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ないものさがし

常に脳が別のところにしまわれていて
僕は冷蔵庫をのぞくはめになる
(接続を、接続を)


冷えたゆげがたちのぼり
昨日のスープが丁重に保管されている
食べかけのプリン、赤魚の醤油干し
僕の体を作った、維持したものたち
それを台所へ運び
三角コーナーに流した
夢のように
(もう満腹、なんですよ)


手を洗う、あかぎれが治らない
ハンドクリームを探す
使いかけのメープルシロップが甘いにおいで主張
悪夢を見て、瓶ごと足元へ放る
残骸の中にメモ書き
「役立たずっすね」
字が汚い


思い出せ
いつもこうしていたっけ、僕は
思い出せ
脳のしまわれた、どこか
(必要のないもの、いつかは用があったもの)


配給制が
いつの間にか始まって
しまう場所を気にしなくてはならず
思考を、
今まで生きてきたのにそれはすべて無駄だったのね
死蔵された冷凍食品たちよ
エビフライ、カキフライ、ポテトフライ
(あなたは毛だらけ、皮膚からノビルのように生えている、もう逃げられない)
噛み砕いている
僕はいるけど
いらないものだから


接続を
接続を
お願いします、接続を
もうすぐそこまできているのだ
客が
迎え撃たなくてはならない
客たちが

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