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クーポン支配

スマホにいれているドラッグストアアプリには、割引クーポンがよく配信される。今回は決算ということで「1品だけ20%オフ」クーポンがきた。よく見かけるのは「1品だけ15%オフ」なので、この5%上乗せは珍しい。ここのクーポンは合計金額2000円以上といった購入金額条件もないから割と使いやすく、実際ちょっとした買い物にもよく使っている。今回はひとつ、なにか高額品を買おうかと思案して、運動時脂肪を燃やすというスポーツ飲料パウダーを買いに行くことにした。

夕方お店に行ったところ、レジには行列ができていていた。5人まちだろうか。「1品だけ20%オフ」クーポンの威力なのか、近所のスーパーついでなのか、いつもより並んでいる。スポーツ飲料売り場に行くと、前に見たより明らかに棚がスカスカだったが、私が欲しい商品はなんとか一箱残っていた。みんな、買いに来ているんだ。「1品だけ20%オフ」クーポンの威力を見た気がした。目的の商品をレジに持っていき、順番を待っていると、日焼け止めが目に入った。カウンセリング化粧品は割引対象外だけれど、日用品的な日焼け止めは割引対象だ。日が長くなってきたから、新しい日焼け止め買っておくのもいいなぁ、と思いつつ、最近クーポンでホイホイ買っているような気がするし、今回は「1品だけ20%オフ」で1商品のみ買うことにこだわろうと自分にいいきかせ、手に持つ商品を増やさずレジまで到達した。レジの子は、とてもか細い声の女の子で、表情はにこやかだったが、なにを話しているか聞き取れなかった。

次の日、何気にドラッグストアのアプリをみると、また「1品だけ20%」クーポンが配信されていた。ご丁寧に日付は今日限定と更新されている。昨日も昨日限定ってクーポンに書いてあったじゃないか。結局いつまでやるんだよ、この決算セール。だが、しかし、せっかく配信されたなら、あの日焼け止めを買おう。夕方、図書館の帰りにドラッグストアに寄ると、駐車場がほぼ満車で、店内はレジに行列ができていた。大きな声をした男性の店員さんがレジを仕切っている。「1品だけ20%オフ」クーポンの威力が依然継続中のようだ。目的の日焼け止めと、ついでに洗濯洗剤、この店は食品もあるから特売の冷凍チャーハンを2袋をカゴにいれてレジに並ぶ。レジに進むと、男性の店員さんは声は元気だが表情に疲れが見えた。スマホアプリの会員番号をスキャンし、「チラシクーポンはお持ちではないですか?」と確認があった。首を横に振り、アプリのクーポンを表示するため画面を切り替える。店員さんはレジの画面を見ながら「こちらの日焼け止めを20%オフさせていただきます。」といい、クーポンめがけてハンディを伸ばしたかと思うと、その手が途中で止まった。「会員番号のスキャン....。」店員さんは空虚な表情でぼんやり一点を見つめている。私が「さっきしてましたよ。」というと、「そうですね!」といって動き出し、会計を再開した。最後に3月に使えるクーポンがついたチラシをつけてくれた。

家に帰って新聞を整理していると、またこのドラッグストアのチラシがでてきた。「1品だけ15%オフ」クーポンがついている。どんだけ配っているんだ。この1品割引クーポンだと、来店を分け、1品だけ割引購入し続けることが可能だ。決算セール中、何回も行く人もいるだろう。このクーポンを捨てられない私も、また決算セールに行くかもしれない。そういえば、昨日行ったドラッグストアにいたレジの女の子、あの子は声が小さくてジェスチャーで動く人形みたいだったけど、お客さん対応をしすぎて、もうなにがなんだか分からない感じだったのかもしれない。店員さんもクーポンに支配されている。


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