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忘れられぬ夜、というもの

僕は恋という気持ちを失って数年が経った
20代後半という時を、今生きているけれど、

恋という”新しさへの希望”から長らく離れた今になってまさか、
度々思い起こし忘れられぬ夜を過ごすことになるとは、思ってもいなかった。


しかしながら、忘れられぬ夜というのは
人生に飽き始めた今だからこそ訪れるものなのかもしれない。

「こんなものだ」と思い込んでいた自分、人との関係、そして人生。
それが一夜のセックスの中で崩されるという
あまりにも突然で意外性のある展開に、

ルーティンワークに甘んじていた僕の脳みそが
急遽プログラムの書き換えに躍起にならざるを得なくなったのだろう。

夜風だけが感じられる静寂に満ちた夜に
月光に照らされた幻想的な裸体、
他の何にも思い奪われることなく、目の前の身体だけをただ探りあった無限のようでありつつも凝縮された時間。

自分や他人という人間への興味、
それらが織りなす世界への興味、
これらが再興するに十分過ぎる一夜だった。

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