火星人襲来ーその2

井岡教授は話をしながら手の中のリモコンをクリック。

丸顔のいかにも人のよさそうな好々爺とした作業着姿の人物が講堂の大スクリーンに映し出されました。

この写真は非常に貴重な写真です。写っているのは山本タカシ、模型事業で一代で莫大な財産を築いた方です。本日ご来訪いただいた大方のジャーナリストの方はご存じかもしれませんが、山本氏はめったに世間に顔を出さず、写真はもってのほか、長い間謎の人物とされていました。

この写真は2035年に撮られたものです。あまり目立たないのですが、後ろの看板に注目していただけますか。

と言いながら井岡教授はリモコンを操作して、金看板を拡大しました。

相野ロボット工学研究所と入っているのを皆さん読めますか。このロボット研究所は登記上相野順という人間が理事長になっているのですが、山本氏はほぼ全財産をつぎ込んで、研究所を作ったのです。いわば影の理事長です。私達の調査ではこの二人は飲み友達、ということなのですが、山本氏が飲み友達を持っているはずがなく、どうやら一升瓶を抱えて、街中をふらふら歩いていた相野氏に声をかけたようです。まあ、出会いはどうでもいいのですが・・・・。山本氏がどうして相野氏を引き入れたのか今では謎になっています。山本氏の性格として、あまり表舞台に出たくなかった、のかわかりません。この謎は永遠に残ります。というのは、この山本氏は2035年に亡くなっているのです。ほんじつのBreaking news の第一弾は山本タカシ氏が2035年に亡くなっているということです。

初めにスクリーンに大写りした人物が山本タカシと井岡教授が説明を始めたときにをすでに会場はざわついていました。山本氏の死は確かにBreaking newsに間違いないのですが、 そのニュースを伝えている井岡教授の信頼性もあり、そのBreaking newsにはすぐに飛びつけないようで、あるジャーナリストはスマホで本社に連絡を取るのですが、必ずニュースソースは井岡教授と説明を加えます。本来はジャーナリストたるものはニュースソースを明かさないのですが、今回は大っぴらに井岡教授の名前を出すようです。

次にスクリーンに現れた写真に会場全体がショックを受けたようで、息を飲み込むような音さえ聞こえてくるぐらいシーンと静まり返りました。

山本氏をはさんで巨大な人間が写っていました、山本氏が平均的日本人の体格であればおそらく両隣の人間は3メートルぐらいになります。

この山本氏と一緒に写っている人間はロボット工学研究所で開発された完成直後の人造ロボットです。身長3メートル、体重500キロ。

山本氏はこのロボットに殺された・・・ではなかった。このロボットが事故を起こしたために亡くなったのです。

                           -続くー




ドイツ生活36年(半生以上)。ドイツの日常生活をお伝えいたします。