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福岡から遠く離れたこの街で、待ちに待った瞬間を迎えた日

ずっと、ずっと待っていた。
シーズンが始まった3月から、今に至るまで。

ずっと、ずっとこの日を夢見ていた。
途中、「もう今シーズンは見られないのかな……」と悲しい気持ちになっては「いや、まだ分かんないよね」と首を横に振り続けた。

気持ちだけではどうにもならない悔しさは、私も知っている。だからこそ、懸命にバットを振ってもフライに倒れる彼の打球を見ては、「悔しかねー、拓也ぁー」と呟きながら試合の行方を見守っていた。

「拓也ぁー」こと、甲斐拓也選手は福岡ソフトバンクホークスの正捕手であり、私のスーパースターだ。

そんな私のスーパースター、今シーズンすこぶる調子が悪い……。昨日時点で打率は.182。そしてホームラン数は0。「悔しかー」と呟いてみるのだけれど、やっぱり一番悔しいのは拓也本人だろう。

昨日はダイエー時代から活躍していた明石健志選手の引退試合だった。彼は代打で出た場面でヒットを放ち、涙ながらに現役生活を終えたそうだ。

私はリアルタイムで見届けることが出来なかったので、時間が経ってから試合のハイライトと”あの場面”を再現した動画を見たのだが、「バク宙にーさん頑張れー!」と応援していた去年の今頃が最早懐かしい。

そういえばハセさんの引退試合で、拓也はホームランを放った。それも去年のことなんだなー、と思うと鼻の奥がツンとなった。



そして今日、拓也がホームランを打った。今年初めてのホームラン。しかも3ラン。(しかも試合は10対0で圧勝だった!)

テレビ中継でも、現地観戦でもなく、出先から帰ってすぐに小さな携帯の画面で知ったそれに、私は安堵やら嬉しさやらを噛みしめて「拓也が打ったー!」とハイジばりに叫んだ。

冷静に見ると、2位とのゲーム差は0.5しかないのでまだ油断は出来ない。……が、やっぱり好きな選手が輝く瞬間は、何物にも代えがたいくらいに嬉しいものだ。

ずっと、ずーーーっと待っていたのだ。

試合終了後に見た公式の動画で、拓也はレフト方向にホームランを放った。ダイヤモンドを駆け巡りホームインする頃には、ギータたちも笑顔で喜んでいた。私はそれを見て泣きそうになった。

おごることなく、謙虚な姿勢を貫く拓也に胸がじぃぃんとなり、千ちゃんとマッキーと共に練り歩く姿に目がしょぼしょぼになり、「尊い……」と呟き鼻をすすった。

嬉しそうにはにかむ拓也の笑顔は、キラッキラに輝いていた。ずっと見たかった彼の姿に、「もうまじで色々頑張ろう」と生命力がふつふつとみなぎるもんだから、甲斐拓也という人は本当にすごい。

もちろん願いは「リーグ優勝!」「日本一!」なのだが、私の大好きなスーパースターには、これからも不調に負けず、ケガをせず、長い野球人生を送ってもらいたい。

余談だが、親友のユカ(仮名)は今日、友人らとノリで福岡へと出向き、ホークスの試合を見に行ったそうだ。そんな日に拓也がホームランを放った。球場で飲んだビールはさぞ美味しかったことだろう。羨ましいような、嬉しいような。



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