ほんとうのきもち
ほんとうのきもち
なんてのは存在しないんだ。
僕らは流れ移りゆく渓流のごとく、
その水のアウトラインは維持されているようで
刻一刻とその内実を変えていく。
雨の日の僕らと
晴れの日の僕らは違う
出会った時の僕らと
サヨナラの時の僕らは違う
ほんとうのきもち
なんてものは、
渓流の流れを
この小さな手で堰き止められないように
指と指の隙間を美しく流れ去る流体だ。
すべて幻想だろうか?
すべてがいつわりのきもち、だろうか?
それもまた違う。
その流れは掴めないけれどたしかに存在して
しっかりと、はっきりと、
僕らの手を擦り抜けていく。
僕らにできるのは、
指の隙間を撫でてすり抜けるひんやりとした清流を
ただ目を閉じて感じることだけだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?