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待ち合わせ(短編小説25)

目が覚めて、ふと視線を窓の方へ向かわせると、カーテンの隙間から、家のすぐそばにあるバス停が見える。家の中は風が吹いているわけでもないのに、カーテンは僅かにゆらゆら揺れていて、まるで、今日、彼と会うために待ち合わせをする加奈の胸の鼓動がどんどんと激しいから、その波がカーテンに影響を与えてしまっているかのようだ。

「そんなわけないか」

そう独りごちて、加奈はゆっくり起き上がる。

午前10時、身支度を終え、待ち合わせ場所の山郷公園に向かう。天気が良くて、歩いているだけでも幸せな気分になれるのに、その上彼と会えるだなんて、なんて幸せな1日なんだろう、と思う。

待ち合わせの午前10時半。時間になったが、彼はやってこない。加奈は不安になって彼に電話をかける。

トゥルルルルル、トゥルルルルル、、、

「あ、もしもし、加奈?今、山郷公園にいるんだけど、まだきてない?」

あれ、彼ももう、ここにいるようだ。

「え?私ももうそこにいるよ。いつもの場所。」

「え?あ、そうなんだ、じゃあ間違えたのかもしれないね。俺、10年後の未来計画の仕事ばっかりしてるから、10年先の公園にいるのかもしれない。今戻るね。」

数秒後、突然景色がゆらっと揺れて、そこに彼が現れた。

「ごめんごめん、“時空間“ 間違えちゃった。」

そう笑う彼を、加奈はぼーっと眺める。

加奈はまだ、いくら未来のことを考えたって、時空間を移動することはない。でもそのうちみんな、意識のタイムマシーンに乗って、さまざまな年代の午前10時半の公園にアクセスするのだろうか。

「ねえ、そっちの公園は今、どんなんだった?」

「え?あ、うーん。そうだなあ。そういえば、ここよりもっと明るかったかもしれないな」

でも、今だってちゃんと、明るいけどね。と付け足す彼は、どんな未来計画を立てて、仕事しているのだろうか。

そういえば、今朝のカーテンの揺れも、誰かが時空間を移動していたからだったのだろうか。

頭の中にはてなマークがいっぱい浮かんでくる。なんにせよ、彼とまた会えたことが、当たり前ではない、奇跡に思えた。

おしまい

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