見出し画像

一緒にジョギングするのは浮気か浮気じゃないか。

西川あやの・おいでよ!クリエイティ部 2023年1月10日放送回でこんなトークがありました。西川さんのことを掘り下げようというテーマです。
(青)ジャーナリスト 青木理さん
(西)文化放送 西川あやのアナウンサー(アラサー女子)

(青)こんな情報もあるんですよね。西川さんが以前お付き合いしていたボーイフレンドが、ジョギングに行ってくるといってどこかに行っちゃうのを、後から気づいたらこれは浮気だというのが分かったと。

(西)私はすごくご飯を食べることが好きなんです。だから、パートナーともご飯を食べに行ったりとか、お互いの家に遊びに行った時にもいっぱいご飯を作りたいんですよ。作りすぎてしまうんです。いっぱい食べる人も好きなんです。だから大体、私と付き合っていると太ると(相手から言われる)。
ダイエットしたいからジョギングしてくる、といった人がいて、あぁジョギングかぁと思っていたら、近場に住んでいる異性と一緒に走ってたんですよ。しかも私その時夜の勤務だったので、私は一緒にはいけないし。これは、私と一緒に蓄えた脂肪を、他の女と消費してたということになるんです。

(青)確かにそれは頭にくるよね。気持ちはわかる。でもその発想は僕にはなかった。浮気しているのも許せないし、出かけて行って他の女性とジョギングしているのも腹立たしいけど、「私が蓄えさせた脂肪を他の女と消費してるのか!」っていうのは僕の発想にはなかったから。
取材って、こうかな?と思ったことを訊いて、こうだな。っていう答えしか返ってこなかったら、本当の取材じゃないんですよ。だから今は本当、僕も学ばされたなって感じました。そっか、なるほどね。じゃぁボーイフレンドとはそれがきっかけで。

(西)そうですよ。それは充分別れる理由になりますでしょう。

(青)だってジョギングしてただけでしょう?

(西)いや、ジョギングしてたんじゃなくて、あたしと一緒に蓄えた脂肪を他の人と消費してたんですって。

(青)(笑)でもそれは西川さんの感情であって、一般的には、単にジョギングしてただけじゃないですか。

(西)えーそんな、友人と一緒にそんなことします?皇居ラン行ってるんじゃないんだから。ジョギング好きじゃないですよ、太ってるんだから。

(青)そうかなるほどな(笑)気持ちはわかるよ。許せなかったんだな。

****

青木さんが感心した西川さんの表現は、突っ込んで考えてみると興味深いです。それは文学的な隠喩を含んでいるから。
まず一聴して、それは本当に「ジョギング」なの?ラジオで喋る都合で、そのテイにしてるんじゃないの?という疑問が湧きましたが、会話の全体的な雰囲気から、ここは文字通りの解釈をしようと思いました。

次に、ボーイフレンドに下心があったのかなかったのか。その、一緒にジョギングに行ったという近所の女性とはどうやって知り合ったのか。たまたまジョギング中に出会って意気投合したのか。しかし夜に女性がジョギングするのであれば十分に警戒するはずで、余程でなければそこで仲良くなることは難しい気がします。でもこの放送回では、そうしたエビデンス探しに向かうことはありませんでしたし、それでよかったと思います。それはこの表現、

私と一緒に蓄えた脂肪を、他の女と消費してたということになるんです

ここに人間的な感情が余すところなく込められているから。青木さんも、「ジョギングしてただけでしょう?」と「それは程度問題ではないのか」との問いかけはしていますが、「いやそうじゃなくてこれは心の問題なのだな」と分かって言っているようです。

(余談)
男女の関係で、例えば女性側から見たときに「彼氏の胃袋を掴んだら勝ち」という考えがあります。『ジョゼと虎と魚たち』犬童一心監督・妻夫木聡/池脇千鶴主演の映画版を思い出します(上野樹里を知ったのもこの作品でした)。
一方、「他の女と消費」こちらは『800 TWO LAP RUNNERS』廣木隆一監督の1994年の青春映画、この感想を一言でいえば「スポーツをセックスのように、セックスをスポーツのように描いた」という、印象深い作品を思い起こしました。

西川さんのこのフレーズは本質を突いています。「彼氏と私・食事」「彼氏と他の女・ジョギング」ときて、その「ジョギング」が象徴するフィジカルな関係性も匂わせつつ、割り切れない気持ちを「脂肪」というワードで一つに纏める。このリリカルな表現はJ-POPの歌詞のヒントになるかもしれない、いやもう既にあいみょんあたりが歌ってるかも。