黄色いクジラー多次元多重短編小説ー

色んな次元と重なりからお話を書いています。1話完結型なのでカードを引くかのように、目に…

黄色いクジラー多次元多重短編小説ー

色んな次元と重なりからお話を書いています。1話完結型なのでカードを引くかのように、目についたタイトルをお好きに選んで、お好きな分量で、お楽しみください。

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HPー多次元多重世界ー

Just be with love 〜ただ愛とともに〜 はじめまして、黄色いクジラといいます。 愛とは何か? 敬意を込めてわからないまま (形として断定しないまま) 祈ることで 愛と繋がる日々を過ごしています。 わからないまま委ねる、 愛(神)に任せる それは自我にとって (思考や感情や身体にとって) とても怖いときもあります。 つい自分で頑張っちゃったり。 それでも、祈ることで少しずつ、 愛は怖くないんだ ちゃんと導かれているんだ ということを受け取り始めています

    • 面接(短編小説31)

      千夏が席に座ると、面接官たちは書類から目をあげて千夏を見た。 よく晴れた日の午後。無機質な面接室の窓から流れる風がカーテンを爽やかに揺らす。 「えー、それでは面接を始めたいと思います。横田千夏さん、ですね。横田さんはなぜ、当校に入学しようと思われたのか、教えていただいてもいいですか?」 千夏は今、音楽スクールの入学面接を受けている。「なぜ」と問われているけれど、千夏にとって頭でわかる範囲の理由なんて、たいしたことではなかった。 「面白そうだと思ったからです」 面接官

      • 爽やかなテレビ(短編小説30)

        かなこがSNSを見ていると「自分で自分を大切にする」とか「手放す」「癒す」とか、何やらアグレッシブなワードがたくさん並んでいるのを見る。 かなこも数年前まではそういった概念が興味深くて、色々学んでいたし、実践もしていたけれど、いくらやっても、どうしても手放せないものも、どうしても癒せないものもあったから、最近はなんだか、気疲れしていた。 ふとテレビをつけてみると、綺麗な女優さんがインタビューを受けていた。自分らしさってなんだと思いますか?といった内容で、人前でふらっと聞か

        • ずっとずっと(短編小説29)

          ニコニコと笑いながら、ガチャガチャとお茶碗を洗う息子を眺めながら、母親の愛美は何がそんなに楽しいんだろう?と思っていた。 愛美は毎日、洗濯や掃除、料理にこの茶碗洗いにと日々のルーティンに追われているので、いつもと変わらないこの単純作業は、苦痛とも感じかねないもの。だから、息子がこんなにも楽しそうにお茶碗を洗う様子が新鮮だった。 「ママー、何考えてるのー?」 気づけばこちらをチラチラと伺っている息子がいる。あんなにも茶碗洗いに夢中なようでいて、母親のことはしっかりとみてい

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          風が強い日(短編小説28)

          端が何気なく携帯を触っていると、視界の端にはいつも、広告や宣伝の情報が目に入る。その他には、事件や犯罪、告発のニュースもたくさん流れてくる。その勢いは止まることなく、日々加速している。 いままで抑圧、隠蔽されてきた情報たちが一斉に溢れ出すかように、のびのびとし、封じ込められてきたエネルギーたちが、躍動しているようにも感じて、瑞はそれが少し嬉しかった。 だけども、せっかく溢れ出てきたものを、社会では、正義の名のもとに叩いたり、裁いたりしがちで、またそれらのエネルギーを封じ込

          やばー(短編小説27)

          「ねー、もし今すぐさー世界が超平和になってさ、お金もなくなってさ、必要なものを分かち合いながら生きれたら、やばくね?」 「え、なにそれやばー」 「超平和ー」 コンビニの前でギャルたちが会話している。 「でもー、なんかそれ、暇じゃね?」 「あー、確かにぃ。お金稼ぐのとか、超かったるいけど、自分で働いた分をお金で手にしたとき、嬉しいしねー」 「え、なにそれやばー。超いい子じゃんうちら」 「え、基準どこよ?」 「え、細かいことはよくね?それともいい子イヤなわけ?」

          無意識の解放(短編小説26)

          ーおれは占いとか、信じないー 街角で誕生日占いのセッションとやらを受けながら、直志は心の中で思っていた。でも、彼女がどうしてもそのセッションを受けたい、そして、自分らのカップルの相性を見たいと言うものだから、仕方なく隣に座って、ついでに占われていたのだった。 占い師によると、おれと彼女の相性はそんなに悪くないらしい。でも、相性なんて、いくらでも自分たち次第で築いていけるものだから、別れるカップルに足らないのは相性ではなくて、お互いをただ、みる。なんの先入観も持たずに、みる

          無意識の解放(短編小説26)

          待ち合わせ(短編小説25)

          目が覚めて、ふと視線を窓の方へ向かわせると、カーテンの隙間から、家のすぐそばにあるバス停が見える。家の中は風が吹いているわけでもないのに、カーテンは僅かにゆらゆら揺れていて、まるで、今日、彼と会うために待ち合わせをする加奈の胸の鼓動がどんどんと激しいから、その波がカーテンに影響を与えてしまっているかのようだ。 「そんなわけないか」 そう独りごちて、加奈はゆっくり起き上がる。 午前10時、身支度を終え、待ち合わせ場所の山郷公園に向かう。天気が良くて、歩いているだけでも幸せ

          かくかくしかじか(短編小説24)

          「それは大変でしたね」 一通り話を聞いたその人は、眉を下げて、いかにも、と言う顔をしながらそういった。 綾は、数ヶ月前から心の調子が悪くて、心療内科にきていた。1時間ほど待たされた後、先生に、何か困ったことでもあるのか、どんな症状があるのか、などインタビューをされる。 そして 「それは大変でしたね」 そう言われたのだ。 「今日は雨ですね」と同じくらいのエネルギー量で放たれたその言葉を、綾はどう受け止めていいかわからなかった。仮に、今日は雨ですね、と言われたとしたら

          かくかくしかじか(短編小説24)

          電車、自転車、走る、歩く(短編小説23)

          電車が走る。その横の道を中学生の女の子が全力疾走していく。その隣でおじちゃんが自転車に乗って進んでいる。そしてその隣ではるかは歩いていた。 電車、自転車、走る、歩く。この順番で早く進むはずだ、という思い込み虚しく、電車の次に女の子が颯爽と自転車のおじいちゃんとはるかを追い越していく。さらに、はるかは、自転車のおじいちゃんを徒歩で追い越してしまっている。 この狭い空間の中で今、いろんな人のスピードが交差している。早い、遅いってなんだっけ?とはるかは思う。こんなにも個体によっ

          電車、自転車、走る、歩く(短編小説23)

          メッセージ(短編小説22)

          春と娘の真奈美と、息子の隆が3人そろってテレビを見ているとき ピロロロン♪と音が鳴って画面の上の方に一報が入った。 「歌手のアイさんが、暴行の容疑で逮捕されました」 春は一気に、テレビ番組の内容が目に入らなくなり、しばらくフリーズする。こどもたちはそんなことはなく、相変わらずテレビの内容に熱中している。 歌手のアイさん。 彼女といえば、春が生まれるちょっとまえからシンガーソングライターとして活躍していて、今も世代を超えて多くの人にその歌声とメッセージが届いている超有名な

          メッセージ(短編小説22)

          宇宙共通語(短編小説21)

          e,,,o,,aia,,,, eo,aia,,,, aiaeo 耳を澄ませれば、聞こえるはずのない母音が世界中に響いていて、 葵は、聴覚とはまた別の知覚を使い、聞こえない音を聴いていた。 人は、何かの話し声、特に、言葉が聞こえないときは「無音」だと思い込みやすい。だが実際はしーんとしてるときも、いろんな音が鳴っている。 aiaeo 母音で聞こえるその音は「あいあえお」だ。通常なら母音は「あいうえお」だから、「う」が「あ」になっている。いったいこれは何なのか、葵には

          錯覚(短編小説20)

          マイナンバーカードの手続きをしに、綾が区役所に向かう道中。ふと、空を見上げると、うっすらと月が出ていて、綾はなんとなくその月を見上げながら歩いていた。綾は歩いていて、確実に区役所に向かって進んでいるのに、あのお月様はじーっとあの位置にいて変わらないように綾には見えている。 綾は、なんとなく、有名なモナリザの絵を思い出す。モナリザはどの角度から見ても目が合うことで有名だけど、数年前に、それは思い込みで、実際のところそうではない、という実験結果が出たらしい。 ということはあの

          アップデート(短編小説19)

          誠がふとiPadの端末を見ると、画面上に「iOSが今夜アップデートされる予定です」と書かれていた。 それはつまり、同じ端末だとしても、画面表示や機能が一方的に改善されることを意味していた。それは日々、いろいろなプラットフォームで、さりげなく繰り返されていることで、例えば、SNSの機能や管理画面も、度々デザインが変更されるように、誠たち人間は、意外と、「自分のもの」と思っているものを、自分以外の人にコントロールされている。 そういった意味で、自分のもの、などこの世には一つも

          アップデート(短編小説19)

          春の香り(短編小説18)

          「今日はもう手袋がいらないくらい暖かいですね」 照は、雪が溶けきらない2月の下旬に、暖かな日差しを浴びながら、ひとりでにそう呟いて、マスクを少し口から下げる。すると春の香りがして、あら?いつもなら、手袋より香りの方が先に春を感じさせてくれていたかしら?どっちだったかしら?なんて、記憶を振り返る。 そうこうしているうちに照は、あら?自分は今、何でお外にいるのかしら?と思う。わからなくなって携帯を確認すると「14時にバスに乗る」と書いてある。ああそうだったわ、バスに乗るためよ

          自由ないのち(短編小説17)

          世界の粒が、少し前からさらに細かくなっていた。 佐江は手をグーパーグーパーしながら自分の手のひらを感じる。 でも、今までのように思考、感情、感覚といった物質を、手のひらで掴もうとしても、指の間からこぼれ落ちいていく粒の量が圧倒的に多くて、結果として残るのはいつも「空っぽ」という感覚だった。 そのうち佐江は、自分の手のひらさえ、この空間に消えて溶け込み、 自分が空間になっていくかのような感覚に陥る。一昔前なら、こんな感覚、 マニアックな哲学者か、修行者か、探究者くらいしか知

          自由ないのち(短編小説17)