見出し画像

エレベータから降りる時

 そう言えば、数日前にゴミを捨てるために、21時過ぎくらいにエレベータで一階フロアに降りた時のことである。

 「もう誰にも会わないかな、遅い時間だし」と思いながら、部屋着のフリースのまま、不織布のマスクをつけてゴミ捨てに向かった。私が住んでいるマンションの1Fのエレベータホールには3台あるエレベータごとに内部を映し出すモニターが付いていて、空で降りてきているのか、誰か乗っているのかが確認できるようになっている。もちろん、誰かが乗っていたら、降りて出るのを妨げないようにドアの正面を避けてエレベータを待っているのが普通だ。

 この日もいつものようにゴミ袋を一つ抱えてエレベータに乗り込んだ。途中で乗り込んでくる人は誰もいない。大体20時を過ぎるとあまりエレベータで他の部屋の人と出会うことは少ない。

 エレベータは無事1Fに着いてドアが静かに開いた。私はゴミを持って出ようかなと思ったら、中学生か高校生くらいの女子がいきなりエレベータの中に入ってこようとした。その時、その子は私がエレベータの中にいることに気づき、オバケでも見たかのように、エレベータのドアの前で、「わーっびっくりしたー」と叫んで何回も何回も垂直にぴょんぴょんと飛び跳ねていた。よほど驚いたのだろうとは思ったが、よく考えてみれば、驚くのは私の方ではないか。

 その時に、どうやらその子はご両親と一緒にエレベータを待っていたようで、しきりにお母さんが「申し訳ありません」と私に謝ってきた。ちょっと罰がわるかったので、私は軽く会釈をしてゴミ置き場に向かったが、本来ならその女の子が「ごめんなさい」というべきだなと後から思った出来事だった。

 女の子の何度も何度も飛び跳ねていた姿がトランポリンにでも乗っているかのように面白かったので、良しとしよう。思い出しても笑ってしまう。


☆ ☆ ☆
いつも読んでいただきありがとうございます。
「てりは」のnoteへ初めての方は、以下もどうぞ。

#エレベータ #出会い頭 #ゴミ捨て #日常 #エッセイ



この記事が参加している募集

スキしてみて

よろしければサポートをお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。