小説を書くことー15(A)

あまりにもタマちゃんの食事の要求がきついので、私はオーブンを温めて冷凍もののチキンを冷凍室から出して、料理する準備を始めました。

「あの、おいら、少し変わったものを食べたいんだけれど」

「あんた猫なんだから、チキンなんて贅沢もんだよ」

オーブンがぬくもるまで20分ぐらいかかります。私は冷凍ピザも一緒に入れるつもりで、用意をいたします。

オーブンの調理準備ができるまで、テレビでも見ようかなと思ったのですが、すっかり様子の変わってしまったフラットの中でテレビの前に坐ってもなんとなく居心地が悪く、リラックスできません。

気が付くとタマちゃんががらんどうの物置の中に入っていきます。

ちょっと来いよ、物置の中からタマちゃんの呼んでいる声がいたしました。

タマちゃんは物置の中の隅にあった一枚の板(40センチ四方ぐらい)をガシガシひっかいております。

「おいちょっと手伝えよ」餌を与えている主人に対する口調じゃございません。それでも私は、なんで猫に命令されなければならないのか、と思いながらも、タマちゃんのひっかいている板の端をつかんで開けました。

私の住んでいるのは2階なので、その空洞の下は階下の天井のはずなのですが、その下には階段のようなものがありました。

「なあ、おいらについて来いよ」タマちゃんの命令口調はひどくなってきます。それでも私は実に従順なのです。

「ちょっと待ってよいくら何でもこんな狭いとことに入れないし」それに階段の幅は猫が上り下りぐらいできるぐらいの広さしかありません。

「いいから、首を突っ込んだら行けるから。おいらがやるとおりにしなよ」

タマちゃんはその穴の中に首を突っ込んで、そのままいなくなりました。

何だか知らない家に一人取り残された感じで、私はタマちゃんのように空洞に頭を突っ込みました。

それから私は難なく移動していきました。タマちゃんのお尻が見えてきて、案外、タマちゃんセクシーだなあ、と感じていました。

そして私の到着したところは?

                           ー続くー

ドイツ生活36年(半生以上)。ドイツの日常生活をお伝えいたします。