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壊れた空気清浄機からの解放

数ヶ月前から空気清浄機の調子がおかしかった。目を離すとすぐに「E7」と表示されるようになった。調べると「何かが外れていませんか?」というエラーで、後ろのパーツをガチャンと嵌め直すと一時的に直った。でもまたすぐに、一時間くらい経つと同じエラーが出る。朝起きると必ずそのエラーが表示されているのがストレスで、電源を切った。

その空気清浄機は、大きくて高性能で話しかけてくるタイプだった。久々にちょっと電源入れてみるかとボタンを押すと、「24時間つけっぱなしでいいんですよ」と言われた。前までは、家に帰ると「おかえりなさい!」夜寝る前には「今日も一日おつかれさま!」と話しかけてくるのが嬉しかったのに、壊れていることに目をつぶっているときに話しかけられるのは、お前は今の状況わかってないだろと思ってしまってダメだ。うるさい。

保証書を探すけど見当たらない。まだ一年未満だから保証書があれば無料修理してくれる。でも保証書が無いと1〜2万かかるらしい。元々これは去年の誕生日に元カレがプレゼントしてくれたものだった。重い腰をあげて、ずっと連絡をとってなかった元カレに、空気清浄機が壊れたことと保証書を持っていないか確認の連絡をした。優しいけど他人行儀な口調で返信がきて、結局何も解決しなかった。彼が勤めてる会社で社割をきかせて買ったものだから何か調べられないかと聞いてみて、かけあってみてくれたらしいけど、それも無理だった。
あのときは嬉しかったけど、今となってはなんでこんなに大きなものを....しかも一年以内に壊れてるし...と少しだけ恨みつらみの感情が入り混じってしまう。どれだけ大きいかというと、狭い1Kの家に会社の印刷機くらいのインパクトがある。電源を切ったままの大きな白い箱がキッチンに放置されていることにどこか罪悪感をもちつつ、目をつぶっていた。

Xで、「ジモティーなら壊れてるものでも何でも売れる、どこまでなら行けるのか限界チャレンジしたくなる」というポストを見かけたことを思い出す。
もしかして壊れた空気清浄機も売れるのでは?と思い立って、ジモティーのアプリをインストールした。
ジモティーのUIは正直めちゃくちゃ見づらく、メルカリに慣れている私からすると、どれが出品中でどれが売却済みなのか分からなすぎる。メルカリに出品するときは、まず同じような商品を検索していくらで売れているか把握して....と段階を踏むけど、それすらよくわからないくらい見づらい。広告もめちゃくちゃ多い。ジモティーは直接会って現金手渡しでやり取りすると仲介手数料も何も取られないので、まあ広告を増やすしかないのには頷けるけど....。
もう相場も売れ筋もよく分からないまま、空気清浄機の写真を適当に3枚パシャパシャ撮って、品番と使用期間と「頻繁にE7エラーが出るので破格で出品します」と書いて、3000円で出品してみた。あと「〇〇(ほぼ住所)付近まで取りに来ていただきます」も加えた。さすがに運べる重さじゃない。

すぐにメッセージが届いた。希望価格1000円と書いてある。まあ粗大ゴミで捨てるとお金かかるんだから1000円でもいいのかなぁと思ったけど、少しでも得したい気持ちが顔を出して「2000円でいかがでしょうか?」と返信する。「1000円だとありがたいです、、😭」とかえってくる。プロフィールを見ると、2児のママらしい。ほう、どうしようか。一旦返信を保留にした。
そのあとすぐに別のメッセージが届いた。すごく端的に分かりやすい内容だった。

初めまして、こちら購入希望です。
この三連休ですと、下記の日時でお伺いすることが可能です。
4/27 ○:○○-○:○○
4/28 ○:○○-○:○○
4/29 ○:○○-○:○○

すぐに手放せるならその方がありがたいし、もうこの人にしようと決めて、「今日の〇時はどうですか?」と返信して、すんなり売却が決まった。
どんな人が来るか分からないのでやっぱり怖さはあって、家の前ではなく近くの公園を指定したり、その人のプロフィールや評価を熟読した。あとは約束の時間を待つだけだった。

話は少し変わって、私はたいてい連休初日に体調を崩す。連休前はかけこみで仕事がすこし忙しくなり、それを駆け抜けた解放感で一気に頭痛が襲ってくる。わたしは片頭痛と診断されてるけど、緊張型頭痛にも限りなく近い症状がよく出る。だから連休初日は、頭が痛いから寝ようとか、お酒を飲んだから水をがぶ飲みしたいとか、そういう身体の欲にひたすら従って生きるのが正解だと分かってきた。用事があって渋谷に来ていたので、せっかくならお気に入りのカフェに行って読書でもしようかなと思っていたけど、じわじわ頭が痛くなってきて、あっこれだめなやつだ重いやつだと気づいてすぐ帰路についた。帰りの電車でジモティーのやりとりを終えて、家に着いたら途中で買った銀だこを食べてからすぐに寝た。

はっと目を覚ますと14:05だった。やばいやばい、14:00に公園で待ち合わせている。すぐにジモティーを開いて「遅くなり申し訳ありません、今向かいます!」と連絡をする。
空気清浄機はすぐに運び出せる状態にしておいて良かった。でもいざ持ってみると、重っ。ほぼ部屋着でデカい白い物体を両手で持って道を歩く。地面に置かない方が良いよねと思ってたけど、信号待ちも両手に持ち続けるのはどうしても無理だった。
「赤いキャップをかぶっています」と連絡がきていたけど、公園に着いても見当たらない。え、あれ?もしかして?とマップを開くと、私がここだと思っていた公園と違う名前の公園を指定してしまっていた....何してんだ私。「本当にすみません」と前置きして公園の名前を伝えた。
赤いキャップの人は、すぐに車で私がいる公園に来てくれた。さらば青春の光マネージャーのヤマネさんみたいな人で、大きなボックスカーには小さな子どもも一緒に乗っていた。安心した。「あ、じゃあこれ3千円ですー。」とすぐに現金を渡してくれた。このあとはどうすれば?と思っていたら、あっもう大丈夫ですよという表情でせっせと空気清浄機を車に積んでブーンと去っていった。ヤマネさん(偽)はあの空気清浄機を直せるんだろうか。慣れている感じだったから、ジモティーで不良品を安く手に入れて全部自分で直しているんだろうか。説明書とか他の部品の有無とか何も聞いてこなかったあたりに頼もしさを感じる。いや、もしかして、不良品であることを隠して転売しまくってるとか?ヤマネさん(偽)が、あの壊れた空気清浄機を3千円で買ってどういう使い方をするのか気になるけど、もう知る由もない。

嬉しくて撮った

実はヤマネさんとやりとりしている最中にも8〜9人からメッセージが来ていた。なかには値上げ交渉(!)をしてくる強者もいて驚いた。メルカリでは値下げ交渉されてばかりだから、ジモティーの異質さが面白かった。
ジモティーで成功体験を得てしまった私は、次に何を出品するか家を見渡している。パンクしてから一年乗ってない自転車かな。

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