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地中海へもう一度

旅行好き同士。写真好き同士。それから、マイペース同士。
祖母とは、よく旅行をした。
海外には3回。国内へは、数え切れないほど。時々母も一緒に、北は青森で紅葉狩り。南は沖縄を縦断して連日ブルーシールのアイス。今でも私は祖母を、最高の旅行仲間だと思っている。

その中でも、一緒に行ったスペインは特に印象的だった。私にとっては初めて足を踏み入れたヨーロッパの国。大聖堂、城壁、何もかもに圧倒された。写真や映像でしか見たことのなかった景色が目の前に広がっている、夢のような状況に終始感動していた。
ここ数年は、海外に行き辛い情勢になってしまって、祖母も80代半ば。もう海外へ一緒に行くのは難しいかもしれない。そんな時に選んだ旅先は、志摩地中海村だった。
以前、友人に写真を見せてもらってから1度は宿泊してみたいと思っていた。スペイン旅行の際に、行けなかったミハスなどの空気も感じられそう。
祖母は、旅行に誘うといつも「まあ行ってもいいけど…」とわざとに気乗りしなそうな返事をするのだが、この時ばかりは少し嬉しそうだった。
私達は、京都駅で待ち合わせをして、のんびり電車で志摩を訪れた。


青空に映える白

地中海村の敷地に入るなり、異国の街並みが広がっていた。青空に白の壁が映えている。「ね、一緒に行ったスペインを思い出すでしょう」と歩いているだけで心が躍り、自然と笑顔になる。この建物は、すべてが客室となっている。私たちの部屋からは海が見えた。


心踊り、心洗われる街並み。

夜には、ロゼのシャンパンで乾杯をした。ここに来れてよかったという気持ちと、また旅行に行こうねという気持ちで。
美味しい料理に満足した後は、アルハンブラ宮殿を模した天然温泉で日々の疲れを癒したり、ナイトクルーズで島の周辺を散策したり、夜も夜でこの空間を余すことなく楽しめた。


バラのデザインと、「Sea」のデザイン。

次の日には、小さなプールへ行った。祖母は最後まで「嫌だ、入らん」とゴネていたけれど、しっかり水着は持ってきていたし、いざ入ってみたら「せっかく入ったんやから、もうちょっと居よう」といつもの調子だった。
施設内の工房で、モザイクタイルを思い思いに並べてアクセサリーボックスを作った。お手本を手元に置いて、そのままを几帳面に配置する祖母。作りながら構想を練る私。


祖母が、この日をことを今も覚えているかはわからない。けれど、また一緒に海外に行きたいという願望を少しでも満たすことができたし、何より2人ともがとても喜んでいた。「外国で撮ったみたいな写真が撮れた」と祖母はすぐに写真を現像して、嬉しそうに分厚いアルバムに貼っていた。
今度一緒に行く旅先がどこになるか、まだ計画はしていない。2人の大好きな京都を平日にゆったり歩いてみるのもいいし、お弁当を持って近場にピクニックというのもいいなと思っている。

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