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英国放浪記(散策編その2アビーロードへ)

イギリスに滞在して3日目の朝、私はホテルのレストランで朝食を摂っていた。イギリスは食事が…という話をよく耳にするが、私はそうは思わなかった。たしかに、日本では見ないような食材を使った料理(豚の血を使ったプディングなど)や塩味の揚げ物などが多い気もするが、文化の違いはお互い様である。私はハッシュドポテトを3回もおかわりしてしまった。

そして足早にホテルを出て地下鉄に乗り込むと、イギリスで1番の行きたかった場所へと向かった。ビートルズ好きで知らない人はいない、アビーロードだ。
ここの横断歩道をビートルズの4人が渡っているジャケット写真はあまりにも有名になった。世界中からファンが訪れ、同じポーズを取って写真を撮影するという。そのため、交通の妨げになり、近隣住民からは苦情の声が寄せられているという。添乗員さんからは無理な写真撮影をしないよう注意を受けた。

セント ジョンズ ウッド駅に降り立ち、階段を上っていくと、あの4人の写真があちらこちらに貼られていた。地上が近づくに連れて、私の鼓動も早まった。いよいよ、彼らが歩いた場所に行くことができるのだ…。
地上をに出て、少し歩き、角を曲がると現れた。
せわしなく車が行き交うその道は、一見するとただの横断歩道だ。しかし、あのジャケット写真とほとんど変わらぬ様子で存在していた。


アビーロードの有名な横断歩道 朝は車通りが多い


信号が切り替わり、横断歩道を渡ってみた。わずか数歩の旅路ではあるが、まるでビートルズと一緒に歩いているような気持ちになりフワフワとした足取りになってしまった。頭の片隅でジョンとジョージの談笑を聞いた気がした。
そして、ふとレンガの塀の少し上に目をやると白い上品な佇まいの建物がそこにあった。

アビーロードスタジオ 訪れた方々のメッセージ?が多い


アビーロードスタジオ。ビートルズやピンク・フロイドなど世界の名だたるミュージシャンの楽曲や映画音楽が生まれた場所だ。今日の目的の2つ目はここを見ることであった。ビートルズの楽曲の多くはここで生まれた。一体彼らは、どのようにあの素晴らしい楽曲を作り上げていったのだろう。当時の設備がすっかりと撤去され、ガランとした様子の窓を見つめながら思った。
しばらくスタジオを眺めたあと、アビーロードを散歩してみることにした。すると不思議だ。歩くのに合わせてまるでビートルズの楽曲が聞こえてくるようだ。初めはゆっくりな「フール・オン・ザ・ヒル」ちょっとスキップすると「ペニー・レイン」、少し走ってみると「レディ・マドンナ」といった具合だ。
私に彼らのような曲が同じように作れたとは思わないが、この街の息遣い自体がビートルズと分かちがたく結びついている気がした。街並みや風の通り抜ける音、木々のざわめきやコンクリートの上の乾いた足音。それらを彼らも感じ取ったに違いない。
激動の時代を駆け抜けた当時の彼らにほんの少し、会えた気がした。


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