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身辺整理

 串付きうなぎ、それを焼いているお店すら焼かれている
 ぼくは悩んでいる、白焼きにするべきか肝吸いだけもらうべきか、口から星屑散りばめたヨダレを垂らしそれが川になって海になって空になって死体になっても、ぼくは選びとることができないなにも、皆がニスを塗った彫像をニスじゃなくて漆なのよこれは、という笑みを張り付けて笑う光景、そんなことされたら、光に負けるぼくが焦げる、でも信じていたくて甘いものだと思っていたのにさ、でも現実は違うもの。
 
 頭に焼き付ける、ニスまみれの人間、ぼくは吐き出している、一生懸命コーティング剤を拭き取りながら、異常者のフリをしてみる、包丁を投げるカッターを投げるその姿に憧れていた、切れ味の鋭い魚、そんなもの沸騰したコンクリートの中に全てぶちまけてしまってもう取り戻すことなんてできないんだよ、ぼくはとびきり可哀想で劣悪なもとに生まれたの、空っぽの体が瓶のように固く冷たくなり、悲劇の主人公ぶって上から夜の淀みと雑巾の絞り汁が降ってくる、それをぶちまけたら本物じゃないと、誰かが言っているの。

 性格のわるいあの子、傷つけられたの昼下がり、あれはきっと嘘じゃなかった、キャラメルポテトとかいう、金の延べ棒色した甘いだけの芋、それが救いだったぼくにとって、あいつらをいつかかけがえのないものに、したいと思っていた。知らず綺麗なものが溜まっていって誰一人飛び降りることがないと、中身もパンの内側も等しく豊作の季節になっていると本気で信じている狼に、ぼくはウイルスまみれの血を検品するみたいに塗りたくってみたかった
 向こうのやつらにぼくの中にあるはりぼての真珠は分からないだろうね、絵画に閉じ込めたほこり、破裂するのが本物じゃないなら、ぼくのうなぎはヨダレはキャラメルポテトは、もうなんの意味ももたない、才能なんてないから、才能なんてないから、鶏を絞め殺して生計を立てたい、そうするしかないのにそれすらもできない、選別の資格がないからなにがうなぎで何がウイルス保菌者かもわからない理解できない。

 このまま世界が初潮を迎えて、いつかなにかを支えている紐が切れたら、ぼくは天気の良い日に服をひとつ残らず脱ぎ捨てて、その中でフルーツタルトを食べよう、そしてなにもかもにテレビと文庫本をつけて飽きるまで可愛がってやる、皆ぼくの皮膚片を飲み込んで絶滅しろ。

 困ったら、なにか生臭いものに転化したいと思ったら、きっと皆からバフンウニが溢れて死ぬだろうね? 多分、そうなることを望んでいる誰もが、あそび終わったら、これは鉄則だ、壊すこと片付けること、洗いものをすること、食べたものは流しへ捨てるの、今すぐに
 それが出来ないならみんなぼくと一緒に死んでください。

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