激推し本2021

 気が付いたら2021年も日曜日をあと二回(そのうちの一回は明日らしい)迎えたらいよいよ終わりである。多分どれだけあがいてもこの事実はひっくり返りそうもないので大人しく年の瀬に向けての心の準備をしていかねばならないなと若干寒い部屋の中でパソコンの画面に向かい合っている。

 今年を振り返ろうかなと思ったときに、思い出されるのは卒論だとか就活のことばかりで、振り返るほどのことでもなく、じゃあどうすりゃいいんだとツイートを振り返ったらお酒の写真か本の写真が七割を占めていてせっかくならば今年読んだ中で印象深いものを振り返ろうではないか。

 先ずは荻上チキさん、ヨシタケシンスケさんの共著『みらいめがね』『みらいめがね②』。これは以前noteにも書いた。

 この記事を書いた後今現在も、私は自分を卑下せずに生活できている。かといって大仰に褒めることもないのだが、その生活は案外心地良いし、最近は面白いコンテンツがたくさん出てきてそれを純粋に楽しめている。        最近、私よりも若い方々が、現実に耐えきれなくなっている呟きをよく見かけるのだが、何となく視界が自身に向きすぎている気がしている。大人になったら嫌でも周囲に目を向けざるを得なくて、しかもそれは良いことよりも圧倒的に良くないことの方が多いだろう。色々吸収できるのは若者である今のうちだけだと私は思う。その期間を自身の方ばかり向いて使わないのは勿体ないのだ。だからこの本は、時々息苦しくなっている彼らに届けたい。

 2冊目は町田そのこ先生の『星を掬う』。彼女の著書であり、今年の本屋大賞受賞作『52ヘルツのクジラたち』の感想も記事にした。

 『星を掬う』を読んだ後も、私はしばらく空気に溺れていた。読んでいる途中で感じた苦しさ故かもしれないし、世界観そのもの故かもしれない。しかし溺れてよかったと思う。すべての音が遠くなるような、めったにできない経験を、2作品を通してできたのだ。

 3冊目ははらだ有紗さんの『ダメじゃないんじゃないんじゃない』だ。『みらいめがね』『みらいめがね②』で視界が一気に開けた後の私を更に強固なものにしてくれたのがこの一冊なのだ。本来ならば「ダメ」と思われがちなことを「そうじゃなくない?」と言ってくれる。その一言で、だいぶ心が軽くなる。最高の一冊である。

 最後2冊は、上間陽子さんの『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』と『海をあげる』である。この2冊は、絶対読むべき、今年中に本屋へ急げ案件の本である。

 押しつけになりやしないかと、書名と作者名は載せているので記事を読んだ方が興味を持ったら自らググって購入したり借りたりしてくれればいいと、アマゾンのリンクを貼ることを避けていたのだけれど、この2冊だけは押しつけになることを私は厭わない。

 テレビやネットで目にする沖縄は、凄く美しい。しかし一方で米軍基地の問題もニュースでよく見かける。沖縄から遠く離れている場所に住んでいる私達は、知ろうと思っても、それ以上の奥深いところまで中々たどり着けない。何故ならそれは私たちが「第三者」だから。言い方は良くないが、所詮他人事なのである。そんなもんだと思う。私も読むまで沖縄の風俗では私と同い年くらいの女の子たちが生きるために働き、そして彼女たちの中には子供を育てている女の子もいるのだということを、知らなかったのだ。

 しかし、上間さんによるこの2冊を読んだ今、夜に働き朝を待つ沖縄の女の子たちのことや、土砂や絶望が織り込まれた海、そして上間さん自身が取材や調査を通して抱えてきたものを、私を含め本を読んだ人が受け取らなければならない。これは個人が抱える大きさのものではない。具体的にどうしたらいいのか、未熟な私にはわからないことだらけだが、この記事を読んだ方々に「どうかあなたもこの海を、上間さんから、沖縄から、もらってください」とお願いすることはできる。そして本を読んだあなたは、また別の誰かにこの2冊をどんな形でもいいから勧めてくれたらいいなと思う。

 

知識をつけたり心を豊かにするために使います。家族に美味しいもの買って帰省するためにも使います。