに揺れる華やかなドレスとは対照的に、人間味を感じさせない登場人物たちの存在。

変哲もなく見える風景の中で、それらの対比が突如として不気味さや不穏さといった感情を呼び込んでくるかのようです。

小難しい感じで言ってはみましたが、何を言いたかったかというと、女性を美しく見せるファッションと、その裏に隠されたドス黒い感情のようなものが、ドレスを通して描かれているのかなぁと、感じました(結局ただの感想か)。

それと彼女の作品を見ていると、「何を伝えたかったのか」とか、「どんなことを表現しているのだろう」とかを考えるよりも、ただただ「このドレスかわいい」と思ってしまうことが多かった。

ひときわ目を惹くドレスたちは、ダークな世界観にあっても、それを引き立て役にしてしまうほど、美しいデザインのものばかり。フォトコラージュの才能はもちろん、美的センスが優れている岡上淑子だからこそ、現在世界中で注目を集めているのかもしれません。

森の中に佇む洋館と岡上淑子

また一般的な美術館ではなく、東京都庭園美術館での開催ということも、個人的には満足。アール・デコの精華を取り入れた旧朝香邸と岡上淑子の作品がマッチしていて、優雅な世界観に浸れました。

ただ個人的には、展覧会は第2部が展示されている”新館”から見れば良かったというのが、残念ポイント……。

第1部は岡上淑子の生い立ち、フォトコラージュ制作を辞めた後の写真作品など、作品作りの背景を知れる内容です。対して第2部は、大きな展示室いっぱいに岡上淑子のフォトコラージュ作品が並べられているシンプルなスタイルになっていました。

あまり岡上淑子の作品知らないワタシからすると、作品を見た後に、ゆっくりと背景を知りたかったなぁという感じです。

でも公式のHPで取り上げられているような主要な作品群は第1部に飾られているので、有名どころから見たいという方は、順番通り第1部から見るのがいいのかも。

まぁどっちから見ても、岡上淑子のセンスを感じられる内容になっているので、さしたる問題じゃありませんけどね。


ただ私は、コラージュが其の冷静な解釈の影に、幾分の嘲笑をこめた歌としてではなく、この偶然の拘束のうえに、意志の象を拓くことを願うのです。——岡上淑子


東京都庭園美術館
『岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟』
2019年1月26日(土)〜4月7日(日)

高知県立美術館
『岡上淑子コラージュ展―はるかな旅』
2018年01月20日[土] - 2018年03月25日[日]



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